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最初と最後の舞台挨拶はファンへの感謝とともに。「シン・エヴァンゲリオン劇場版」大ヒット御礼舞台あいさつ&全国同時生中継

2021年04月14日 20:30配信
「シン・エヴァンゲリオン劇場版」大ヒット御礼舞台あいさつ&全国同時生中継より

「シン・エヴァンゲリオン劇場版」大ヒット御礼舞台あいさつ&全国同時生中継より

「今日は皆さんに直接、スタッフの代表としてお礼を言う最後のチャンスかなと思って出ることにしました」

初めての舞台挨拶は、ファンに捧げる感謝のことばで始まりました。

公開から38日が経った4月11日、東京・新宿にある新宿バルト9で映画「シン・エヴァンゲリオン劇場版」(以下、「シン・エヴァ」「シン・」)の大ヒット御礼舞台あいさつが行なわれました。登壇者は庵野秀明総監督、鶴巻和哉監督、前田真宏監督、碇シンジ役を演じた声優の緒方恵美さん。最初のあいさつで庵野総監督は「僕が『エヴァ』関連で表に出るのは制作発表のときと、1本目の(『新世紀エヴァンゲリオン劇場版』)が春に間に合わなかったときの謝罪会見のとき以来」とこれが最初で最後の舞台挨拶であることを明かしました。

舞台あいさつの進行は、緒方恵美さんが担当。一同とは25年以上ともに「エヴァ」をつくってきた関係だけに、リラックスした雰囲気でイベントが進んでいきます。3月8日(月)に公開された「シン・」は約1か月を経て、興行収入70億円を突破(編集部注:4月14日に興行収入75億を突破したと報じられました)しているとのこと。その状況を聞かれて――

「本当にありがたいです。80億ちょっといけば僕が総監督をやった『シン・ゴジラ』を超えてくれるので。そうすれば僕のなかでレコードになるし。100億いってくれるとアニメ業界の活性化にとっていいんです(笑)。ニッチなロボットアニメで100億をめざせるというのは本当にありがたいことです」と庵野総監督。鶴巻監督も「僕も『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』(の興行成績)を超えてくれたので安心しています。庵野のレコードとしても『シン・ゴジラ』は超えたいなと思います」とコメント、前田監督は「ここ(劇場)に来てくださっている皆様、ライブビューイングをご覧になっている皆様のおかげですよね。本当にありがとうございます」と感謝を伝えていました。

緒方さんが3人に聞いたのは「シン・」の独特な制作工程。第3村のミニチュアセット(現在、東京・有明のスモールワールズで展示中)やモーションキャプチャー(以下、モーキャプ)を使って、どのように画面を組み立てていったのかを伺いました。

庵野総監督は「ミニチュアで使ったり、モーキャプを使ったりしましたが、それはなくてもアニメはつくれるんですよ。(アニメは)手で描けば済むので。でも、手で描けば済むものだけにしたくないという思いが『:序』のころからあったんです。あれから時間が経って、いろいろな技術が上がってきて、頭のなかでできた画面ではなく、存在するものを切り取ってアニメーションをつくることができるようになった。時間も、お金もかかるので、ほかはやらないと思いますけど。『エヴァ』は自主制作なのでそこにお金を回して、なんとかなりました」と振り返ります。

「最初に話をしていたんですよね、前半ABパートはリアリズムに徹した実写よりのパートと、間があって、後半のパートはマイナス宇宙、完全に妄想の世界、想念の世界で人間の頭の中の世界。そうやってきっぱりとわかれていけばカッコいいんじゃないかと。僕としては後半を担当していたので、いわゆるいつものアニメのつくり方をさせてもらいました。だから、(独自の制作工程でできあがったAパートを担当した)マッキー(鶴巻監督の愛称)には頭があがらないんです(笑)」と前田監督。

鶴巻監督がAパートを担当したことに対して、庵野総監督は「自分の頭の中でできてもおもしろくない。ほかの人ならこれをどうするんだろうというのは見ておきたい。誤解されているけれど、僕は自分だけでつくりたくないんです。いろいろな人の意見を重ねて、つむぎあわせて、それで作品をつくっていきたいんです」とのこと。

「実写とアニメのハイブリッドは『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』のころからやっていて、そこからちょっとずつ、ちょっとずつ、そういう(ハイブリッドの)要素を増やしていって。『:Q』と『シン・』の間に『シン・ゴジラ』をやって。そのときに得たノウハウを『シン・』に活かせるなと。『シン・ゴジラ』をつくっていなければ、『シン・』はこうはなっていなかったと思います。あの映画をやらせていただいて、本当にありがたかったです」と庵野総監督がまとめてくれました。

