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オープニング最後の4人が並び立つビジュアルが毎回微妙に違う、など小ネタを惜しみなく投下してくる「旗揚!けものみち」。もちろんプロレスシーンにも毎話力が入っております。今回の魔獣ごろ……じゃなくて、ケモナーマスクの雄姿を、リングアナウンサー村田晴郎氏に思う存分語ってもらいましょう!
「旗揚!けものみち」第3話!
さっそく源蔵さん、テーブルの上でギルドマスターを「DDT」というプロレス技で叩きつけています。
正面から相手の首を片方の脇に差し込み、腕を回して固定します。
その状態から勢いよく後方に倒れこみ、相手の頭頂部をマットに叩きつけます。
相手は首を引っ張られる痛みと、頭部を叩きつけられる痛みを連続で味わうことになるわけです。
相手の首を捕まえた時の「一瞬の静寂」と、その直後ズドンと叩きつける「瞬間の衝撃」が視覚的にもインパクトのあるプロレス技です。
技の開発者はジェイク・“ザ・スネーク”ロバーツ(*1)。彼の必殺技であり、ここぞという時に炸裂させるDDTで勝利の山を築きました。
今では数多くのプロレスラーがDDTを得意技にしているため、仕掛けられる側も受け身の技術を編み出し、一発で勝負が決まることは少なくなりました。
ところが、ジェイクはDDTを決めれば一発で試合を決めていました。
それはなぜか?
実は、彼は相手の頭部をリングのマットの下にある鉄骨に叩きつけていたのです。
リングの土台は鉄骨でできていますが、マットを敷いているため外からは視認できません。
しかし彼は相手の頭部を捕獲したあと、目視ではなく足を擦らせた感覚でマットの下にある鉄骨の位置を確認し、DDTで相手を叩きつけていたのです。さすが開発者、恐ろしい。
技名であるDDTの意味は、過去に使用されていた殺虫剤の名前からきています。対戦相手を虫のように駆除するという意味が込められているのでしょうか。
ちなみに前回ご紹介した天龍源一郎さんは、現役時代にDDTを得意技にしていました。天龍さんのDDTは「デンジャラス・ドライバー・テンリュウ」の略です。
さぁ、そのDDTを源蔵さんはテーブルの上で炸裂させてテーブルを破壊しています。
アニメの誇張した表現とお思いでしょうが違います。この技は実在します。
その名も「テーブルクラッシュDDT」です!
プロレスは己の肉体のみを武器にして闘う格闘技ですが、時に椅子やテーブルなど「凶器」が使用されることがあります。もちろん、この行為は反則なのでレフェリーの目の前で使用したら反則負けです。
ところが、その反則行為が認められる試合形式が存在するのです。
それは、レフェリーが“特に危険”とみなした行為以外、すべての反則が認められる「ハードコアマッチ」!
このハードコアマッチでよく見られる攻撃方法が「グロッギー状態(*2)の相手をテーブルの上に乗せて、そこで大技を仕掛けてテーブルもろとも破壊する」というもの。
テーブルの硬い表面に叩きつける→テーブルが割れる→割れた部分からさらに床に落下、という二段階の衝撃が相手を襲います。場合によってはテーブルの破片で皮膚が裂けます。
そんなハードコア殺法を源蔵さんはさらっとギルドマスターにやってのけました。
源蔵さんは現世界でハードコアマッチも数多く経験していることが推測されるシーンです。
やるなぁ源蔵さん。
ちなみに今回の予告で新潟県東区在住のプロレスラー、スーパー・ササダンゴ・マシン選手(*3)が「雪崩式DDT 」(*4)と説明していましたが、これはなぜか……?。
時間軸の違いによる情報の誤差、という説が濃厚ですが、実際に再現するには危険すぎる技だったからということにしておきましょう。雪崩式DDTもかなり危険な技ですけどね。
ということでDDT及びテーブルクラッシュDDTについてご説明いたしました。
ここからはそれ以外の気になったプロレス小ネタを紹介していこうと思います。
今回、源蔵さんは久々にケモナーマスク姿になりますが、ショートタイツ(試合用パンツ)ちっさ! 競泳用かと思いました。あれで試合するのはかなり危険だと思いますよ、パンツの中身的な問題で。プロレスには相手のショートタイツをつかんで仕掛ける技がたくさんありますからね。TV生中継の時はもっと大きいショートタイツを履いていただきたいものです。
