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前回で「プロレスアニメ」として覚醒(?)した「旗揚!けものみち」。今回もフルスロットルでプロレス展開が繰り広げられました。第1話ぶりにアルテナ姫が尻丸出しに(しかも6回)なったことでも特筆すべき展開でしたね。ちなみに第9話で初披露された「ローリング・クレイドル」は、作画が非常に大変だったそうです(三浦和也監督談)。では早速、実況アナウンサー村田晴郎氏に語りつくしてもらいましょう!
前回から完全にプロレスアニメへとシフトした「旗揚!けものみち」。
今回もプロレス技が次から次へと登場します。
さっそく説明していきましょう!
いきなりの「はずかし固め」です。
アニメオリジナルの創作プロレス技と思う方もいらっしゃるでしょうが、この技は実在します。股間と精神にダメージを与える立派な関節技です。
相手の股関節を限界まで開脚させることでダメージを与える「レッグスプレッド」という技があります。日本名は「股裂き」。そのまんま。「はずかし固め」はレッグスプレッドの応用技です。
レッグスプレッドの基本の形は、寝ている相手の片足を自分の片足で踏みつけてマットに固定し、相手のもう片方の足を手でつかんでグイっと開く。ギリギリと力を入れ続けてギブアップを迫る時もあれば、瞬間的に力を入れてダメージだけを与える時もあり、シチュエーションで使い分けます。とてもシンプルな痛め技です。
「はずかし固め」はレッグスプレッドを応用して、相手の股関節を痛めつけると同時に、その名の通り観客に股間を見せつけるために使用される技です。
女子レスラーに対する効果は特に絶大です。理由は説明しなくてもわかりますよね?
さあ、MAOがアユティ相手に大暴れ!
まずは「飛びつきスイングDDT」。
第3回のコラムで紹介したプロレス技「DDT」の発展技です。
相手に飛びついて首をキャッチ。そのまま勢いを殺さず、相手の身体を支点にした横回転のスイングをすることで、遠心力を使ってマットに叩きつけます。竜巻のような動きから「トルネードDDT」とも呼ばれます。
通常のDDTは力と体重を使って叩きつけますが、飛びつきスイングDDTこれは遠心力によるスピードが加わることで、破壊力が増します。身軽さに自信がないとできない技ですね。
二匹目のアユティには「フランケンシュタイナー」。
ジャンプして空中で相手の頭部を両脚で挟み、そのままバク宙のように後方に勢いをつけ、両脚で挟み込んだ相手の頭部をマットに突き刺す、豪快な技です。
前回のコラムで紹介した「ヘッドシザースホイップ」に似ていますが、ヘッドシザースホイップは回転の途中で頭部の拘束を離し“投げる”技。フランケンシュタイナーは相手の頭部を最後まで離さないので、ダメージはこちらのほうがはるかに上です。
三匹目のアユティには「飛びつき式腕ひしぎ逆十字固め」。
相手の腕を両脚で挟み固定し、その腕の手首辺りを両腕でつかんで反らせることで肘の逆関節を極めるのが「腕ひしぎ逆十字固め」です。「腕十字」や「アームバー」とも呼ばれます。柔道、総合格闘技でもポピュラーな関節技です。
通常は寝技の攻防で仕掛ける技ですが、技の入り方は様々なバリエーションが存在します。MAOが見せたのはスタンドから奇襲的に飛びついて極める「飛びつき式」です。
完全に極まると力加減によっては肘関節が折れてしまう、非常に危険な関節技です。すぐにタップしたアユティは賢明な判断だったと言えるでしょう。
暴れっぷりでは源蔵さんも負けていません。エドガルド王国最強の精鋭騎士相手に、やりたい放題やっています。
ここで注目なのはドロップキック、ラリアット、肩に抱えて壁にぶん投げた後の「空中飛び両膝蹴り」。一瞬のことなので見逃してしまいそうでしたが、これはHARASHIMA選手の必殺技「蒼魔刀(そうまとう)」(*1)ではないですか! 現世界でリアルケモナーマスクを演じているHARASHIMA選手への、源蔵さんからのエールかもしれません。
その後も「ジャンピング・ニーアタック」、「アックスボンバー」(*2)、「エルボードロップ」、「パワーボム」と、相手が甲冑を身に着けているのをいいことに容赦無し!
