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自分との戦いになる瞬間――「シン・エヴァンゲリオン劇場版」作画監督・浅野直之インタビュー

2021年05月15日 17:00配信
「シン・エヴァンゲリオン劇場版」は好評公開中
「シン・エヴァンゲリオン劇場版」は好評公開中(C)カラー

公開中の「シン・エヴァンゲリオン劇場版」。完結編となる本作について、そして「エヴァンゲリオン」シリーズについて作画監督のひとり・BパートとDパートの前半を手がけた浅野直之さんにお話を伺いました。

――浅野さんは今回の「シン・エヴァンゲリオン劇場版」で作画監督を務められていますが、浅野さんにとって「エヴァ」はどんな作品ですか。

浅野 自分は1980年生まれなんですけど、たしか中学三年生のころに「新世紀エヴァンゲリオン」の放送が始まったんです。当時15歳で(碇)シンジくんとドンピシャの世代でした。そうしたら、僕のまわりの人たちがどんどんヒートアップしていって。その熱の大きさに僕自身はついていけなくて、「エヴァ」とちょっと距離があったんです。「エヴァ」は、めちゃめちゃ愛がなければ触れてはダメなんだという感じがありました。生半可に触ると、火傷しそうな存在という感じでしたね。

――浅野さんがアニメーターになって、同業者から見る「エヴァ」の印象は変わりましたか?

浅野 「エヴァ」を見てアニメーターを目指したという人が同世代には多くて。まわりの友達に「エヴァ」に参加している人がいたんですけど、みんな並々ならぬ思いをもって参加していたので、それくらいの強い想いがないと参加してはいけないんじゃないかという印象がありましたね。「聖域」みたいな(笑)。自分の実力的にも「エヴァ」の作画は難しいんじゃないかなっていう怖れもあったので、それまでまったく機会がなかったのですが。なぜか「新劇場版」でお声がけをいただいたんです。

――浅野さんは「:序」で原画として参加していますよね。

浅野 ほんの数カットです。それで「『:序』に参加していますね」とよく言われるようになって、ちょっと嬉しい感じはありました。そうしたら、「シン・」の原画にお声がけをいただいて、スタジオカラーさんに入ることにしました。コロナ禍の前は、席をつくっていただいて、そこでスタジオカラーさんの資料を見ながら、作画をしていたんです。もちろん自分はTVシリーズも、「新世紀エヴァンゲリオン劇場版」も、「:序」「:破」「:Q」も観ていたので、それを自分なりに咀嚼して、これまでの「エヴァ」の画に近づけて描きつつ、自分なりの何かを入れないとおもしろ味がないかなと思っていました。

――スタジオカラーさんにいらっしゃるときは、スタッフのどなたとお話することが多かったですか?

浅野 原画の森久司さんですね。森さんはいろいろなことに興味をもっていらして、いろんなお話をしました。あとは金(世俊)さん(メカ作画監督・メカニックデザイン)。金さんとは15年前くらいから知り合いだったし、席も隣同士だったのでわりとお話をしていましたね。金さんが仕事が大変だと言ったら、僕も仕事が大変だと話をして、お互いに傷のなめあいをしていました(笑)。

――「シン・」全般を通して、庵野秀明総監督とのお仕事はいかがでしたか?

浅野 刺激的でしたね。実は、庵野さんの仕事ぶりを見たいというのが、自分が「シン・」に参加したモチベーションのひとつだったんです。庵野さんの座席は近くにあったのですが、まるでロックスターのようなオーラがあって、庵野さんの言うことだったら、何でもやるよという感じがありました。やっぱり、庵野さんはトップクラスに吹っ飛んでいるところがある方なので、本当に今回ごいっしょできて、良い経験になりました。

――「シン・」の現場で、最後に関わったお仕事を教えてください。

浅野 最後の最後は素材納品の日で……12月17日だったかな。その日に何か急きょ作業があったら対応しなくてはいけないということで、スタジオカラーさんに入って、待機していたんです。コロナ禍でずっとスタジオに入っていなかったので、久しぶりに自分の席について待機していました。そうしたら、庵野さんが編集室から出てきて、お疲れさまでしたと言葉をかけてくださって。そのときは仲間になれたような気がしました。そういう瞬間は、アニメーションの仕事をしていて、わりと楽しいところでもあって。学園祭や部活動みたいな楽しさを味わえるんです。「エヴァ」でその瞬間をみんなといっしょに味わうことができたのは感慨深いです。

(プロフィール)
●あさの・なおゆき/アニメーター。近年は「おそ松さん」(第1&2期、劇場版)、「パトレイバーREBOOT」や「映像研には手を出すな!」などキャラクターデザインも数多く手がける。

「シン・エヴァンゲリオン劇場版」は好評公開中
「シン・エヴァンゲリオン劇場版」は好評公開中(C)カラー


現在発売中のニュータイプ6月号では、浅野直之さんを含むスタッフ・キャスト30名以上のインタビュー&コメントを掲載。総作画監督・錦織敦史さんの描きおろしイラストが目印です。

「シン・エヴァンゲリオン劇場版」が表紙のニュータイプ6月号は好評発売中
「シン・エヴァンゲリオン劇場版」が表紙のニュータイプ6月号は好評発売中(C)カラー

【取材・文:志田英邦】