そういえば源蔵さんが言っていた過去の対戦相手「残忍レスラー、ザック・ザ・ヒャッハー」というプロレスラー、実況アナウンサー的にはやっかいなリングネームです。
「ヒャッハーがいった!ヒャッハーの攻撃!あああああ!ヒャッハー!!」
私のテンションがどうかしてしまったと勘違いされそうです。
源蔵さんとカーミラとの「フィンガーロック」のシーンもありました。
フィンガーロックとはお互い両手でがっちりと組みあって、握力と腕力と背中の筋力と足腰の筋力、ようは全身の力を使って力比べをする攻防です。力負けした方は指と手首が反り返り、痛みで徐々に後方へ倒されていきます。
この時、倒された方はブリッジをして完全にマットにねじ伏せられないように防御します。
プロレスラーの場合、ブリッジ状態から押し返し反撃することがありますが、カーミラはギブアップしたようです。
そして、源蔵さんがリンダブレアに名付けたリングネーム「デストロイヤー花子」。
これは往年の覆面プロレスラー(マスクマン)、ザ・デストロイヤー(*5)からきていることは間違いありません。
世界でも一二を争う超有名なマスクマンですから、源蔵さんがとっさに考え付く名前として出てくるのは当然です。
ちなみに源蔵さんが寝ているカーミラにお尻から落下して押しつぶしたのは「雷電ドロップ(ヒップドロップ)」という技です。見た目そのまんまのシンプルな技です。
そして最後はジャーマン・スープレックスホールド!
やはり源蔵さんはジャーマン・スープレックスを自身の一番の技、フィニッシュホールドとしているのですね。
今回はここまで!さて次回はどんなプロレス技が飛び出すのでしょうか?
最後に、これをご覧の皆さまは絶対真似をしないように。技を仕掛けた側も掛けられた側も共に不幸な結末が待っています。ケモナーマスクのようになりたければ身体を鍛えてプロレスラーになりましょう。「Please Don’t try this at home」約束ですよ。
<注釈>
(*1)ジェイク“ザ・スネーク”ロバーツ
1980年代のアメリカンプロレスを代表するスタープロレスラーのひとり。195センチ、120キロの巨体がスルスルとリングを滑らかに動き、相手を捕獲し、仕留めるその姿はまさに蛇のよう。ペットのニシキヘビを麻袋に入れてリングに持ち込み、DDTで倒した相手の身体にその蛇を乗せて勝ち誇る様は、見る者に強烈な印象を植え付けた。2011年に現役を引退。
(*2)グロッギー状態
攻撃のダメージと疲労でふらふらしている状態のこと。相手がなったら必殺技を仕掛けるチャンス。自分がなったら大ピンチ。
(*3)スーパー・ササダンゴ・マシン
DDTプロレスリング準所属プロレスラーにして、松竹芸能所属のタレント。「旗揚!けものみち」の次回予告に毎回登場している、そう、あのマスクマンです。試合をする前にパワーポイントでこれから行われる試合の見どころや、自身が試合に勝利するための作戦を会場スクリーンでプレゼンする「煽りパワーポイント」を得意とする。必殺技は「垂直落下式リーマンショック」。
(*4)雪崩式
プロレス技は相手をリングのコーナの上に乗せて、そこからリングに叩きつけると「雪崩式〇〇」にアップグレードします。高いところからリングに叩きつける様を「雪崩」に例えて命名されたと思われます。今回の場合はDDTなので「雪崩式DDT」
(*5)ザ・デストロイヤー
1960年代から90年にかけて日米を股にかけて活躍した伝説のアメリカ人プロレスラー。白地のシンプルなマスクから「白覆面の魔王」と恐れられた。その実力は一級品で、日本のプロレスの父である力道山、その弟子であるジャイアント馬場、アントニオ猪木とも激闘を繰り広げた。それだけに当時の日本での知名度は抜群で、テレビのバラエティー番組にレギュラー出演し、和田アキ子さんを始め有名タレントと共演。リング上とは打って変わったおちゃめなキャラクターを披露し、お茶の間で人気を博した。長きに渡り日米友好親善に貢献したとして、2017年に日本政府から旭日双光章の勲章を授与された。今年3月、88歳で死去。後世に語り継いでいくべき偉大なプロレスラーのひとり。