2025年11月21日(金)に公開を控える細田守監督最新作「果てしなきスカーレット」ジャパンプレミアが、11月5日、東京国立博物館にて開催されました。東京国立博物館は19年前に公開された「時をかける少女」にも描かれている場所。最初に登場したのは、とある国の王女スカーレットを演じた芦田愛菜さんと、《死者の国》で彼女と出会う看護師の聖を演じた岡田将生さんです。夜の闇にスカーレット色にライトアップされた表慶館が浮かびあがると、バルコニーからエレガントな白のドレスの芦田さん、シックなスーツに身を包んだ岡田さんが姿を現して、にこやかに手を振り、スカーレット色のペンライトを振る観客たちを沸かせました。
正面入り口に移った2人に続いて登壇したのは、ギルデンスターン役の染谷将太さん、墓掘り人役の宮野真守さん、ヴォルティマンド役の吉田鋼太郎さん、ガートルード役の斉藤由貴さん、コーネリウス役の松重豊さん、そして、細田守監督。みなさん、ドレッシーな衣装をまとっていて表慶館をバックにしたシチュエーションにぴったりです。
冒頭の挨拶で特に印象的だったのは吉田さん。「実はこの映画を見てから、今までずっと感動が続いている」と堰を切ったように語ります。本作は父を殺された王女・スカーレットが復讐に燃え、始まっていく物語。その果てに展開されていくドラマに「静謐に厳かに感動」したと言い、「人が人を許すこと、人が人を殺してはいけないこと、復讐の連鎖は許されないということ。これは長いあいだ人間が抱えてきたテーマですが、それが何も解決されていないこの世界で、細田監督が真っ向から切り込んだこと、それを世界に向けて発信しようという勇気に心からエールを送りたい」と想いを明かしました。
日本での披露に先駆けて海外の国際映画祭やワールドプレミアを回ってきた細田監督からは「(『ハムレット』をモチーフにしていることで)海外のみなさんにはなじみ深いエンターテインメントとしても受け止めてもらえたのではないか」という報告も。MCからは東宝、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントの共同配給にて、すでに77の国と地域への配給が予定されていることも伝えられ、芦田さんは「各国様々な死生観があると思うので、あなたはどう思った? と、ぜひ世界の方々の感想を伺ってみたいです」と海外展開への想いを話しました。
そして、話題は各々が本制作から受けた刺激について。細田監督作4作目の出演となる染谷さんは「この作品に関係ない人はたぶん世界中にひとりもいないと思う」と告げ、「この物語の続きが、ここから先の未来へとつながっていくんだなと心から感じました」と手応えを話しました。また、細田監督作3作目の出演となる宮野さんは「僕は声優として数々の作品に参加させていただいて、いろんな映像を見てきました。それでもまだ見たことのない表現があるのだと本当に驚かされました」と声優だからこそ感じたワンダーを語り、この日も一体どうやって作ったのかと監督を質問攻めにしてしまったとはにかみました。
また、斎藤さんも「既成概念を超えた芸術性の高い作品」とそのクリエイティビティに感嘆。「監督はこの制作でものすごい挑戦というか、実験をされているんじゃないか、という印象を受けました。そして、きっと究極を求めてらっしゃる。表現の仕事をする上で、完璧を目指すこと、隙のない高みを目指すことって、すごく重要なことだと思うんです。そのもの作りの姿勢にすごく触発されました」と明かします。
続いて、松重さんからは、スタジオで細田監督とも交わしたという〝演劇じじい〟としての当時の思い出話が(吉田さんの合いの手も挟みつつ)語られます。蜷川幸雄さんの主宰の劇団(劇団「蜷川スタジオ」)に入っていたこと、蜷川さんは「シェイクスピアはその時の時代を写す鏡だ」と捉えていたことに触れ、「本作は戯曲のようで、『ハムレット』から派生した現代を写す鏡として、本当に生き生きと息づいています」と紐づけた言葉が印象的でした。
長編アニメーション映画の声優は初挑戦となった岡田さんは「監督が1から教えてくださって、本当に監督と共に聖を作り上げたと思っています」と収録の日々を思いおこします。それから、「先ほど別の取材で作業工程を説明していただいて、たくさんの方々が携わって作り上げた作品であることをあらためて実感しました。その代表として今ここに立っているのだと考えると緊張してしまうんですけど、この映画の素晴らしさを1人でも多くの方に伝えられるよう、これからも頑張ってきたいという気持ちです」と熱い想いを明かしました。そして、芦田さんは「本当に、体当たりじゃないとできないだろうな、っていうシーンがたくさんありました。声を吹き込むというより、魂を吹き込むような気持ちでスカーレットに向き合っていきました」と語りました。
みなさんの心のこもった言葉の連続を、時に笑顔でうなずき、時に感じ入った表情で受けとめた細田監督。MCに「お話を聞かれていかがでしたか?」と問われると、「このようなみなさんと一緒に映画を作ることができて本当に光栄です。キャストのみなさんだけじゃなくて、本当にスタッフのみんなも非常に優秀な人ばかりで、一緒に作り上げられたことが、非常に誇らしい気持ちでいっぱいです」と熱のこもった声で告げました。
壮大なスケールの作品に相応しい、美しく厳かなジャパンプレミアの最後を締めくくったのは芦田さん。この映画の持つ「生きる意味」をどのように捉えているかを問われて、凛々しい表情で真っ直ぐ答えました。
「先日、ある物語を読んでいて、その一節に『人生の意味より人生そのものを愛せ』という言葉があったのですが、これはまさに私がこの映画を見て感じたことなんじゃないか、と思いました。スカーレットは自分で自分を傷つけて、『こうあらなければいけない』としばられて生きていた女の子です。そんな彼女が《死者の国》を旅して、聖と出会って、自分自身を愛せるようになっていく……『果てしなきスカーレット』はそんな作品なのかな、と感じたんですね。人生の愛を見つけられたとき、自分の人生を使ってどう生きていきたいかという生きる意味が見出せるのではないかと感じました。意味を持って生きなきゃいけないのではなく、生きること自体に意味がある。生きることは愛すること、なんじゃないかなというふうに感じています。観てくださる方それぞれに、たくさんの解釈があると思うのですが、スカーレットの生きる世界に想いを馳せながら、一緒に考えていただけたら、とてもうれしいなと思います」
【写真:福岡諒祠/取材・文:ワダヒトミ】
『果てしなきスカーレット』
キャスト:芦田愛菜 岡田将生
山路和弘 柄本時生 青木崇高 染谷将太 白山乃愛 /白石加代子
吉田鋼太郎/斉藤由貴/松重豊
市村正親
役所広司
公開日:2025年11月21日(金)
ⓒ2025 スタジオ地図
配給:東宝 ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
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