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【第13回「声優アワード」受賞者インタビュー】外国映画・ドラマ賞 森川智之さん

2019年3月9日、2018年度に最も活躍した声優を称える第13回「声優アワード」の受賞者が発表されました。本稿では、外国映画・ドラマ賞を受賞した森川智之さんへのオフィシャルインタビューをお届けします。

――新設された海外ドラマ・映画賞第1号としての受賞おめでとうございます。

森川 ありがとうございます。第1号ということで、吹き替え業界、制作会社、スタッフさん、現場のみなさんを代表して、吹き替え文化をしっかり継承していこうと思っています。

――吹き替えというものを森川さんご自身はどう捉えていらっしゃいますか?

森川 歴史的にいえば、戦後、日本が海外からの文化を取り入れていく中で生まれたものですよね。海外文化やスタイルを伝える役割も担っていたわけです。僕も少年時代には「刑事スタスキー&ハッチ」や「白バイ野郎ジョン&パンチ」などゴールデンタイムに1時間枠でやっていた海外ドラマを見て憧れていました。ある時にふと、なんで外国人の役者さんなのに日本語がうまく聞こるんだろうと思ったことをきっかけに、声優さんの存在を認識するようになりました。でも名前が出るのはエンディングだけ。声優の仕事は表に出ないけど、海外文化を日本中に伝える。最先端でおしゃれな仕事だなと、すごく興味を持ったんです。

――その後声優デビューされ、すぐに活躍されるようになりました。

森川 仕事をやっていくうちに僕らは選ばれる立場ということが分かってくるんですよね。アニメの仕事もやらせていただくんですけど、やっぱり憧れは吹き替え声優でした。僕は早いうちに吹き替えのメインをやらせてもらえるようになったので、そういう意味では巡り合わせがいいんだと思います。

――吹き替えのお仕事をしていく中で、大きなものというとやっぱり「アイズ ワイド シャット」でしょうか。

森川 そうですね。ちょうどその頃、行き詰まっていたんです。80歳でも現役でがんばっていらっしゃるような先輩方がいる一方で、自分に一生やっていけるような確たるものがあるのか。このままでは絶対にダメになるともがいていた時期にオーディションがありました。そこで、これまでのプライドを全部捨てて言われたまま演じてみようと臨みました。その現場で、声優という仕事に対する意識が丸っきり変わった。それまで「声を被せる」という気持ちがあったんだけど、そうじゃなくて、シンクロする仕事なんだと。自分は担当する役者と同じように思考のプロセスを辿って芝居をする。それがこの映画に対する姿勢なんじゃないか。助監督だったレオン(レオン・ヴィタリさん)の「森川はトムと同じようにゼロから段階を踏んで作り上げて、同じ芝居をしてくれ」という言葉。全てが変わったのはそこに合点がいってからです。

――具体的にどんなプロセスを踏んでアフレコへ臨むのでしょうか。

森川 言葉にするのは難しいけど、完成した映画を見て、自分が感じたものを持った上で、担当する役者はどういう風に作っているのかを、作品の資料や役者の著書なんかを調べていきます。そうしていくと自分の中にも役者遍歴ができあがっていくんですよ。例えばトム・クルーズの役者人生も一緒に体現できていく。それだけでなくて、キャラクターやシリーズだったらその積み重ねも意識していくこと。役者も年を取るわけですから、一緒にいい形で成長していきたいと思っています。

――2018年はアニメーション作品「中間管理録トネガワ」、「深夜!天才バカボン」、「BANANA FISH」など多数に出演されました。

森川 作品の色の振り幅がすごいですよね(笑)。いや、僕は声優として毎年チャレンジしていきたいんです。みんなが驚くようなことをやりたい。だいぶ前ですが「しろくまカフェ」の時、スタッフの人に「森川さん、なんでもやる? お母さん役とかやる?」と聞かれて、「お母さんならできるよ」と答えたらそのままキャスティングされたことがあって(笑)。だから「バカボン」や「トネガワ」もやれるというのは声優冥利につきますよね。

――「トネガワ」は特に森川さんのイメージからかなり遠いところまで行った感じがありました。

森川 20歳そこそこの新人の頃に、兼ね役でおじさんの役をやらせてもらっていた時期があったんです。2世代上の大先輩たちの渋い演技を横目で見ながら試行錯誤していた、その経験が活かされたかな。それにトネガワは指名だったんですよ。長年一緒にやってきたプロデューサーさんが第1希望で名前を出してくださった。そう考えると、苦労や大失敗も続けていれば活かされる時が絶対にくるんだと思うんです。続けていくことは大切ですね。

――そうして続けてきた中で、今回の声優アワード受賞となったわけですね。

森川 コツコツ吹き替えをやってきた中でのことなので、うれしいですね。先輩方や業界関係者のみなさんのおかげです。字幕もありますが、日々進化する映像は、吹き替えで見ることでより細部まで楽しめるというメリットもあります。それに僕がすごいなあと思う百戦錬磨の吹き替え声優がたくさんいるんですよ! そういう方々の演技も楽しんでもらいたいです。

●もりかわ・としゆき/1月26日生まれ。神奈川県出身。アクセルワン所属。主な外画の持ち役に、トム・クルーズ、ユアン・マクレガーなど。アニメの出演作に「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない」(吉良吉影)など

撮影=田上富實子 取材・文=細川洋平

■第13回「声優アワード」受賞者、受賞作品(敬称略)
●主演男優賞:内田雄馬
●主演女優賞:三瓶由布子
●助演男優賞:古谷徹、三宅健太
●助演女優賞:芹澤優、東山奈央
●新人男優賞:天﨑滉平、石井マーク、落合福嗣、仲村宗悟
●新人女優賞:石見舞菜香、楠木ともり、林鼓子、本泉莉奈、本渡楓
●歌唱賞:ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-
●パーソナリティ賞:諏訪部順一
●功労賞:緒方賢一、京田尚子
●シナジー賞:ポプテピピック
●富山敬賞:山口勝平
●高橋和枝賞:かないみか
●キッズファミリー賞:TARAKO
●特別賞:ちびまる子ちゃん
●外国映画・ドラマ賞:森川智之、甲斐田裕子
●ゲーム賞:東山奈央
●インフルエンサー賞:南條愛乃
●MVS(Most Valuable Seiyu):神谷浩史
※今回は、特別功労賞に代えて、本年度ご逝去された声優を顕彰しました。


リンク:「声優アワード」公式サイト
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