新作&おすすめアニメのすべてがわかる!「月刊ニュータイプ」公式サイト

rssボタン

ラストバトルは目を閉じることが許されない!「劇場版ソードアート・オンライン」監督・伊藤智彦インタビュー

2017年03月24日 13:45配信
ラストバトルは目を閉じることが許されない!「劇場版ソードアート・オンライン」監督・伊藤智彦インタビュー

テレビシリーズに引き続き、「劇場版SAO-オーディナル・スケール-」でも監督を務める伊藤智彦さん

(C)2016 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス刊/SAO MOVIE Project

2月18日(土)から公開中の劇場アニメ「劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-」。観客動員数140万人、興行収入20億円を突破した本作について、テレビシリーズから監督を務める伊藤智彦さんのオフィシャルインタビューが到着しました。本作が多くの人を魅了する理由からアニメ業界の今後まで、このインタビューでしか聞くことができない話をお届けします。

 

――今映画は、テレビアニメ「ソードアート・オンラインII」の後の世界を描いたものですが、映画から入っても楽しめますか?

「主人公としてキリトとアスナがいること」「舞台がゲームの世界であること」「キリトがゲーム内でものすごく強いってこと」の3つが分かっていれば大丈夫です。

――アニメや小説の世界観を知らずとも楽しめる?

もちろん知っていれば、より楽しめますが。作品を知らなくても面白かった、という声もよく聞くんですよ。そこからハマって、じゃあDVDや過去シリーズも見てみようって流れになればいいなって。

――これまで「ソードアート・オンライン」は、VR(仮想現実)のお話でした。映画ではそちらではなくAR(拡張現実)を扱っていますね。

はい。最初に原作者の川原礫さんが「今回はARをやりましょう」と宣言をしたことで決まりました。聞いた時は「VRより技術的に後退しているのでは?」とスタッフもざわつきましたが。

――確かに一般的にVRの方が手間のかかる印象を受けます。

物語でのVRは、ユーザーの意識をゲーム内に飛ばす夢の技術です。それに対して現実をベースにしたARは「地味なんじゃないか」「実際に体を動かすんでしょ? 話として無理があるのでは」と、みんな気にしていました。でも、「ポケモンGO」の事例を見ると意外といけるのかも、と途中で心変わりしましたね。川原礫さんは時代を見通す目を持っているな、と(笑)。

――PlayStationVRの出現やスマートフォン技術が進歩するなか、いずれ「ソードアート・オンライン」の世界は現実化すると思いますか?

なくはない、と思います。いろいろと法整備などが必要になるでしょうけど。むしろなったらいいな、という側面も作品には込められているので。

――ARを映像表現するにあたって大変だった点はありますか?

ARは表現として、いくらでも地味にはできるんですよ。単純に物体の上にウィンドウ表示をつければ、それでARでござい、ということになってしまうので。地味にならないためにはどうするか、その点には苦労しました。そこで、街の背景を塗り替えるなどインパクトのある表現も使うように心がけましたね。

――今作は映画初監督ながら、すでに興行成績13億円(※取材日時点)を突破する好成績です。今の率直なお気持ちは?

うれしいというよりホッとしている気持ちが大きいですかね。諸手を挙げてヤッター!というのも違うんですよ。10億円を突破することが自分の達成ポイントではないので。まず、しっかりと作品を完成させるのが第一。次に漠然と、みんなに見てもらえるといいな、といった気持ちでした。

――では、監督としてヤッター!ポイントはどこなのでしょうか?

作ったスタッフが満足してくれたことでしょうかね。作り終わってから「面白くないっすよ。お酒が進まない」って感じだったら俺も落ち込みますよね。スタッフみんなから、良かったですって言われるのが自分の目標でした。

――今作を制作するうえで意識した作品はありますか?

「君の名は。」の名前を出させようとしてません?(一同爆笑)。制作中に公開されたので見ましたけどね。どちらかというと「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」や、「アベンジャーズ」などのマーベルものですかね、意識したのは。そうした作品は、大量に出るキャラクターをいかにさばくかも大事じゃないですか? 今回の映画では多くのキャラが動き回るので参考になりましたね。

――「君の名は。」の話が出たのでお聞きしたいのですが、ご覧になっていかがでした?

今の若い人たちはこういうのがいいんだな、と。時代の傾向として、理詰めよりは感情優先のものをみんな見たがっているんだろうと感じました。

――今作にその影響はありましたか?

いえ。特に舵を切りかえることはしなかったですけど。無理に理詰めにこだわるより、感情を解放して楽しむことが、今の時代は大切なのだと知りましたね。

――しかし「君の名は。」は一部の評論家に理論的でないと口撃されてはいましたね。

もちろん何割かの理屈は必要です。でも、その理をあえて抑えて感情を優先させるポイントがあるんじゃないかなって。できるなら俺は理のパーセンテージを高く持ちたいですが。

――なるほど。

今後は「君の名は。」のヒットを受けて、そのプロットにのっとった劇場オリジナル作品がどんどん生まれてくると思います。ただ、個人的にはあまりそうしたことに左右されずに細々と仕事を続けていきたいですね。

――監督から見た今作の注目点は?

