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「おしえて北斎!」原作・監督いわきりなおとインタビュー「あきらめなければ漫画家にも、アニメ監督にもなれる」

2021年04月29日 12:00配信
原作・監督のいわきりなおとさん
原作・監督のいわきりなおとさん(C)いわきりなおと/CWF

ショートアニメ「おしえて北斎!-THE ANIMATION-」がABEMAなどで好評配信中です。

原作は『夢をかなえる 爆笑!日本美術マンガ おしえて北斎!』。将来立派な絵師になる夢を持つ高校1年生・岡倉てんこりんは、その志とは裏腹にやる気も才能もゼロで、練習もサボってばかりのダメダメ女子高生。そんな彼女の前に「風神雷神図屏風」の雷神が現れ、てんこりんの夢を叶えるため、時空を超えて日本美術界のスター絵師達を呼び出していきます。

監督は、イラストレーター・漫画家で、原作者でもあるいわきりなおとさん。日本美術や歴史、国宝マニアで文化財への造詣も深いいわきりさんに、その異色の経歴や作品に込めた思いなどを聞きました。

国宝マニアで日本美術も大好き。病気を機に「やっぱり漫画を描きたい!」


小学生の頃からイラストレーターや漫画家になりたかったといういわきりさん。当時は大阪府在住で、奈良の大仏や京都にある数々の国宝を身近に感じながら育ちました。就職のため上京し、ゲーム会社に勤めるかたわら漫画やイラストの仕事をこなし、趣味の文化財めぐりをしていたそうです。

「営業用ポートフォリオに日本美術の紹介漫画を入れていたら、それをきっかけに国宝や文化財を描く仕事をもらうようになり、ありがたいことに次第に依頼が増えていきました。国宝や日本美術が大好きだったので、そういった漫画やイラストを描けるのはすごく嬉しくて。東京は東京国立博物館(トーハク)に各地から集めた文化財や日本美術の展示があるのがすごくいいですね。半分取材、半分趣味でトーハクに行って、1日過ごす日もありました」

ところが、ゲーム会社を辞めてフリーで仕事をしていた30代半ばに、腎臓病だと診断されてしまいます。

「入院生活中の日課は、毎朝の散歩。通りがかったオープンカフェで漫画家の卵が編集者に原稿を見せている場面に遭遇したんですよ。『うらやましい! そういうの、僕もまたやりたい!』と思って。病気で一度あきらめたけれど、やっぱり漫画を描きたい。そういう気持ちが膨らんでいた頃、退院後に『コルク×note マンガコンテスト』が開催されると知って火がつきましたね」

※株式会社コルクは、佐渡島庸平氏が2012年に設立した漫画家・作家のエージェント会社。数々の有名クリエイターが所属し、プロの漫画家を目指す人に向けた講座や、編集者・声優志望者向けの講座も開催している。

生粋の日本美術好きのいわきりさんが、第1回「コルク×note マンガコンテスト」に応募したのは2016年。受賞者はnoteで連載する権利を得ることができます。コンテストでは、785作の中から7作が入選。いわきりさんの『日本美術をめぐる冒険』もそのひとつでした。

当時、コルクで編集者をしていた柿内 芳文氏(現:株式会社STOKE代表)と、noteの代表で編集者・加藤貞顕氏がダブル編集としてついてくれることも、いわきりさんの気持ちを後押ししたといいます。

※柿内氏はコルクで編集者として『インベスターZ』や『漫画 君たちはどう生きるか』を担当。現在は株式会社STOKE代表。加藤氏は『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』の編集を担当した。


入選したいわきりさんが、2人の編集者に見せた連載案が『おしえて北斎!』でした。いわきりさんが漫画・イラストの専門学校で講師をしていた頃に生徒に伝えたかったことを漫画にしたといいます。

「でも、描き進めるうちに、気づけば自分へのメッセージになっていました。“たとえ下手でも、才能がなくても、自分を信じてずっと続けていくこと”が大切。どんなに絵がうまくても、やる気がなくてはどこにも到達できませんから。最終回は自分でも泣きながら描いていました」

アニメ化のきっかけは『君の名は。』地上波初放送!?


