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【第13回「声優アワード」受賞者インタビュー】外国映画・ドラマ賞 甲斐田裕子さん

2019年04月10日 12:00配信
【第13回「声優アワード」受賞者インタビュー】外国映画・ドラマ賞 甲斐田裕子さん

第13回「声優アワード」で外国映画・ドラマ賞を受賞した甲斐田裕子さん

2019年3月9日、2018年度に最も活躍した声優を称える第13回「声優アワード」の受賞者が発表されました。本稿では、外国映画・ドラマ賞を受賞した甲斐田裕子さんへのオフィシャルインタビューをお届けします。

――2018年は甲斐田さんにとって、どんな1年でしたか?

甲斐田 約20年間この仕事をしてきて、昨年がいちばん忙しかったです。普段は仕事を黙々とひとつひとつこなしているんですが、昨年は何度か事務所のデスクに「休みが欲しいです!」と訴えた記憶があります。特に私の場合は、台本をチェックするのに時間がかかるので、そのための時間が欲しいというのもあって。

――チェックに時間がかかるというのは、どのような理由で?

甲斐田 単純にしゃべっている量が多いとか、「トゥームレイダー」みたいにアクションが多い作品だと、そのシーンの動きを細かくコマ送りしながら確認しないと気が済まないんです。台本にも細かく書き込むんですが、最終的に録るときは台本を見ていられないので、だいたいそのシーンの絵を覚えていないとできない。そこを器用に、反射神経だけでやれちゃう役者さんも数多くいるんですけど、私はどうやらそっちの部類ではないので、無駄に時間がかかってしまうというわけです。

――では、昨年で最も印象に残っているお仕事というと……?

甲斐田 一番は「トゥームレイダー」です。過去にやった作品の中で、チェックが大変で途方に暮れた作品を数えたら3本の指に入ります(笑)。ちょうどこの台本をもらってチェックをしなきゃいけないという時期に、デスクに「私はいつチェックをすればいいんですか?」と言ってしまいました。作品自体は原作のゲームを非常にリスペクトしていて、ゲームでやったシーンがそのまま見事に映像化されて、客として見るには素晴らしいと思いましたが、「これ全部、アクションやるんだ……」と愕然としました。本当に記憶力と反射神経だけでやったので、チェックで死にかけ、当日は妙に変なテンションでした。

――声だけの演技といっても、実際に自分がアクションしているのと同じくらいの大変さがあるんですね。

甲斐田 「ジャスティス・リーグ」と、その前の「ワンダーウーマン」も大変だったかな。特にあの作品はセキュリティが厳しくて、収録のときでもアクションシーンになると絵が全部ぼやけちゃうんですよ。普通にしゃべっているシーンは顔を出してくれるんですけど、アクションシーンは何をやっているのかよく分からない。最終的にはプロデューサーの方が小さいパソコンできれいな絵を見せてくれて、それを記憶し、ぼやぼやの絵で吹き替えるという形で収録しました。「絵がないって、こんなにつらいんだ」と改めて思いました。

――それは20年間のキャリアの中でも初めてのケースだったんですか?

甲斐田 セキュリティが厳しい作品はいくつかあったんですけど、アクションシーンをぼやけさせるというのは私は初めてでした。もっと昔に「ウォッチメン」という映画があって、それはセキュリティがかかる走りのころで、口の部分しか映っていないんです。口だけが見えて、あとは全部真っ黒。シュールですよ。殴り合いのシーンも色っぽいシーンも、台本には「絵に合わせてアドリブで」と書いてあるのに音しか聞こえない(笑)。「もう同じ音を再現するしかないよね」という状態で最後まで収録して、録り直しもなくそのまま商品になってます。

――いろいろ吹替えを担当された中で、思い入れのある役者はいますか?

甲斐田 そうですね……。ブレイク・ライヴリー(「ゴシップガール」セリーナ・ヴァンダーウッドセン役など)はこれからも演れたらいなあ。長いシーズンいっしょにやってきた人たちは自分との一体感が出てくるので「ブレイク・ライヴリーは私」という気持ちは少しあります。ガル・ガドットやアン・ハサウェイもできたらいいなと思いますが、まだそこまでの独占欲はないかな。そこは映画とシリーズの違いかなと思います。あと、向こうの役者さんも役をやるたびに雰囲気を変えてきますから、全部が全部、私がやらなくてもいいと思ってます。いちばん大事なのは視聴者が見て違和感がないことで、そこをわざわざ「これは私の役者です」と言うのはエゴだと思いますし、そのときの役に合う人がやるべきだなと思っています。

――視聴者の方には、吹替えをどんなふうに楽しんでもらいたいですか?

甲斐田 吹替えと字幕、両方とも楽しんでいただけると一番嬉しいです。私自身も「この作品は英語で聴いてほしい」というものもあったりするんですよ。イギリス英語の響きとか音色が好きなので。けれど吹き替えも雰囲気を壊さないよう頑張っていますし、キャラクターが立つのはやっぱり吹替えのほうだなと思います。吹替業界も色々問題は山積みで、だから私たちもひとつひとつ努力しながら良い作品が増えるよう頑張っています。みんなが吹替えを見なくなってしまうと、この独特の文化がそのまま消えてなくなっちゃうかもしれないので、末永く応援していただけたらと思います。

●かいだ・ゆうこ/1月14日生まれ。神奈川県出身。賢プロダクション所属。主な出演作に「ブラックリスト」(エリザベス・キーン/メーガン・ブーン演)、「TIGER & BUNNY」(アニエス・ジュベール)など

撮影=田上富實子 取材・文=仲上佳克

第13回「声優アワード」受賞者、受賞作品(敬称略)

●主演男優賞:内田雄馬

●主演女優賞:三瓶由布子

●助演男優賞:古谷徹、三宅健太

●助演女優賞:芹澤優、東山奈央

●新人男優賞:天﨑滉平、石井マーク、落合福嗣、仲村宗悟

●新人女優賞:石見舞菜香、楠木ともり、林鼓子、本泉莉奈、本渡楓

●歌唱賞:ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-

●パーソナリティ賞:諏訪部順一

●功労賞:緒方賢一、京田尚子

●シナジー賞:ポプテピピック

●富山敬賞:山口勝平

●高橋和枝賞:かないみか

●キッズファミリー賞:TARAKO

●特別賞:ちびまる子ちゃん

●外国映画・ドラマ賞:森川智之、甲斐田裕子

●ゲーム賞:東山奈央

●インフルエンサー賞:南條愛乃

●MVS(Most Valuable Seiyu):神谷浩史

※今回は、特別功労賞に代えて、本年度ご逝去された声優を顕彰しました。

リンク:「声優アワード」公式サイト