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「進撃の巨人」を手がけた荒木哲郎監督とWIT STUDIOの強力タッグが、世に送り出したオリジナルアニメーション「甲鉄城のカバネリ」。2016年4月から6月にテレビシリーズが放送されてから約3年、その続編となる完全新作中編アニメーション「甲鉄城のカバネリ 海門決戦」が全国の劇場にて絶賛上映中です。そこで、生駒役の畠中祐さんと無名役の千本木彩花さんにお話をうかがいました。彼らの旅のその後を描いた今作の見どころを語っていただきます。
――テレビシリーズに引き続き、本作でも無名がとても可愛らしく描かれています。千本木さんは無名の可愛らしさを表現する上で意識されたことはありますか?
千本木 そこはあまり意識せずにやらせていただいています。多分、私の声を聞いただけではあまり可愛くはないと思うんです(笑)。無名の可愛らしさは絵の美しさや綺麗な衣装などを総合してのものだと思うので。性格的にも無名は結構ツンツンしていますし、子供っぽくてわがままで融通が利かないところもあります。それがあの絵がつくことによってすごく可愛くなっているんだと思います。
――では、今回の収録で心がけたのはどんなことでしたか?
千本木 本作の無名は生駒や鰍に対して、本当に自分が心を許している相手として接しているなと感じました。そこで、生駒や鰍に対しては素直でちょっと甘えん坊な女の子という感じで演じてみようと思いました。
――畠中さんは無名の可愛さについてどう感じていますか?
畠中 テレビシリーズの無名はもっと幼かったと思いますが、この作品で、より女の子になったなと感じました。今までは仲間や相棒、それ以上の表現をしたとしても、せいぜい兄妹くらいの間柄だと思っていたのに、急に女の子として意識するようになって……。
千本木 急に? 本当に生駒は鈍感ですよね。もどかしいです(笑)。
畠中 今回は無名の心の揺れ動きが繊細に表現されていたので衝撃的でしたし、ドキッとしました。
千本木 多分それがもともとの彼女なんだと思います。テレビシリーズのときは兄様の影響が大きすぎて普通の状態ではなかったので。やっと自分が「こうしたい」とか、「こう見られたい」と思うことを素直に表現できるようになったんだと思います。そこはすごく成長したなと感じました。
――畠中さんは今回の収録にはどんなお気持ちで臨まれたのでしょうか?
畠中 楽しみだという気持ちもあった一方で、あのときの熱量をもう一回持ってくるにはどうすればいいのかという迷いもありました。「テレビシリーズのときの感覚をなぞらなくては」というプレッシャーがあったんです。そんな中、現場のディレクションで「なぞらなくていいから」と言われました。「成長した生駒と無名がそこにいるから、過去の生駒を頑張って演じようとしなくていい」と。それで肩の力が抜けました。気持ちだけはあのときのままで、それでも確実にお互いどこか違うところもあって、その感覚を楽しむことができました。僕自身もまたひとつ成長できたのかなと感じられました。
千本木 私も「あのときから無名も成長しているので、そこは全然気にしなくて大丈夫だ」と監督からおっしゃっていただいて、すごく安心しました。その上で、今回の無名はより感情豊かになっているので、彼女の心の揺れや女の子らしい部分を大事にしようと思いました。
――収録現場の雰囲気はいかがでしたか?
千本木 今回は甲鉄城のメンバーだけでの収録だったんですが、すごく雰囲気も良くて楽しかったです。テストをやった段階で、みなさんが同じ方向を向いているなと感じられました。テレビシリーズのときの私にはそこまで感じられる余裕がなかったので、自分も少しは成長しているのかなと思いました。
畠中 今回の収録で僕が一番印象に残っているのは、休憩のときに(巣刈役の)逢坂(良太)さんや(来栖役の)増田(俊樹)さんと「どんなシーンを演じているときに昂ぶる?」という話をしたことです。僕は痛めつけられているところから這い上がっていくのがすごく好きで、「痛めつけられれば痛めつけられるほど、たまらないんですよ」という話をしたんですね。そうしたら、ちょうど休憩のあとが、生駒が足にめり込んだ銃弾をえぐり出して無名を助けに行くというシーンの収録だったんです。その話をした直後にテストで「うわー」と叫びながら、そのシーンをやったので、すごく真面目に演じているのに、後ろで増田さんと逢坂さんの視線を感じて、二人が僕のことを見て「今、気持ちよく演じてるんだろうな」と笑いを堪えているのがわかりました。「あんな話をするべきじゃなかった」と思いましたが、すでに遅かったですね(笑)。
千本木 他愛のないおしゃべりをして楽しむときもあれば、ピンと張り詰めているときは自然とあまり話さなかったり、メリハリのある現場だったなという感じがします。でも、みなさん向いている方向は同じで、その一体感はすごく感じましたね。
畠中 そういえば(鰍役の)沖(佳苗)さんが、よさこいの鳴子を持ってきてくれたんですよ。それをみんなで少し試してみたのも楽しかったです(笑)。
千本木 よさこいのシーンの収録も面白かったですね。みんなで「ソレソレソレソレ」というところで増田さんだけすごく武士っぽい声を出していたり(笑)。
畠中 最後のあのシーンを収録の一番最後に録れたのもよかったですね。すべての戦いが終わったあとに、「あとはよさこいだ」って(笑)。
千本木 そのテンションでみんなで掛け声をやったので、すごく楽しかったです。
――完成した映像をご覧になって改めて印象に残ったことや感じたことはありますか?
千本木 無名と生駒が言い合いになるシーンを客観的に見たとき、生駒がこんなにも卑屈になっていたんだと驚きました。収録しているときは「私の方を見てよ」という無名の気持ちでいっぱいだったので、生駒のことがちゃんと見られていなかったんですね。
畠中 思い入れのあるシーンばかりで、特にここが印象的だと言えないんですが、全編にわたって音響もすごくこだわっているなと感じました。作画のクオリティーももちろん驚異的だし、お話も演出もすべての面においてこだわり抜かれた作品だと改めて思いました。
――「カバネリ」の今後の展開に期待することは?
千本木 もう一度何かの機会があって映像化されたら嬉しいです。今回の物語を通じて無名たちカバネリも生きていける希望を見つけることができました。その先の未来で、お米を食べる無名をぜひ見たいです。
畠中:もしその機会があれば、僕たちもまた成長した姿を見せられたらと思っています。ただ、まずはこの「海門決戦」をできるだけ多くの方に楽しんでいただきたいです。ぜひよろしくお願いします。
【取材・文:橋本学】