アニメ

世界陸上の決勝のような、静寂と興奮が同居する――本日公開の映画「ひゃくえむ。」舞台挨拶


「音楽」での衝撃から早5年。ロトスコープを巧みに駆使し、独自のアニメーションを切り拓く鬼才・岩井澤健治監督の最新作「ひゃくえむ。」が、2025年9月19日より全国公開になりました。
その公開を記念して、公開初日には東京・TOHOシネマズ日比谷にて舞台挨拶が実施! 岩井澤監督のほか、トガシ役の松坂桃李さん、小宮役の染谷将太さん、仁神役の笠間淳さん、浅草役の高橋李依さん、MCの赤荻歩さん(TBSアナウンサー)が登壇し、「ひゃくえむ。」に関わるトークを披露しました。
本稿ではその舞台挨拶で繰り広げられたトークの模様をお届けします!


岩井澤健治監督


定刻になるとMCの呼び込みにより、キャストと監督が登壇。

笠間さんは挨拶と同時に「『ひゃくえむ。』を試写で観たとき、青春の続きのような作品だと感じました」と語り、高橋さんも「多くのアニメに携わってきましたが、このようなアニメに出会えてよかったなと感じる作品になっています!」と感慨深げにコメント。岩井澤監督も「企画開始から4年、作画に2年。長い期間をかけて制作したこの作品が公開となる今日という日を迎えられて嬉しいです」と万感の思いを口にしました。


トガシ役の松坂桃李さん


小宮役の染谷将太さん


挨拶の後、スクリーンに表示されたのは、試写会の観客から届いたメッセージ。これをもとにトークを開始しました。
松坂さんは「陸上の知識がなくても楽しめた」という感想に、「純粋に嬉しい!」と笑顔。すると岩井澤監督は「僕も、この企画が始まるまでは陸上に詳しくなくて……」と呟き、会場から笑い声が。

染谷さんが触れたのは岩井澤監督の制作手法。「実写映画でも観たことがないような、手持ちカメラ風のショットが楽しかったです。あれはロトスコープならではだったと思います」と絶賛すると、すかさず松坂さんが「走るシーンの臨場感を増すために、足にスピーカーを付けて音を収録したんですよね?」と驚きのエピソードを披露。岩井澤監督も事実だと認めつつ、「僕ではなく、現場のスタッフが自然とやってくれたことでしたけど、おかげで臨場感を増すことができました」と笑みを浮かべながら語りました。

また、高橋さんが声優について触れた感想を見て、「『ひゃくえむ。』は人相と声の芝居がぴったりなんですよね。その人相になるだけの説得力のある声がどのキャラクターからも飛び交っていて……あ、自分で自分を褒めたみたいになっていますけど、こうやって褒めてくださる方がいるのは嬉しいです!」と恥ずかしがりながら触れると、松坂さんが「走るシーンでは、実際に陸上選手の方に呼吸について演技指導をしていただいたんですよ」と秘話を公開。「今まで吐いたことのない息を吐いたよね(笑)」と染谷さんも収録を回顧。すると笠間さんは、「陸上選手の息遣いは、僕らがランニングをしているときのそれとは異なるので、今まで芝居でもしたことがないくらい辛い息の吐き方をしました」とコメント。また、他の収録で使用される録音スタジオとは異なり、広いブースのあるスタジオで収録を行い、身体を動かしながら演じたという制作の裏側も明かされました。


浅草役の高橋李依さん


仁神役の笠間淳さん


続いてのトークは、トガシと小宮が学生時代から陸上に熱中していることに関連して、主演二人の学生時代に熱中したことへ。
松坂さんは「ミニ四駆に熱中していました。『ひゃくえむ。』と同じく、どれだけ早く走れるかを競っていましたね。シャーシに穴を開けたり、モーターを変えたり……。コースは買ってもらえなかったので、雑誌を積み重ねてコースにしていました(笑)」と懐かしの思い出を披露。一方、染谷さんは「散歩です! 電車で20分の距離を、3時間かけて歩いて帰ることが楽しかった」と語り、客席を和ませました。


ストップウォッチを掲げる松坂桃李さん


また、舞台挨拶の最後には、100メートルを約10秒で走る本作にちなみ、登壇者全員が体感で10秒を測りストップウォッチを止めるという、チャレンジ企画が。真剣な表情でキャスト一同が臨む中、スポーツ中継でも知られる赤荻アナウンサーがそれぞれの様子を実況。その様子には思わずタイマーを止めた後の松坂さんが「気が散るんですけど!」と突っ込む一幕も。しかし、結果は――
松坂さん:9.68秒
高橋さん:9.75秒
染谷さん:10.65秒
笠間さん:18.95秒
ということで、高橋さんが勝利! 見事一位に輝いた高橋さんには、岩井澤監督から金メダルが贈られました。そして、「大人になってからメダルをもらえるなんて……」と照れ笑いを浮かべつつ、「恥ずかしいので監督に」とメダルを手渡して、舞台挨拶は終幕へ。

この舞台挨拶が実施されたのは、「ひゃくえむ。」の上映前。ということで、染谷さんは「どなたが観ても心に刺さる作品。哲学的だけどシンプル。面白かったらぜひ勧めてください!」と観客へアピール。松坂さんは「世界陸上の決勝のような、静寂と興奮が同居する凄まじさを映画でも感じてほしい」と熱く語り、舞台挨拶を締めくくりました。

【文・構成/太田祥暉】


©魚豊・講談社/『ひゃくえむ。』製作委員会



映画「ひゃくえむ。」
公式サイトhttps://hyakuemu-anime.com/
●全国劇場で公開中

STAFF
監督=岩井澤健治 脚本=むとうやすゆき キャラクターデザイン・総作画監督=小嶋慶祐 音楽=堤博明 美術監督=山口渓観薫 色彩設計=松島英子 撮影監督=駒月麻顕 編集=宮崎歩 音楽ディレクター=池田貴博 サウンドデザイン=大河原将  キャスティング=池田舞、松本晏純 音響制作担当=今西栄介 プロデューサー=寺田悠輔、片山悠樹、武次茜  アニメーション制作=ロックンロール・マウンテン 製作=『ひゃくえむ。』製作委員会 配給=ポニーキャニオン/アスミック・エース
CAST
トガシ=松坂桃李 小宮=染谷将太 仁神=笠間淳 浅草=高橋李依 椎名=田中有紀 トガシ(小学生)=種﨑敦美 小宮(小学生)=悠木碧 沼野=榎木淳弥 経田=石谷春貴 森川=石橋陽彩 尾道=杉田智和 樺木=内田雄馬 財津=内山昂輝 海棠=津田健次郎

©魚豊・講談社/『ひゃくえむ。』製作委員会

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