アクションシーンです。MX4Dなどに限らず、劇場用に最適化された画と音にこだわりました。家庭環境では味わえない体験ができると思います。具体的にはラストバトルに注目してほしいですね。もう目を閉じることは許されない。まばたきするとカットに追い抜かれるというか。そこは目をかっぽじって見てほしいです。

――作品内で監督が好きなキャラクターは誰ですか?

テレビシリーズではシノンという女性キャラが好きでしたが、劇場版ではオリジナルキャラのエイジですね。主人公と対立する役ですが、こいつが情けないやつなんですよ(笑)。

――情けないのに好きなんですか?

例えば、彼が最初の戦闘の時「ついてこい!」って走り出すんですけど、誰もついてこない。かわいそうなやつなんです。最初、俺は気にならなかったんですけど、あとでスタッフに「いつもここで笑っちゃう」って言われて。なるほど、結構イタい子なのかなって。俺はそういうキャラが好きで、主人公のキリトくんより親身になれますよね。奥さんにも「主人公の言っていることはよく分からなかったけど、エイジの方が共感できる」って言われました。

――キリトよりそっちに感情移入する観客が多かったら面白いですね。

若い人たちは強いキリトくん、アスナさんに共感すると思うんです。なんでもできる万能感を持った世代ですから。でも、大人は違います。

――違いますか。

世代で感情移入するキャラって変わると思うんです。子どもの頃、「ファーストガンダム」を見てアムロ目線でのめり込んで、大人になって見返すとブライト艦長の中間管理職的な立場に共感するような。

――大人目線で見るとエイジに対して「分かるぞ!」って気持ちになると(笑)。

はい。みんながみんないい思いをできるわけじゃないぞって。つらいところを多く背負っているキャラですね。彼目線で見ると切ない話になっちゃうかもしれませんが。

――細田守監督のアニメ映画「時をかける少女」や「サマーウォーズ」では助監督を務めた伊藤さん。細田さんから学んだことは何ですか?

映画に立ち向かう姿勢ですね。テレビのエピソードを抜け出したものを映画と言って作るんじゃないよ、って。それ1本で劇場に来た人を満足させるものを作らねばならない、そしてエンターテインメントでなければならない、と。

――その思想は伊藤さんに受け継がれて……。

受け継がれてというか、マネをしたというか(笑)。当時、適当なことを言ってよく怒られました。「お前はもうちょっと考えて作りなさい!」なんて。

――マルチなメディア展開を見せる「ソードアート・オンライン」ですが、なぜこれほど多くの人を引きつけるのでしょう?

実は俺もよく分からないんです。なんとなくですが特筆した魅力というより、ドラマ性やアクション性、舞台設定などの複合的な評価によって多くの人に受け入れられた気がします。

――これだ!って分かりやすいポイントがあるわけじゃないんですね。

あえて言うなら日本のアニメって、ひ弱な体型の男性が活躍する場合が多いじゃないですか。そこに批判的な意見も多いですよね。「ソードアート・オンライン」の場合だとゲーム内の世界だから“パラメーターが高いから強い”って理由付けがなされています。この、ある種のリアリティも人気の理由かもしれませんね。これはゲーム世界の物語だからさ、っていうエクスキューズがある。

――では、この作品をどんな人に見てもらいたいですか?

アニメや原作のファンはぜひ見てください(笑)。キリト、アスナのラブストーリーも見どころなので「ソードアート・オンライン」を知らないカップルで見にいくのも楽しめると思います。

――ところで今後、どんなアニメがヒットするんでしょうか?

それが分かっていたらむしろ黙ってる(笑)。そんなの絶対にバラしませんよ!

■劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-

公開:2月18日(土)より全国ロードショー中

スタッフ:原作…川原礫/監督…伊藤智彦/脚本…川原礫・伊藤智彦/助監督…森大貴/キャラクター原案…abec/キャラクターデザイン・総作画監督…足立慎吾/美術監督…長島孝幸/美術監修…竹田悠介/色彩設計… 橋本賢/音響監督…岩浪美和/撮影監督…脇顯太朗/音楽…梶浦由記/制作…A-1 Pictures/製作…SAO MOVIE project/配給…アニプレックス

キャスト:キリト…松岡禎丞/アスナ…戸松遥/ユイ…伊藤かな恵/リーファ…竹達彩奈/シリカ…日高里菜/リズベット…高垣彩陽/シノン…沢城みゆき/クライン…平田広明/エギル…安元洋貴/茅場晶彦…山寺宏一/ユナ…神田沙也加/エイジ…井上芳雄/重村教授…鹿賀丈史

リンク:劇場版「ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-」公式サイト

    公式twitter・@sao_anime