 次に緒方さんが聞いたのは、「シン・」の中にある小ネタ。「いまご覧になっている方々が、まだ気づいていないだろうという小ネタがあれば。ぜひ教えてもらえませんか?」と問いかけると――前田監督は「皆さんの考察や観察のほうが先を行っている気がするし、鋭いのでそんなに言うことあるかな」と前置きをしつつ、「アスカがエヴァ2号機のなかでビースト化してオリジナルアスカが迎えに来る場面があるんですけど、もともとのシナリオでは、あのシーンで本当は(渚)カヲルがいるんですね。エヴァ13号機は(パイロットが)ふたりいないと動かないので。なのでコピーして作られた複製カヲルがいるという脚本だったので、それを画(イメージボード)にしていたんです。ただ制作が進んでいくと画の力関係が変わって、鶴巻さん(Cパート監督)がオリジナルアスカを画面の中心に出してきたので、(カヲルが)ほとんど見えなくなった。なんとなくよく目を凝らしていただくと人影がいるんじゃないかなと」と、緻密なこだわりを明らかにしました。

続いて鶴巻監督は「先日、『シン・』のネット特番(みんなで語ろう!『シン・エヴァンゲリオン劇場版』公開記念特番)で司会の松澤(千晶)さんが、ゲンドウの脳みそを拾うシーンで、おもしろい考察をされていたんです。あそこのシーンは実は脚本にないんです。前田さんが描かれていたイメージボードにあって、それが良かったので、画コンテに使っているんです。松澤さんの考察では『ゲンドウが人間ではないものになってしまったけど、ユイのことを忘れたくないから、脳みそを集めているんだ」とおっしゃっていて。それはめっちゃいいなと。僕はそこまで踏み込んで考えていなかったので、前田さんはどうだったのかなと……」と気になるシーンを挙げました。すると、前田監督は「うん、それで。ばっちりです」と回答しました。

そして庵野総監督から「エヴァ」の本質に触れるような発言が飛び出します。
「『エヴァ』の画面って「物語上必要なもの」と「画として美しいもの」と、あとは「僕自身の人生においてかかわりのあるもの」、あと「スタッフの好み」が描かれている。僕の好みだけじゃなくメインスタッフの好みが散りばめられていて、それが世界観を広げていると思います。アニメーションはフィクションなので、基本的に自分の好きなものだけで構成できるんですよ。実写だと『あの変なビルなんとかならないかな』と思ったら、CGでお金かけて消さなきゃいけない。でも、アニメは最初から描かなければいい。CGでつくらなければいいんです」

「基本的にエヴァは、僕の好きなものかスタッフの好きなもので構成されています。僕のなかでは宇部新川駅やクモハ42とかね。実は(第3村の)モデルになっている駅の周辺って電化されていないので、電車があるのはおかしいんですよ。キハ40という気動車(ディーゼル動車)を置いているんですけど、僕が子どものころ、見たり乗ったりしていた電車なので、思い出のところとして画面が構成されているんです。クモハ42も、内輪ですけど妻の絵も僕が大好きなものなんです。自分の人生に関わりがあるもの。そのあたりを考察していただけるのはいいかなと思います」と思いを語ってくれました。

最後には監督陣からあらためて感謝のことばが贈られました。
「最初にありがとうございますと述べてしましたが、本当にその気持ちしかありません。内容も見る人を選ぶ作品だと思いますし、(「エヴァンゲリオン」シリーズの)途中から観るというような、さまざまなハンデが1本の映画としてはあると思いますけど、それでも『おもしろい』と言ってくださって、ありがとうございます という気持ちです。また制作中、コロナで大変だったんですけど、僕たちが在宅で作業している間、制作のみんなが動き回ってくれたり、いろいろな頑張りをしてくれたので、そこにもお礼を伝えたいです。ありがとうございました」と前田監督。

「今日もコロナで不安があるなかで、観に来ていただいてありがたいと思っています。ありがとうございました」と鶴巻監督。

そして、最後に庵野総監督は席から立つと、客席を向いて再度、お礼のことばを伝えます。
「あらためてお礼を申し上げます。ありがとうございました。制作の途中からコロナ禍に見舞われて、僕たちだけでなく日本中、世界中が大変な状況に見舞われてしまいました。今もまだその状況が続いています。こういう厳しい時期に劇場まで足を運び、作品をおもしろいと言ってくださることに感謝いたします。本当にありがとうございました」。

一同が壇上から降り、ホールから退出するときに、庵野総監督は、緒方さんを先に見送ると、最後まで会場に残り、客席に深々と三度頭を下げました。26年間、作品を通じてファンと向かい合ってきた庵野総監督。「エヴァンゲリオン」シリーズの最後の舞台あいさつは、庵野総監督のファンへの感謝と、会場からの大きな拍手で華々しく締めくくられたのでした。

次号、5月10日発売の月刊ニュータイプ6月号では、「シン・エヴァンゲリオン劇場版」表紙&巻頭特集をお届けします。ぜひご期待ください。

【取材・文:志田英邦、写真:廣瀬健】

「シン・エヴァンゲリオン劇場版」
全国劇場で公開中
総監督:庵野秀明

リンク:「エヴァンゲリオン」公式サイト
    公式Twitter・@evangelion_co