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畠中祐が悩んだ末にたどり着いた「真田小僧」、その仕上がりは!?――声優落語天狗連 第十六回レポート

2018年06月04日 16:00配信
畠中祐が悩んだ末にたどり着いた「真田小僧」、その仕上がりは!?――声優落語天狗連 第十六回レポート

(左から)ニッポン放送アナウンサー 吉田尚記さん、立川志ら乃師匠、畠中祐さんさん、瀧川鯉八さん、サンキュータツオさん

テレビアニメ「昭和元禄落語心中」とのコラボーレションをきっかけにはじまったイベント「声優落語天狗連」の第十六回が、2018年5月20日(日)、東京・浅草の東洋館にて開催されました。

このイベントは若手声優が落語に挑戦する「声優落語チャレンジ」とプロの噺家による口演、趣向の違う2つの落語が楽しめる、アニメファンにとっても落語ファンにとっても嬉しいイベント。当日の浅草は、三社祭で大変な熱気でしたが、会場の東洋館も祭りの熱気に負けないくらい、熱いファンの熱気に包まれていました。

イベントは毎回恒例、イベントの発起人であるニッポン放送アナウンサー 吉田尚記さんと、お笑いコンビ「米粒写経」のメンバーで国語学者のサンキュータツオさんによるトークコーナーからスタート。満員の客席を前に「アニメと落語が好きだなんて、学生時代にはとても言えなかったのに」と、2人とも感慨深げな様子です。「オタクに恋は難しいどころじゃなかったんですよ、社会生活ですら難しい」(タツオさん)、「(タツオさんとの出会いは)もう亜人が亜人と出会う感じだった」(吉田さん)……と、アニメ作品で当時の状況と会の趣旨を説明しつつ、客席を温めていきました。

普段から言葉に慣れ親しみ、さらにアニメやマンガも大好きだという2人ですから、トークの話題は多岐にわたり、今期放送中アニメ作品のマニアックな見立てや、タツオさんの書かれた文章が大学入試の試験問題に使われた話、さらには東洋館の歴史についてが語られました。東洋館は、もともとストリップ劇場で、その幕間にツービートが漫才をやっていたとタツオさんが説明すると、客席からは驚きの声が。そこに吉田さんが、「そのビートたけしが立っていた場所に、オフィス北野所属のサンキュータツオが立っている……!」とツッコミを入れると、タツオさんは「そうです! 今話題のオフィス北野所属です!! いや、リアクションに困るのはわかるけど(笑)」と、自虐ネタともいえる近況を報告していました。また、現在の活動の中心は(タツオさんがプロデュースしている)「渋谷らくご」という初心者でも楽しめる落語イベントだとも。そして、そのイベントで昨年賞を取ったのが、今回2度目の登場となる瀧川鯉八さんだそうです。

トークの話題が落語に戻ってきたところで、吉田さんは今回落語に初挑戦する畠中祐さんの紹介に。畠中さんは「バッテリー」(永倉豪役)、「うしおととら」(蒼月潮役)、「甲鉄城のカバネリ」(生駒役)をはじめ、アニメ、ゲーム、吹替えと幅広く活躍している人気声優。その畠中さんにずっと出てほしかったという吉田さんは、オファーの理由を「この人が落語をするの?という意外性を愉しむというのはあるけど、畠中くんの場合は絶対に噺家が似合う、前座みたいだ、見たい! それに性格的にも真面目に稽古しそうじゃないですか」と力説していました。

稽古の模様を収録した動画も上映されましたが、その映像には吉田さんの言葉どおり稽古に真剣に向き合い悪戦苦闘している畠中さんの姿が……。言葉が出ず頭を抱える畠中さんに、稽古番の立川志ら乃師匠からは「大声で、リズムでしゃべる基礎訓練をしなさい。精度を上げる必要はない。うまくやろうなんて考えてはいけない」と、厳しい言葉が投げかけられます。

その稽古のつけ方を見たタツオさんは、「大声でやってからの引き算、芝居ではなく落語にするための掛け合い練習、そして間の詰め方と、段階を踏んで教えているのがよく分かる」とコメント。たくさんの人に落語を教えてきた、志ら乃師匠の指導者としてのすごさに感銘している様子でした。そして客席も畠中さんがどんな落語をするのか、期待が徐々に高まってゆきます……。

そして「あんたがたどこさ」の出囃子で登場した畠中さんは、かなり緊張している様子。しかしながら、深々とお辞儀をして顔をあげると、そこにはいつもの笑顔が。“小児は白き糸の如しといいまして……”という「真田小僧」ではおなじみのマクラから口演がはじまります。これは、子どもは白い糸のようだから染め方(環境)によっていかようにも変わってしまうことを表現した言葉ですが、ここで畠中さんは昔の自分を引き合いに出し、「俺はどうだったかなあ……母の日に実家に帰ったら、母親に『お前はホントに人の言うことを聞かないダメな子だったよ』ってボコボコに言われたんだけど」と語り笑いを誘うと、後はもう畠中さんのペースに。

「真田小僧」は、小遣いをねだるも“おとっつぁん”に冷たくあしらわれた息子(金坊)が、あの手この手でおとっつぁんから小遣いをかすめ取っていく様子を描いた古典落語で、畠中さんは気っぷと威勢はいいけどどこか抜けている親父と、利口だけどこましゃくれてる息子を熱演。

「おとっつぁんが居ないとき、サングラスをしてステッキを持った男がおっかさんを訪ねてきたよ。続き……聞きたい?」――思わせぶりな話をする金坊と、それに振り回されるおとっつぁんのやりとりに、客席の視線はくぎ付け。快演であり怪演でもあった口演が終わり、畠中さんが深々とお辞儀をすると、会場は割れんばかりの大きな拍手に包まれました。

