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「エヴァ」が終わっても人生は続く――「シン・エヴァンゲリオン劇場版」副監督・小松田大全インタビュー

2021年06月07日 18:00配信
「シン・エヴァンゲリオン劇場版」は好評公開中
「シン・エヴァンゲリオン劇場版」は好評公開中(C)カラー

公開中の「シン・エヴァンゲリオン劇場版」。完結編となる本作について、そして「エヴァンゲリオン」シリーズについて、副監督としてアバンパートやCパートを手がけた小松田大全さんにお話を伺いました。

――小松田さんはこれまでも「新劇場版」シリーズにかかわっていらっしゃいました。「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」の全記録全集では「庵野秀明作品に二度人生を変えられた」とおっしゃっていましたね。大学進学のときに物理学専攻を選ばれたのは「トップをねらえ!」を見たことがきっかけで、アニメーションの仕事を志されたのは「新世紀エヴァンゲリオン」をご覧になったからだと。

小松田 はい。先日放送された「プロフェッショナル 仕事の流儀~庵野秀明スペシャル~」でも庵野さんが「(人の人生を変えてしまって)申し訳ない」とおっしゃっていましたが、人生が変わった結果、僕は好きな仕事に就くことができた。「エヴァ」に出会ったことで、あこがれの人たちと一緒に仕事ができるようになったことは、人生の宝だと思っています。

――「エヴァ」のお仕事は小松田さんにとってどんな経験、どんな場でしたか。

小松田 「エヴァ」は総監督の庵野(秀明)さんが考える映像の刺激みたいなものが、いっぱいに詰まっている作品だと思います。それは作画であったり、レイアウト、画角やアングルであったり、アクション、音楽や効果音であったり。スタジオカラーは、それを実現するためならば、時間とコストをどれだけかけても達成しようする一大実験場みたいなところで、今回の「シン・」はまさにそういう場であったなと。僕も「プロフェッショナル」を見て、各セクションがこれほどのボリュームでやっていたのかと初めて知ることばかりで、改めてすごい現場だったんだなと思いました(笑)。スタッフの一人として制作に関わっていても、自分の担当パート以外の進捗や、他のセクションの作業の様子を俯瞰して見る機会というのは殆どないですからね。

――「シン・」のスタジオカラー内の制作最終日は2020年12月17日だったそうですが、小松田さんはスタジオにいらっしゃったんですか?

小松田 ええ、いました。制作の最後のほうは、リテイクが出たカットの修正指示を出したり、自分で対応できる範囲で動画の修正をしていました。谷田部(透湖)さん(副監督)をはじめとして、デジタルで作業できる人は作画修正をギリギリまでやっていましたね。

――コロナ禍で大変な時期だったと思いますが、制作終盤はスタジオに入られていたんですね。

小松田 そうですね。僕は作画の方が多くいるフロアにいたのですが、原画マンさんはみんな作業を終えて、次の仕事に移っていた時期だったのでスタジオの中はかなり人が少なくなっていたんです。制作終盤になると、制作スタッフを応援してくださる方々からのさしいれがふんだんに届いて、本当にありがたかったです。ケータリングのカレーが食べられる日もあって、庵野さんから「小松田くん、もっと食べなよ。いけるんなら二杯目を食べたほうが良い」と言われて、体重増えちゃう……みたいな(笑)。

――結果、最後まで作品に付き添っているメインスタッフ陣が栄養過多になっていると(笑)。

小松田 とてもありがたい話ではありますし、たしかに制作終盤は大変なんですが、もし、さしいれをしたいと思われる企業の方々は、制作が佳境に差しかかるちょっと前くらいからおくっていただけるととても良いんじゃないでしょうか(笑)。

――そのさしいれの応援のおかげもあり、「シン・」は無事に公開を迎えています。「シン・」の最後に出るエンドロールの「終劇」の文字をご覧になって、どんなお気持ちになりましたか。

小松田 「新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを君に。」の「終劇」の文字を観たときは、何もできずそのまま電車に乗って家に帰って布団に横になるしかない……みたいな衝撃がありました。でも、今回の「終劇」はすっと飲み込めてしまう感じがあって。まだ、言葉でうまく説明できるほど整理できてはいないのですが、「終わってしまった」「今まであったものがなくなってしまった」ということに、まだ気づけていないような感覚とでも言うんでしょうか。

――まだ「終わった」という実感はないということですか?

小松田 「シン・エヴァンゲリオン劇場版」で「エヴァンゲリオン」という作品が終わったあとも、僕はアニメーションの仕事をしていて、当たり前のことですが自分の人生は続いているんですよね。二十数年前の「終劇」のときは、自分の人生も終わったと錯覚するくらいに作品とシンクロしていたんですよね、観客として。もちろん今回も「エヴァ」が終わって、燃え尽きてしまうような感覚がなかったわけではないですけど、たとえるなら学校を卒業をして、日を追うごとに少しずつ寂しさをかみしめているくらいの感覚なんです。「エヴァ」が終わっても、この先ずっと日々の暮らしが続いていくんだな……と頭の中で理解しようとしている途中。エヴァが終わったあとも、日々を生きていくんだという実感を、今まさに味わっているところですね。

●こまつだ・だいぜん/本作の監督の中山勝一とともに「:破」「:Q」の副監督を務める。「:Q」後の'16年、「ブブキ・ブランキ」で監督デビュー

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現在発売中のニュータイプ6月号では、スタッフ・キャスト30名以上のインタビュー&コメントを掲載。総作画監督・錦織敦史さんの描きおろしイラストが目印です。

ニュータイプ6月号では、スタッフ・キャスト30名以上のインタビュー&コメントを掲載
ニュータイプ6月号では、スタッフ・キャスト30名以上のインタビュー&コメントを掲載(C)カラー


【取材・文:志田英邦】