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「月刊ニュータイプ」公式サイト
3月24日(金)にリリースされた、アニソンメーカー連合による世界最大のアニソン定額聴き放題サービス“ANiUTa(アニュータ)”。月額600円で、約5万曲(※サービスイン時点)ものアニメ・声優ソングを好きなだけ聴くことができる、まさにアニソンファン待望の画期的なサービスであり、アニソンサブスクリプション(月額の料金を払うとすべての曲が聴き放題になる。以下サブスク)サービスにとって“黒船”と呼ぶべき存在です。
本稿では、株式会社フライングドッグでも代表取締役社長を務め、ANiUTa(アニュータ)を運営する株式会社アニュータの代表取締役社長に就任した佐々木史朗さんへのインタビューを敢行。サービスの全体像から気になる専用アプリの使い勝手まで、幅広く語っていただきました。
――ANiUTa(アニュータ)の準備はいつ頃から始まったのでしょうか?
佐々木:そもそもランティスの井上(俊次)社長とは、だいぶ前から「アニソンメーカーが一緒に何かできたらいいですね」という話はしていたんですよ。ただ、実際にサブスクに関して具体的に話し始めたのは、1年ほど前でしたね。
――アニソン業界にも、他の音楽ジャンルのような危機感があるのでしょうか?
佐々木:CDや映像ソフトの売上が落ちていることは間違いないと思います。ただ、アニメやアニソンが好きだったりライブに行ったりグッズを買ってる人って、むしろ増えていると思うんですよね。もちろん「これでCDやユーザーが1曲ずつ購入するアラカルト配信の売上が落ちるんじゃないか?」という怖さはありますが、それよりアニメやアニソンが好きな人間が減って先細る方がもっと怖いと思うんです。なので、こうやって新しく興味を持った方向けの入口をちゃんと作っておくことは必要だと思っています。
――そんな人たちにとって、この価格設定はたくさんの音源に触れるきっかけに十分なりうるものだと思います。
佐々木:アニュータは基本的にはアニメだけの“専門店”ですし、あまりお金のないであろう若い方たちのことも考えて、この価格に設定しました。なので、ディープなファンからライトなファンまでアニュータを通じてどんどん音に触れてほしいですし、逆にそこからアニメを観ようと思ってもらっても嬉しいし。そのうねりが日本だけじゃなくて、世界中で起こればいいなとは思っています。
――従来のサブスクサービスでは、曲のラインナップが貧弱で、アニソンファンからの不満は非常に高かったように思います。
佐々木:そうですね。でも、今回ランティスさんやフライングドッグを含めてサブスク初解禁の曲は数万曲あるので、例えば「マクロスΔ」でファンになった方が過去のシリーズの曲を聴くきっかけにも当然なるでしょうし、そうして「マクロスF」を聴いたお客様が「May’nちゃん、中島愛ちゃんいいな」と思ったら彼女たちの曲も、さらには彼女たちが主題歌を担当した別のアニメ作品をたどれて……マクロスひとつ取っても、ここまで芋づる式に好きになってもらうことが可能なんですよ。サントラだって引っかかります。
――なるほど。そんな過去の曲はもちろん、新曲も同時配信されるのでしょうか?
佐々木:同時配信できる曲はどんどんやっていきますし、さらにアニュータでの先行配信も行っていきます。ただ、それぞれ楽曲やアーティストによってもルールがあると思うので、そこは楽曲をご提供いただくメーカーさんのご判断にお任せしています。また、楽曲を制作している会社が直接合弁で配信をしているので、アニュータでしか聞けないオリジナル曲もどんどん作っていきたいと思います。そういった独占コンテンツが、作り手が配信事業をする唯一無二の強みなのではないでしょうか。
――そこで気になるのは、やはりアプリ自体の使い勝手です。
佐々木:「軽くサクサク動く」ことを何より重視しています。それと、キャッシュをうまく使うので、一度読み込んだ曲は通信なしに再生することができます。また、曲が再生されたら、極力止まらないということも心がけています。聴き終わったら勝手にどんどん次が始まるように作っているので、ストレスなくアニソン漬けになれるんです。
――なるほど。では、アニュータ独自の点を挙げるとするなら?
佐々木:「作品名で探す」という、カラオケのアニメ・特撮カタログをモデルにした検索があります。その上、通常の検索窓でもタイトル検索が可能で、例えば「ワルキューレ」で検索したら、アーティスト名の他に「ワルキューレロマンツェ」の主題歌も引っかかってきたり……そうやって、特に若い世代の人たちに知らないものをオススメして、どんどんアニソンを好きになってくれる人を増やしたいんですよ。専門店の店頭って、お店の店員さんから「これ好きなの? じゃあたぶんこれも好きになるよ!」って薦められてどんどんそのジャンルを好きになるっていうことがあるじゃないですか? そういうことが、アニュータならできると思うんです。
――また、作り手の方々への還元など、業界自体へもさまざまな影響を与えると思うのですが。
佐々木:どう変わるかはサービスインしてみないと、一概には言えないところですね。作り手への還元という事で言えばたしかに単価が安くなるのは事実ですが、会員が増えれば配信以外の部分も含めてカバーできると思んですよ。なので、お客様をどんどん増やして、作り手の方々への還元も増やしていきたいですね。また、このサービスはレコードメーカー自身が運営するので中抜きなしに還元できますし、数千万曲ある他の総合サービスの中のアニソンと、5万曲全部がアニソンでできているアニュータとでは当然配分率も違うとは思っています。
――そんなアニュータを通じて、ますますアニソン業界が活性化していくことを期待しています。では最後に、ユーザーの方々へメッセージをいただけますか?
佐々木:本当に、楽しみ方は千差万別で。何よりも、アニソンに興味を持った人やアニメを好きな人が、もっと好きになるツールとして利用してほしい、というのがいちばんですね。それに、せっかくこれだけのメーカーさんが集まっているので、サブスクだけではもったいないとも思うんです。おそらく海外が中心になるとは思いますけど、音楽や映像パッケージ以外の事業での協力体制にはいろんな可能性があると思っているので……夢はアニュータプレゼンツの世界ツアーを実現させることと、世界唯一で最大のアニソンサービスにすることですね。そして、もはや日本発信の新しい音楽ジャンルとも言えるアニソンを聞いて影響されて、いろんな国の人たちが自分の国のオリジナルアニソンを作ってくれるようになってくれたら、それもまた嬉しいです。【取材・文=須永兼次】