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結成! ザ・リーサルウェポンズ~「ザ・リーサルウェポンズ」ロングインタビュー【後編】

ザ・リーサルウェポンズ「E.P.」は絶賛発売中
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2019年初頭、彗星のごとく現れたザ・リーサルウェポンズ。「ホッピーでハッピー」のPV撮影が行われた青角 都立家政店にて敢行されたロングインタビューの後編では、いよいよコンビ結成の瞬間が語られる。いい感じにお酒が回ってきて、あまりしゃべらなくなってしまったサイボーグジョーのチャーミングな姿を想像しながら読み進めてほしい。

ザ・リーサルウェポンズ「きみはマザーファッカー」MV
ザ・リーサルウェポンズ「きみはマザーファッカー」MV


――当初、ジョーとしてはバンドじゃなくて、自主映画という選択肢もあったんですね。

アイキッド でも当時、ジョーは日本語が全然話せなかったんですよ。今でこそクレオール語みたく英語交じりの日本語で会話してますけど、あのときは英語ができる友達を呼んで、彼に翻訳してもらいながら歌ってもらったんです。本当に大変だった……。だからジョーがおもしろいことはわかっていたけど、いっしょにやるのは難しいんじゃないかと思ってたんです。それから1年くらいは、特に2人では何もやってないですから。

――じゃあ、ただの友達というか。

アイキッド そうそう。僕も日本語しかしゃべれないけど、アメリカ文化には詳しかったから話が合ったんですよ。いちばん大きいのはスーパーボウル、アメフトですね。

ジョー センセイト出会ッテ、あめふとヘノ興味ガ甦ッタ!

アイキッド アメリカに住んでたころは、サッカーのほうに夢中だったらしいんです。

ジョー 子供ノころハ、家族ミンナデあめふとノ試合ヲ観テタケドネ。ソレニぷろれすガ、フタリトモ大好キダッタ。

アイキッド 友達と路上プロレスしてケガしたりしてるんですよ(笑)。自分も中学生のころ、プロレスごっこで給食台を壊したりしてたので、まったく同じ過去をもつ人間。それでグッと心の距離が近づいたんです。

ジョー ナルホドネー。

アイキッド こんなに話が合うのはジョーくらいなんです。たぶん、お互いに国でははみ出し者なんですよ。さっきサッカーが好きだと言ったけど、アメリカにおけるサッカー人気って、そんなに大したことないんです。彼の好きなアメリカ映画にしたって、ジム・ジャームッシュの映画だったり、そんなにアメリカンアメリカンしてないんですね。一方の僕は、生活スタイルからして日本人らしくない。スーツを着て働いてないし、趣味もアメフトとアメリカンプロレスだから。もっとも彼はスーパースター系のショーン・マイケルズが大好きで、僕はクリス・ベノワとかが好きだから、そういう細かい好みは少しずつ違うけど。

――クリス・ベノワって、どちらかというと玄人受けする選手ですよね。2人のキャラクターの違いが好みにも現れてる感じがします。

アイキッド 目立つのが好きなヤツと、その横にいるのが好きなタイプ(笑)。そういうところもフィットしてて、要は互いに性格が違うからうまくいってるんでしょうね。あとね、ジョーの話を聞いてると、すごく育ちがいいんですよ。やっぱりバンドマンって、ゲスいヤツが多いじゃないですか。で、バンド内もギスギスしていくじゃないですか。僕からして、決して育ちはよくないですからね(笑)。でも彼の実家は敬虔なクリスチャンで、日曜日はまじめに教会に行ってたような子なんです。ちゃんと倫理観とか道徳が備わっていて、まず変なことはしないし、つまらないケンカをしたりすることもないだろうと思ったんですよ。

ジョー (ニコニコと話を聞いている)

――じゃあ、良心回路は埋め込む必要がなかったんですね。

アイキッド そう、それは最初からあったんです(笑)。あとからハードウェアをくっつけただけで、ソフトウェアは元々安定してるんですよ。それに、こう見えて頭の回転は早いし、理解力がすごくある。とにかく地頭がいいんで、1年もしたら日本語もペラペラになってきたんですね。これならなんとかやっていけるだろうと思い、高田馬場のミカドっていうゲームセンターでバンド結成を持ちかけました。で、最初の2年のうちにアルバムに入れる曲を全部つくって、3年目にPVを全部撮るっていう構想を話してたんだけど、ジョーは「ストII(ストリートファイターII)」に夢中で、ほとんど話を聞いてなかった(笑)。だから最初のころは、何度も何度も解散危機に陥ったんです。

ジョー ソウイウびじねす・あーてぃすと・まいんど、私ハ全クモッテナカッタ。センセイハ本当ニ真面目ナ人!

