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眉村ちあき×監督・四宮義俊が語りつくす「冒険隊 ~森の勇者~」MV誕生秘話!【後編】

2020年12月09日 21:00配信

眉村ちあきさんと、四宮義俊さん
眉村ちあきさんと、四宮義俊さん

四宮監督だからできたMVのつくり方

――MV全体の構成はどのようにお考えになったのでしょう?

四宮 単に暗いものではなくて、この状況だからこそ、その先を見通せるような内容、次につながる世界観を見せないとダメだろうなと思いました。ただいたずらにコロナを題材に使っているだけに見えても、意味がない。

――難しいバランスですよね。

四宮 ただ、今回の物語に限ったことではなく、僕は何かの表面張力で覆われた世界を破るのが、基本的な物語の構造だと思うんです。自分の殻を破るのでもいいし、社会との軋轢を越えていくのでもいい。自分の内側にあるものと、外側にあるもの、いうなれば〈他者〉との距離感について考えること。それは実は、学問でも、アートでも、音楽でも、「表現」と呼ばれているものに共通してある構造だと僕は考えていて、今回も目指したのはそこですね。内輪では片付かない、現実の世界に繋がっているモノを作ること。アニメーションというものが絵空事だからこそ、そうしたことを考えて作ることが意味を持つというか。絵空事なのに現実に繋がってたんだと、触れた人に思ってもらえる瞬間が、物語の中のブレイクスルーとしてあるかどうかが、作品の面白さなのかなと。そこに着地できることが、作っている僕にとっても快感なんです。

眉村 おもしろいです! MVを見たファンの人が、「もしかしたら眉村さん、小学生のとき、転校したことあるのかな」って感想をくれていたんですよね。今の話、それだ! って思いました。

四宮 そう! MVを見た人が、「これって眉村さんのことなの?」と思わず感じる映像になっていたら、うれしいですよね。そうなったとき、誰かが頭の中で考えていただけのことが、まるで現実のことだったように、見た人の心にずっと残り続けてくれるのかな、と。

眉村 ワクワクしますね!

――イメージが飛躍するようなところもおもしろいですよね。瞳の中に飛び込むところとか。

眉村 あそこ、大好きです。

四宮 あの眼のところは最初、カットを分けてあって、アニメとしてもっと簡単な処理にしていたんです。でもそれじゃ、予定調和っぽいカットになってしまうと思って、心象風景の中に入って行くイメージを表現するために、キャラを振り向かせて瞳の中に飛び込むような流れにしました。次のコンクリートの飛び石のところまでは、原画を描く際に即興的に映像をつないでいます。

眉村 あ、やっぱりそうなんですね。前のシーンを描いてから、次を決めているんだろうなと思ってました。

四宮 引っ越しの熊みたいなキャラも絵コンテでは入れてないし、そうやって隙間を作っておいたところから、どんどん内容を膨らませていきました。だから今回、通常のアニメの作り方だと、レイアウトチェックがあって、原画チェックがあって……と、そのシーンを完成させるまでに2回くらい絵のチェックの工程を踏むんですけど、作画の担当者はぼくを含めて2人しかいないのでお互いに1回しかチェックしないと決めました。できるだけレイアウトを描かない体制で作りました。最終的に背景は僕が描くので、レイアウトを描く時間がもったいないなと。普通のアニメよりも相当、作業を簡略化しています。

――背景は全部おひとりで描かれているんですか?