無事に口演をやり遂げた畠中さん。感想をたずねられると「吐きそうなくらい緊張しましたが、皆さんの反応の良さに助けていただきました。稽古の時は、誰も笑わないし師匠は難しい顔をしているし(苦笑)。もう、ホントお腹痛かった(笑)!」とコメント。そんな熱演に吉田さんは「おとっつぁんが次々と課金していく様が最高! こんなにウケている真田小僧は見たことがない」と絶賛。タツオさんも「おとっつぁんをどう演じるかで印象が変わる噺だけど、(畠中さんのは)おとっつぁんの手玉にとられ具合が最高だった」と賞賛を送ります。

稽古をつけた立川志ら乃師匠は「小さい頃から芸事に触れてきたからか、悩みが芸歴2、3年の考えじゃない、もっと上の芸歴の人が悩むようなことで考え込む。体得できてないのに何かをしようと悩んでしまう症状があった。悩むから何かをしようとして、よけい崩れていってしまう」と稽古を振り返り。そしてその対処法として、大声で何度も練習することや、リズムを体得させる掛け合い稽古を行うなど、徹底的に体を動かし体感で覚えるよう指導したそうです。

「一所懸命やっても噺が客席に届かない座布団から出ない芸もあれば、ぼそぼそ話してもぐいぐい出ていく芸もある。(畠中さんは)わーっとやっているのに座布団から出られない芸だったが、今回の口演はバランスがよくて客を引き寄せる芸だった。落ち着いていても、トーンが落ちているわけではない。嗅覚があると感じました」と弟子の芸を賞賛。そんな師匠の言葉に畠中さんは「師匠からいただいたダメ出しは、芝居で言われたことと同じだったんです。言われて一番しっくりきたのは、“まず200回でも300回でもデカい声をだしてやれ”ってことでした。考え込んで悩むより前に、まず積み重ねの努力をすること。これってすべての芸事にいえることですよね」と語っていました。

吉田さんからの「またやってみたい?」と質問に、「落語を続けていった先に何か見えるものがあって、それが芝居につながると思うと、なんかこう……心が沸き立ちますね。もっと厳しいところでもやっていけたら……」と畠中さんは回答。次の成長のきっかけとなった落語との出会いに、感慨深げな様子でした。

続いては瀧川鯉八さんの口演へ。「声優落語天狗連」には第十三回に続き二度目の登場となる瀧川鯉八さんは、古典落語ではなく創作(新作)落語だけで勝負している二つ目の落語家さんです。タツオさんの「これから登場する人は、正にニュータイプ、アムロ・レイみたいな存在。客席にいらっしゃる皆さんの世代に評価してもらいたい落語家です」という紹介で登場した鯉八さんは、いつもの「ちゃお」とお茶目に挨拶。

そして、三社祭へ向かう浴衣姿のカップルの会話や、キャビンアテンダントの知り合いがストーカーにあって困っているといった、本当かネタなのかわからないギリギリのマクラで客席をぐいぐいと引き寄せていきます。この引力の強さが“鯉八ワールド”と呼ばれるゆえんなのか、客席は早くも鯉八さんの一挙手一投足にくぎ付け。

次に、この日の演目「おはぎちゃん」がスタート。みんなのアイドル(?)“おはぎちゃん”と、彼女を呼ぶ人々――舞台も時代も、人物すら全く説明されずに「おはーぎちゃーん」「はーい」と、コール&レスポンスが続く不条理な噺ですが、目を、耳を凝らすことで、おはぎちゃんと彼女を呼ぶ人々の関係がうっすらと見えてきます。そして笑いに紛れるようにこっそりと、しかし周到に組み立てられてきた物語が全貌を現すと、客席は驚きと戸惑い、そして笑いに包まれました。

圧巻の口演に吉田さんは「最後まで予想がつかなくてドキドキしていた。この感情は初めて『シン・ゴジラ』を観たときのよう」と興奮ぎみに語り、タツオさんは「これは現代の寓話で罪無く笑えるけど、もしかしたら……と深読みしてしまう噺」と絶賛。鯉八さんも、「落語家を12年やってて前回が一番ウケました。でも今日、一番ウケたのを更新しました! 皆さまのおかげで愉しい落語ができました、ありがとうございます」と、とても嬉しそうな様子。そしてタツオさんの提案で、鯉八さんと客席とで「おはぎちゃん」「はーい」のコール&レスポンスが行われ会場内は大いに盛り上がり、さらに舞台に加わった畠中さんが「おはーぎちゃーーん!!」とコールする一幕も。

終始、普通の寄席では観られない景色が展開した今回の声優落語天狗連。最後に次回第十七回は、2018年7月1日(日)に場所は変わらず東洋館で開催され、「声優落語チャレンジ」は、森田成一さんが挑戦します。

小川陽平

■声優落語天狗連 第十六回

日程:2018年5月20日(日)

会場:浅草東洋館

MC:サンキュータツオ、吉田尚記(ニッポン放送アナウンサー)

出演:瀧川鯉八、畠中祐/立川志ら乃(稽古番)

■次回公演情報

声優落語天狗連 第十七回

日程:2018年7月1日(日)

会場:浅草東洋館

MC:サンキュータツオ、吉田尚記(ニッポン放送アナウンサー)

出演:森田成一/立川志ら乃(稽古番) 他

リンク:声優落語天狗連 公式Twitter

    「声優落語天狗連」公式ページ