アイキッド いざ曲ができてレコーディングしようと言ったら、「OK! デモイマ忙シイカラ来月ネ!」って言われたり、MVを撮るために打ち合わせに呼んだらなぜか坊主になってたり(笑)、そのせいで先延ばし先延ばしの連続。だから最初は、徹底的に教育……じゃなくて改造ですね。僕にとってジョーは、「ブレードランナー」におけるショーン・ヤングみたいなもんなんですよ。人一倍魅力はあるけど経験の少ない彼女のために、リドリー・スコット監督は何度も何度もリハーサルを繰り返して最高の映画を撮ったわけじゃないですか。あの感覚に近い。このキャラクターを世に出さないのはもったいなさすぎるので、とにかくMVを1本でいいからつくろうと。それが去年の1月ですね。

――ザ・リーサルウェポンズ結成の話を持ちかけてから、もう2年くらい経ってたわけですね。“ポンズ”といえば、新曲とそのMVが信じられないスピードで公開されることで話題になりましたけど、そこに至るまでは紆余曲折があったと。

アイキッド そうそう、実は準備期間が長かったんです(笑)。だって延びに延びた最初のMV撮影の時点で、13曲分のマスタリングが終わってたんですから。

――最初に撮ったMVは、去年の1月下旬に公開された「80年代アクションスター」ですか?

アイキッド そうですね。「80年代アクションスター」に関しては、ああいう映画が大好きというのもありますけど、プロフィール欄とかに「『80年代アクションスター』でYouTubeデビュー」みたいに書かれるようになれば、ゆくゆくはSEO的に「80年代」でも検索に引っかかるんじゃないかなぁという打算もありました。あと、「昇竜拳が出ない」と「なんでやねん」のMVも同じひと晩で撮りきりました。夜の10時から朝の6時までぶっ続けでヘロヘロになりましたけど。ちなみに最初に上げた「昇竜拳が出ない」のMVは、自粛という形で削除しましたけど、別にカプコンさんから怒られたわけではないんです。その後、周りの皆さんの尽力もあって、「昇龍拳が出ない」として改めてリリースすることができましたしね。

ジョー かぷこんサンハ武士、侍ネ。ないすこみゅにけーしょん!

――MVの半数以上をアイキッドさん自ら手がけていますが、合成素材の切り抜きからすごく丁寧ですよね。一見するとチープなようで、実はすごく手が込んでる。

アイキッド 知り合いの映像作家とか監督からは、“グリーンバックの魔術師”って呼ばれてます(笑)。100%の力で65点の作品をつくるっていうのが信条なんですよ。世の中には、65%の力で100点を目指そうとする人もいるけど、その逆が一番いいんじゃないかなと。まあ、自分みたいな器用貧乏タイプは、ひとつに特化した人間と組むのがベストだと思ってます。

――昨年の活動を振り返ったとき、一番のブレイクスルーとなったのはどの曲ですか?

アイキッド やっぱり星野源さんのラジオでも取り上げていただいた「きみはマザーファッカー」でしょうね。僕としては、あくまでもアルバムの1曲として、こういう毒というかスパイスがあってもいいよなくらいに考えてたものが、よりにもよってバズってしまったという感じで、本当に驚きました。

ジョー Me too.

――どうしてMVに着ぐるみの怪獣を出そうと思ったんですか?

アイキッド あの曲って、歌詞に使ってる言葉こそ超汚いんですけど、要するに弱者の歌、もっと言うとマイノリティの応援歌なんですね。だから普通の人間とは姿形が違うもの、つまりは動物の着ぐるみみたいなものを出して、彼らが落ち込んでたり人生に立ち向かおうとしているシーンを撮ろうと思ってたんですよ。そしたら、ちょうど同じ中野区内で活動している怪獣造形集団の我が家工房さんが、ポンズに興味をもってくれてると知って、すぐに連絡をとったんです。動物よりも、絶対に怪獣のほうが膨らむなと。怪獣も基本はヤラレ役、負け犬ですからね。ただ、「きみマザ」で一気に知れ渡ったので、サイボーグジョーっていうボーカルユニットのMVに、怪獣怪人が4体出てるんだと誤解されたりもしました(笑)。

――仮面バンダーも、フルフェイスのメットを被ったようなルックスですからね。

アイキッド どうしてアイキッドだけ安上がりな造形なんだとか言われたけど、アイキッドのアレは衣裳であって着ぐるみじゃない(笑)。でも「きみマザ」のMVがバズったおかげで、それこそ個人でやってるところから大手まで、いろんな事務所なりレーベルなりから声をかけていただきつつ、現在に至ります。

ザ・リーサルウェポンズ「東海道中膝栗毛」MV
ザ・リーサルウェポンズ「東海道中膝栗毛」MV


――2020年のポンズは、新作「E.P.」のリリースと併せて、1stアルバム「Back To The 80's」もCD化&全国流通と幸先のいいスタートを切った感じですが、今後の予定は?

アイキッド 「E.P. TOUR2020 ~E.P.ウソつかない~」と銘打ったツアーを予定してます。新曲に関しては、わりと書くのは早いほうなんで、なんとかペースを落とさず発表できるんじゃないかな。Bメロをつくるのが苦手なんで、サビに到達するまでが長いんですけど、サビだけは異常に早くつくれるし、いっぱいあるんですよ(笑)。まあ、気負わず固くならず、ジョーといっしょにゆるゆるとやっていきたいと思います。

ジョー ソウネ。イイ話ダナァ!(一同笑)

【取材・文:ガイガン山崎】


ザ・リーサルウェポンズ「きみはマザーファッカー」MV


ザ・リーサルウェポンズ「東海道中膝栗毛」MV




■ザ・リーサルウェポンズ「E.P.」
発売中 税別1500円


リンク:公式Twitter・@TLW80s
    @CyborgJoe2
    @aikikiyohisa

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