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子どものころから「エヴァ」が絵を描く原動力だった――「シン・エヴァンゲリオン劇場版」作画監督・井関修一インタビュー

2021年06月08日 18:00配信
「シン・エヴァンゲリオン劇場版」は好評公開中
「シン・エヴァンゲリオン劇場版」は好評公開中(C)カラー

公開中の「シン・エヴァンゲリオン劇場版」。完結編となる本作について、そして「エヴァンゲリオン」シリーズについて作画監督のひとり・アバンとAパートを手がけた井関修一さんにお話を伺いました。

――井関さんは今日(取材日)、「エヴァ」のシャツを着ていらっしゃいますね。

井関  会社(スタジオカラー)の中ではけっこう着てますね。もちろん、「エヴァ」が好きだからというのもあるんですけど。

――完成した「シン・」の初号試写をご覧になったときはどんなお気持ちでしたか。

井関 ひとことでいうと感無量です。僕は小さいころから絵を描くのが好きだったんですが、その原動力のひとつが「エヴァ」だったので。

――「エヴァ」はずっとお好きだったんですね。

井関 そうですね。当時おこづかいを貯めて、フィルムブック買いに行ったりしてました。

――「新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に」は劇場でご覧になっているんですよね。先日、井関さんのご友人がTwitterで「子どもの頃に旧劇場版(新世紀エヴァンゲリオン劇場版)を一緒に見に行った友達が今や作画監督して制作サイドにいると言うことが凄すぎる。」と投稿されて、話題になっていましたが……。

井関 幼なじみです。小さいころからお互いエヴァが好きでいっしょに「新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生」を観に行ったんです。でも、僕はそのときお金がなくて、パンフレットは通常版を買ったんですが友だちはデラックス版を買っていて。デラックス版にはエヴァ弐号機の原画が載っていたんですよ。そっちにしておけばよかった!とすごく後悔して。そのデラックス版を後日借りてセロファンを挟んで、マッキーの細い方で弐号機をトレスしたんです。それを裏からアニメ塗り(セル塗り)で塗って……。うわ、弐号機が描けた!と。そのときの感動がすごかったんですよね。

――メカを描く喜びを味わってしまった、と。

井関 当時はフィルムブックを模写していたんです。とくに「新世紀エヴァ劇場版」弐号機の戦闘シーンが好きで、わざわざA4サイズに模写してトレスしてセル塗りしての繰り返しで。それでも手が止まらなくて、「新世紀エヴァ劇場版」 のビデオがレンタルされてビデオをコマ撮りで再生して、それを模写して学校の教科書(ノートより分厚かったから)に模写した絵を一枚一枚トレスして弐号機を描いて、弐号機のアクションシーンを、パラパラマンガで再現していましたね。授業中に教科書に色を塗っていたら、先生に「教科書にそんな描いたら授業受けられんやないか!」って怒られました……。

――当時からアニメーターになりたいと思われていたんですか?

井関 いいえ、最初はただ弐号機の動きが好きだったんです。パラパラマンガを描いていくうちに、だんだん動きのタイミングみたいなものがわかってきて。アニメってすげー、アニメってこうやって動かしてるのかと。そこからアニメの画面の動き(作画)に興味を持ちだしました。そのあとに「もののけ姫」のメイキング「『もののけ姫』はこうして生まれた。」を見て、宮崎(駿)さんが紙をパラパラしているのを見て、「おっきい紙に描いてめくってるのすげー!」と。やっぱりアニメは人が一枚一枚絵を描いているんだなって、当たり前ですけど。ただアニメーターになろうとは考えていなくてカッコいい作画を見ることにしか興味はありませんでした。

――アニメーターを志したのは、何がきっかけでしたか。

井関 中学高校は見栄張ってアニメを見ないようにしてたんです。もうアニメとは卒業したんだと、お恥ずかしいことに。2浪して大学に入る前に本格的に自分の将来を考えていたころ「サムライチャンプルー」というアニメを見て「ああ、そうだ……僕は作画が好きだったんだ」と思い返して、見栄張ってアニメじゃない人生に変えようとしてたことがバカバカしく思えて大学入る前から絶対アニメーターになろうとそこで決心したんです。だいぶ決断が遅かったのですが……(笑)。親からは「東京行ってもオタクにだけはなりなさんなよ」と言われましたが「すまん、もう手遅れです」って大学のころはアニメ収集に勤しんでました。

――Twitterで書かれていましたが、就活で疲れているときに「:破」を5回見たそうですね。

井関 そうですそうです。就活のときにスタジオカラーに入りたいと思っていたんですが、当時カラーはアニメーターを募集していなかったんです。それでまずはガイナックスに入ってどこかのタイミングでカラーに入れたらいいなーと思ってたのですが、運良く動画検査の村田(康人)さんがカラーに移動することになりそれについて来た感じでスタジオカラーに入りました。

――スタジオカラーで最初のお仕事は?

井関 「:Q」で動画をやったのが最初です。いきなりマリの「やっぱし、アダムスの器か!?」のカットでしたが、村田さんの動画チェックが厳しくて動画2回リテイクされたのを覚えています。

――ちなみに、「:Q」では、子どものころからお好きなメカを描くことができたのでしょうか。

井関 8号機を描きました。ヴンダーの上でハンドガンを撃つカットの動画を描くことができたんです。当初、その動画はスケジュールの関係上、海外に発注されることになっていたのですが、すごくカッコいいカットだったので、村田さんに「このカット(の動画)をやらせてください」とお願いしたら、ヴンダーの中で(葛城)ミサトさんが「駄目よシンジ君!ここにいなさい」というカットの動画を渡されて「この優先カット終わらせたら(8 号機の動画を)やってもいいよ」と。そのミサトさんのカットを一日で終わらせたら、村田さんが制作さんに掛け合ってくれて、8号機の動画を海外に発注するのを止めて、僕のために回してくれたんです。もうテンション爆上がりで描かせてもらいました。でも……動画の枚数は尋常じゃなかったですね。

――エヴァが描けて良かったです。「シン・」ではメカは描けたんですか?

井関 残念なことに、メインでは描けませんでした。最初はメカ作監の話もあったのですが、スケジュールの関係上、全然手が回らなくて途中まで手元にあったのですが引き上げになってしまいました。唯一やれたのが第13号機が初号機を投げるカットを少しリテイクで担当したくらいでした。とはいえ、実際アニメやってわかったのが、最も難しいと思われるのが無機質なメカよりもキャラの微細な心情描写だったりするので、それはそれで充分アニメーターとしてやりがいはあったので、ギリギリではありましたが本当にやれて良かったです。

――今後、井関さんが描かれるメカも楽しみにしています。

井関 ありがとうございます。そうですね、いつの日かエヴァみたいなメカを描けたらいいなと思っています。

●いせき・しゅういち/アニメーター。本文中で語られた「ME!ME!ME!」のほかに「日本アニメ(ーター)見本市」では複数の作品で、またTVアニメ「Cutie Honey Universe」でもキャラクターデザインを務めた

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発売中のニュータイプ6月号では、スタッフ・キャスト30名以上のインタビュー&コメントを掲載。総作画監督・錦織敦史さんの描きおろしイラストが目印です。

現在発売中のニュータイプ6月号では、スタッフ・キャスト30名以上のインタビュー&コメントを掲載
現在発売中のニュータイプ6月号では、スタッフ・キャスト30名以上のインタビュー&コメントを掲載(C)カラー


【取材・文:志田英邦】