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2019年3月9日、2018年度に最も活躍した声優を称える第13回「声優アワード」の受賞者が発表されました。本稿では、助演女優賞とゲーム賞の2部門で受賞した東山奈央さんへのオフィシャルインタビューをお届けします。
――東山さんもデビューしてから長くなっているんですよね。
東山 今、10年目に入っている年になるんですけど、あっという間だったというか、そんなにやっている感じもしないというか……。気持ちがいつまでもフレッシュなままなので、周りの10年選手の人たちと比べても、とりわけ自分はフレッシュだなと思います(笑)。私はいまだに自分が通っていた養成所の広告とか、当時の資料とかを目にすると胸がザワザワするんですよね。夢に向かって何をどうしたらいいのかわからなくて迷っていたり、事務所に入った後もプロとしてのはっきりとした指針が見えなかったりした、あのころの気持ちに戻るような感じがして。「行ってきます!」と家を出て向かう先が学校じゃなくてスタジオだっていう、そういう生活を続けられていることがすごいなって、ふと我に返ると思ったりするんです。最初は声優1本でやっていけるとは思っていなかったんですよ。大学に入るのと同時に業界に入って、就活の時期になってもまだ軌道に乗っていなかったら普通に就活するだろうと思っていたんですけど、ちょうどそのころに「きんいろモザイク」とか「はたらく魔王さま!」とか……「俺ガイル」(「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」)もそうですね。世の中に知っていただけるきっかけになった作品がいっぱいあって、そのまま就活せずに過ごすことになりました。それがいまだに続けていられるのはありがたいなと思います。
――2018年は「ゆるキャン△」志摩リン役、「リズと青い鳥」傘木希美役、「青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない」古賀朋絵役などが話題になりました。
東山 「ゆるキャン△」が皆さんに受け入れてもらえたというのが、最初は意外だったんですよね。ひっそり楽しむ、隠れた名作系かなと思っていたのが、まさに作品として火がついたという状況になったじゃないですか。特に私が演じたリンはソロキャンパーで、マイク前にひとりで立っていることが多かったので、アフレコしながら「これはどういう完成形になるんだろう?」と最初はイメージも定まっていなかったんですけど、出来上がってみたら私もすごくおもしろい作品だなと思いました。見ている側は癒されるんですけど、つくっている側は全然ゆるくない、完成度の高い作品でした。「リズと青い鳥」は本当に出会えてよかったなと思えた作品です。ことばで語るのが非常に難しい作品で「観てください」としか言えない……。収録自体はスムーズだったんですけど、映像から感じたものが膨大すぎて、20回近く舞台挨拶をやらせてもらった中でも、まったく話題に詰まることがなかった。どれだけ語っても語り尽くせないし、何ならもう語らないで自分だけのものにしたい(笑)。それくらい特別感のある作品でしたね。「青ブタ」もまた、心が動かされまくった1クールでした。朋絵は皆さんの感想を見ていると賛否が分かれていたようなんですけど、私はどう見ても彼女のことはいい子にしか見えなかった。主人公の咲太とお尻を蹴飛ばし合った登場シーンとかも衝撃的だったかもしれませんが、まっすぐでいい子だからこその行動なんですよね、彼女なりの筋の通し方というか。こうして見ると、2018年は"青"がテーマの年だったかもしれないですね。りんちゃんの髪も青だし、「リズ」と「青ブタ」はタイトルに青が入っている。ゲームだと「グランブルーファンタジー」とか。昔は私の声って、ピンク色だって言われていたんですけどね。
――「グランブルーファンタジー」というタイトルが挙がりましたが、今年から新設されたゲーム賞でも受賞となりました。
東山 恐縮です。ゲームのお仕事全体のお話をすると、みんなで掛け合いをするアニメと違ってゲームはひとりで収録することが多くて、ずっとそのキャラクターと向き合って、何時間もブースの中でひとりだけの世界になるんです。体力もガッツリもっていかれますが、私は何でもやりたがりなタイプなので、アフレコで自分のセリフが少なかったりすると、ちょっとガッカリしちゃうんですよ(笑)。でも、ゲームとか歌のレコーディングとかは常に自分のターンなので、楽しいですね。いや、もちろん人のお芝居を聴くのも楽しいんですよ! 楽しいんだけど、やっぱり役者ならば自分がやるのがいちばん楽しくなきゃウソじゃないですか。だから、ゲームの収録は大変だけど楽しいです。
――ゲームはアニメ以上に生活に密着して、長く続くコンテンツでもありますよね。
東山 「グラブル」も初めての収録のときから「この作品はきっと東山さんの代表作になる作品です」とスタッフさんから言われてワクワクしましたし、実際に代表作になったと思います。声優としてもそうだし、自分も騎空士(プレイヤー)なので、いろいろな意味で私の生活に密着している作品でもあるんですよね。でも、始まりがあるということは、いつか「グラブル」にも物語が終わるときが来るんだろうなって。それがもう、考えたくないくらい寂しくて、だからこそ大切にしていかなければいけない作品だと思っています。
●とうやま・なお/3月11日生まれ。東京都出身。インテンション所属。主な出演作に「ゆるキャン△」(志摩リン)、「マクロスΔ」(レイナ・プラウラー)、「グランブルーファンタジー」(ルリア)など
撮影=田上富實子 取材・文=仲上佳克