しかし、今回一番悲惨なのはアルテナ姫ですね。
因縁のジャーマンスープレックスから始まり、予告通りの「ローリング・クレイドル」炸裂!
「ローリング・クレイドル」、日本名「回転揺り椅子固め」。
第7回コラムで紹介した「コブラツイスト」の要領で、相手の背後から絡みつき、相手の左脚を自分の左脚でフックしつつ、相手の右脚を両腕でつかんでロックしながら後方へ倒れる。
そのまま倒れ込む時の勢いを利用して、リング上をクルクルと回転しながら、相手の三半規管と股関節にダメージを与えます。要は「股裂きを極めつつ回転し、目を回させる」技です。
相手の目が回った頃合いで回転を止め、相手の両肩がマットについた状態でフォールの体勢で固めると、「ローリング・クレイドル・ホールド」になります。
でも、源蔵さんはこの技を「尻見せ技」として使っていますね。ていうかアルテナ姫にやった技は、すべて「最終的に尻が丸見えになる」技ばかりでしたね。
「DDT」(垂直落下式で尻が見えるように)、「パワーボム」(膝立て式で尻が見えるように)、「ブレーンバスター」(これも垂直落下式で尻が見えるように)、「タイガードライバー’91」(*3)(尻を見せるためにプロレス技の中でもトップクラスの危険技を解禁する源蔵さん)。
尻見せはともかくとして、これだけの危険技を食らってもめげないアルテナ姫、オークキングよりタフだ。
ラストではMAOが今度はオークを相手に魅せてくれます!
腕ではなく、脚を使ってのラリアットである「レッグラリアート」。
そして「バックドロップ」!
相手の後方から胴体を両腕でクラッチして後方へ反り投げ、相手の後頭部をマットに叩きつける技です。ジャーマンスープレックスとの違いは投げの軌道。ジャーマンスープレックスが真後ろに投げてブリッジで固めるのに対し、バックドロップはややサイド方向に投げます。
しかし、このバックドロップはいいですね!MAOの投げ方もオークの食らいっぷりも素晴らしい!今まで出てきたプロレス技の中で一番の再現度ですよ。このシーンの動画を担当した方に敬意を表します。
次回はいよいよ異世界で源蔵さんとMAOが再会するのでしょうか!?
この調子でいくと二人の闘いはとんでもない熱量になりそうです。楽しみ!
最後に、これをご覧の皆さまは絶対に真似をしないように。お姫様に垂直落下式のプロレス技を食らわし、尻を丸出しにすることは犯罪です。ダメ、ゼッタイ。
<注釈>
(*1)蒼魔刀
DDTプロレスリングのHARASHIMA選手の必殺技。上半身を起こした状態でマットに座っている相手の上半身めがけてダッシュ一閃、両膝蹴りを叩き込む。立っている相手、相手の背後に、空中からと様々なバリエーションがある。
(*2)アックスボンバー
日本名は「斧爆弾」。ラリアットに似た腕による打撃技。こちらは肘を直角に曲げて、その曲げた肘の部分で相手の頭部もしくは喉元を打ち抜く。米国と日本で絶大な人気を誇ったアメリカ人プロレスラー、“超人”ハルク・ホーガンの必殺技のひとつ。
(*3)タイガードライバー‘91
「タイガードライバー」とは、屈んでいる相手の両腕を自分の両腕で上から抱え込むようにフック。そのまま持ち上げた後、相手の身体を反転させ、自分は開脚尻もちをつくことで相手の背中と後頭部をマットに叩きつける技。「‘91」はそのバリエーション。通常は開脚してマットと水平に相手を叩きつけるが、立膝をついて落とすことによって角度が付き、相手の頭部のみをマットに突き刺すように落とすことができる。非常に危険な技。