アニメ化が決まったは2018年。正月に新海誠監督の大ヒット作『君の名は。』が地上波初放送したことも関わりがあるとか。

「ずっと新海誠さんの大ファンで『ほしのこえ』の時から大好き。でも、新海さんはどんどん人気になって、あまりにすごい人になったから、途中から逆に見られなくなっちゃったんですが、『君の名は。』の地上波放送を娘が一緒に見たいというので見たら……やっぱり新海さんはすごい! 面白い!と感動しました (笑) それで、facebookに感想を書いたんですが、それを読んだコミックス・ウェーブ・フィルム代表の川口典孝さんに『ちょっと話をしない?』と声をかけていただきました」

※コミックス・ウェーブ・フィルムは、新海誠監督作の制作やクリエイターのマネジメントを行うアニメーションスタジオ。

コミックス・ウェーブ・フィルムとは、いわきりさんが過去に監督したアニメ『楓ニュータウン』(2006年)でも制作をともにしている。

「『君の名は。』を見て、またアニメをつくりたい気持ちが膨らんでいきました。川口さんはきっとそれに気づいていたんでしょうね。だから僕を呼んで話をしてくれたのだと思います。アニメを作りたいことを伝えると『スタッフを自分で集められるならうちでやっていいよ』と言ってもらえました」

主題歌を歌うアーティストも、メインスタッフも、全ていわきりさんの声かけで集まったメンバーだという。アニメでは、前半はハイテンションギャグにすることで作品に入りやすくし、物語が進むにつれメッセージ性を強くしています。また、絵師たちの絵画は全て本物を登場させるこだわりも。

「美術を扱う作品なので、やっぱり本物を使いたかったんですよね。登場する絵師を選ぶ時も、伝えたいメッセージにぴったりであることと、絵画を出すのに著作権がクリアできることを前提に選びました。アニメに出てくる絵画は全てトーハクに使用の協力を得たものなので、トーハクにいけば登場する絵師達の作品の実物を見ることもできます」

各話に登場する美術界の巨匠達も魅力。尾形光琳(CV:KENN)はホスト風、⾼橋由⼀(CV:⾼橋英則)は熱血、歌川国芳(CV:林勇)はラッパーなど個性豊かで、声優の演技も存分に楽しめるキャラクターに。日本美術界の大スター達が主人公のてんこりんに伝える“夢を叶えるためのお言葉”は、心強いメッセージになっています。

「例えば、岸田劉生役の小野大輔さんは、キリッとした喋りから子煩悩パパへのキャラの切り替えを巧みに演じてくれました。雷神役の小西克幸さんはアドリブをお願いしたらどれも一発OK、本当に面白くてハマっていましたね。キャストのみなさんのおかげで、さらにポップになりました。

“絵師のお言葉”で特に好きなのは、第3話の狩野永徳(CV:平川⼤輔)の『描きたいと思う気持ち それがあるだけで才能の塊なんだ!!』。僕自身、ずっと絵が下手だとか、「まだ続けているの?」と言われてきました。でも、あきらめなければ漫画の連載もできるし、アニメの監督だってできました。“継続は力なり”です。

僕にとって日本美術は、漫画やアニメーションとも地続きの存在。平面的で、影やパースを気にしなくても描ける。高畑勲さんも絵巻物を『12世紀のアニメーション』と呼んでいましたが、鳥獣戯画も静止画だけど動いているように見えますよね。難しく捉えられがちだけど、『おしえて北斎!-THE ANIMATION-』で日本美術って実は若者向けで、すごく楽しいものだと伝わると嬉しいです」

「おしえて北斎!」はABEMAほかにて好評配信中
「おしえて北斎!」はABEMAほかにて好評配信中(C)いわきりなおと/CWF

【文・構成:川俣綾加】

■ショートアニメ「おしえて北斎!-THE ANIMATION-」
2021年3月7日よりABEMAにて先行、3月8日よりほかサイトにて順次配信中

スタッフ:原作…いわきりなおと「夢をかなえる 爆笑!日本美術マンガ おしえて北斎!」(サンマーク出版)/監督…いわきりなおと/アニメーション制作・製作…コミックス・ウェーブ・フィルム
キャスト:岡倉てんこりん…和氣あず未/雷神…小西克幸/狩野カノン…若井友希

リンク:ショートアニメ「おしえて北斎!-THE ANIMATION-」公式サイト
    公式Twitter・@hokusai_anime