四宮 他の方にも頼んでいますが、外注したのは全部で10枚ないぐらい。ほかは僕が描いています。作画は僕が46カット、南方研究所が41カットくらい。前半の方を割と南方研究所が描いてくれています。ランドセルの中身をバラバラっとやるあたりとか。

――Twitter で公開されていたメイキングを見て驚いたんですが、カットによっては、ほぼ全作業を四宮さんがやっておられますよね。

四宮 通常であれば色を塗るのはその専門の会社に出すし、色指定だって専門の方がいますが、この作品では、自分で作画して、背景を描いて、色を塗って、はい、完成……みたいなカットが結構あります。そういうところは、絵コンテもラフにしか描いていません。もちろん、長いシーンや、動画の中割りが多いカットは外注しています。でも外注すると、作業が終わるまでに1、2週間くらいかかってしまう。だったら短いカットは、描いたその場で塗っちゃって、撮影指示も美術の上にそのまま描いて、撮影担当の方に渡すのが速いなと思っていました。タイムシート(撮影の指示書)も書いていないカットがあります。CLIP STUDIOを使って作業すると、ある程度まで自動化してくれるので、その機能を使っています。あと、一度撮影してもらったものを、僕の方に戻してもらって、さらに撮影処理を足すこともありました。そうやってできた素材を、編集して完成……という流れなので、実はかなり個人制作っぽいところがあるんです。

――フルデジタル制作で、完全ペーパーレスですか?

四宮 そうですね。歌詞とクレヨンの絵のところくらいですかね。あれは小学生の子が描いてくれた素材なので、アナログの素材を合成しています。

眉村 あの文字、かわいいですよね。一生懸命感がすごい。

――とても刺激的なコラボレーションだったことが伝わってきます。

四宮 眉村さんの世界に触れられたことはもちろん、今お話したようなワークフローの部分や、技術的な方法論の部分でもいろいろと新しいことができた作品でした。影なし作画を試してみたりもしていたんですよね。なしでも十分行けるなと、手応えがありました。それによって、演技にもっと集中できるようになるんですよね。実は次につくる作品の要素も、少し入れていたりして……ここからさらに、いい形で先に進んで行けたらいいなと思っています。

眉村 私もここから、次のステップに行く感覚はすごくあるんです。この曲だけじゃなく、次に出すアルバムの曲全体が、ネクストステップ感がすごい。一段上がれた気もするし、ライブに対しての意識も変わってきていて……これまでがそうじゃなかったわけじゃないんですけど、もっと丁寧になりました。

――いつか、おふたりのコラボの第2弾があるといいですね。

眉村 そうですね。でも、そのためには、まずはこれを超える曲を作らないと(笑)。

眉村ちあきさんと、四宮義俊さん
眉村ちあきさんと、四宮義俊さん

眉村ちあきさんと、四宮義俊さん
眉村ちあきさんと、四宮義俊さん

【プロフィール】

●まゆむら・ちあき/弾き語りトラックメイカーアイドル、株式会社会社じゃないもん代表。年齢は最近非公表になった。'18年TV番組「ゴッドタン」に出演後、さまざまなメディアから注目されるようになる。'19年5月7日、メジャー1stアルバム「めじゃめじゃもんじゃ」をリリース(トイズファクトリー)、その後も数々の楽曲を発表し、'20年12月9日3rdアルバムとなる「日本元気女歌手」を発売。12月14日には自身初となる日本武道館公演が控えている。

●しのみや・よしとし/'80年、神奈川県出身。日本画家、アニメーション作家。日本画家として絵画を軸に、立体、映像など多彩な創作活動を行う。CMや広告、企業商品や本の装画など各メディアへと広がる。アニメーションでの代表作に『言の葉の庭』(ポスターイラスト・美術背景)、『君の名は。』(回想シーン演出)、渋谷スクランブル交差点での四面連動ビジョン放映で話題になった『トキノ交差』(監督・原画・美術)など。また、監督を務めた『ポカリスエット・アニメCM』(インドネシア)では1500万PVでYouTubeインドネシア当月第1位を獲得。現地アニメイベントへのゲスト招聘など、近年ではアジアでの評価も高まる。

眉村ちあきさんと、四宮義俊さん
眉村ちあきさんと、四宮義俊さん

【文・構成:前田 久、写真:大川晋児】

【「冒険隊~森の勇者~」MV】

【トキノ交差 Tokino KOUSA [YouTube ver.]】

リンク:「眉村ちあき」公式サイト

    「四宮義俊」公式サイト