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あてもなく、気ままに諸国を旅する少女・イレイナ。行く先々でさまざまな文化や慣習に触れ、幾多の人と出会いを果たしますが、旅人である彼女は決して一か所に留まることはなく、再び旅の途へと戻っていきます。これはまだ若き魔女の、出会いと別れの物語――。
大好評放送中の「魔女の旅々(魔女旅) 」は、原作・白石定規さん、イラスト・あずーるさんによる同名の連作短編式ファンタジーノベルを原作としたTVアニメです。WebNewtypeではそんな本作の魅力を掘り下げるべく、スタッフやキャスト陣へのリレーインタビューをお届けしています。連載第7回は、オープニングテーマ「リテラチュア」を歌う声優アーティストの上田麗奈さんにお話をうかがいました。
――「リテラチュア」を制作されるにあたって、まずどのようなアプローチをされましたか?
上田 「『魔女の旅々』という作品のオープニングテーマ」というよりは、イレイナ自身と向き合って、彼女の心の内にある不安やそれを乗り越えて成長していく様を歌にしたい、というところからスタートしています。学校では優等生の子が、一人旅をして出会いと別れを繰り返していくなかで、本当の意味で成長していく……そんな歌がいいなと。
――上田さんはイレイナをどのような少女だと感じましたか。
上田 根の明るさと、困難を乗り越えていく強さをあわせ持つ子だと感じました。その旅路を見守りたいと思うことがあれば、そのたくましさに黙ってついていきたいと思うこともあって。見ていて気持ちのいい子ですよね。
――「リテラチュア」の作詞と作曲は、上田さんの1stアルバム「Empathy」でも多くの曲を手がけているRIRIKOさんによるものですが、上がってきたメロディと歌詞に触れてどう感じられましたか?
上田 優等生なイレイナの内にある等身大の本音のようなものが見えつつも、最後は清々しい気持ちで前に進むという感情の流れができていて、これならすぐにでもレコーディングできるという確信がありました。時間をかけたのはアレンジですね。女の子が成長していく際のシビアさを曲に込めたいという思いもあったのですが、オープニングテーマとしてはある程度キラキラしている方がそれらしい雰囲気になりますので、どこに着地すればよいか、大勢の方の意見をうかがいながら詰めていきました。
最終的には感情の流れを生かしたアレンジにしていただいて、イレイナという1人の女の子をお借りするつもりでレコーディングに臨みました。さまざまな感情を込めつつ起承転結を付けるという、まるで物語を紡ぐようなレコーディングでしたので、録り終えたあとは泥だらけになったかのようにヘトヘトでした(笑)。
――今回のようなアニソンを歌うときに、上田さんご自身の曲を歌うときと比べて特に気を付けていることはありますか?
上田 私の曲はそのとき私が感じたことや考えていることを歌にしますが、タイアップ曲は1曲のゴールとなる感情が自分の中から出てきたものではありませんので、そこにどれだけ寄り添えるかに気を使います。特に今回は、イレイナにできるかぎり寄り添った曲になっていますので、そういう意味ではキャラクターソングの要素も含まれていると思います。こうしたアプローチは、声優としてキャラクターを演じる際の役へのアプローチにも近いものがあると感じています。
――10月21日にシングルがリリースされましたが、オンエアでは聴けないフルバージョンの聴きどころを教えてください。
上田 2番の「嬉しいし不安だし 私だって必死だし 主人公になれていますか?」というフレーズが特に気に入っています。自分は今、本当にうまくやれているのだろうかと不安になる気持ちはすごくよく分かりますし、同じように感じていただける方も多いのではと思います。
また、1番はピッチを調整して綺麗な音に仕上げていて、それが優等生としての彼女を示していますが、2番以降はそうした調整を意図的にしないことで、より生っぽい、素顔の部分を表現しています。
――「リテラチュア」は、『このあてのない旅が自分という存在を形作っていくんだ』という曲だと感じました。今の上田さんを形作っているものはどのようなものでしょうか?
上田 周りの人たち、ですね。私に関わってくださるみなさんが、私という存在を形作ってくれています。10代のころは「自分1人でがんばらないと」と思っていたのですが、そのころと比べると大きく変わったなと思います。
自分だけではうまく盛り上げられなかった感情を、周りの方が出してくれたあるフレーズ1つで盛り上げられるようになったり、ほかの演者さんからのお芝居を受けることで、はじめて自分の中から出てくるお芝居があったり……。みなさんがいてくれたからこそ、今ここに自分がいます。
上田麗奈という名前は本名なのですが、もうこれは自分1人の名前なのではなく、チーム名だと思っています。上田麗奈という存在は、私と、私に関わってくださるみなさんを合わせた"チーム上田麗奈"が作っているんです。
――本渡さんが演じるイレイナをご覧になって、今後ライブなどで「リテラチュア」の歌い方に変化などは出そうですか?
上田 もしかしたらバリエーションが増えるかもしれないですよね。元気で明るく、すでに自己が確立されているイレイナが以前の自分を思い返しながら歌う……というアプローチもよさそうです。楓のイレイナをリスペクトして、自分なりの新しい歌い方をお見せできることもあるかもしれません。
――ライブなどで聴くのが楽しみです。シングルのカップリング曲「花の雨」、「たより」についても聴きどころを教えてください。
上田 どちらも同じテーマから生まれた楽曲です。当初、このシングルは2曲入りになる予定だったのですが、1つのテーマを元に書いていただいた候補曲が両方素敵でしたので、片方を選べずにどちらも入れてしまいました(笑)。
――そのテーマはどのようなものだったのでしょう。
上田 「リテラチュア」の”出会いと別れ”というテーマを汲んだもので、かつ「リテラチュア」が主役になるような曲……というのが1つ。それと、「Empathy」を作っていたときにご一緒していたマネージャーさんが、その後に寿退社されたんです。「Empathy」はその人が“チーム上田麗奈”にいてくれたからこそできたアルバムですので、今はここにいないその人に“おめでとう、ありがとう”という気持ちを込めた曲にしました。
――「Empathy」制作時の"チーム上田麗奈"へ贈る歌なんですね。
上田 はい。カップリング曲のどちらも「Empathy」があったからこそ、そして“出会いと別れ”というテーマを持つ「リテラチュア」があったからこそ生まれた曲です。このタイミングでなければ、きっと書けなかったと思います。
――「花の雨」のMV制作用に花が二輪映っている写真を募集されておられましたが、その理由が分かりました。さて、「魔女旅」はイレイナの旅路を描く物語ですが、上田さんが今行ってみたい国や場所はありますか?
上田 行ってみたい国はたくさんありますが、それよりも誰かにどこかへ連れていってもらう方が記憶に残ることが多く、心が豊かになると感じています。自分が行きたい場所は何かしら明確な理由があるものですが、誰かに連れられていくときはそれもありませんので、自分にはない価値観や、それまで知らなかった楽しさに触れられることが多いんです。それに、その人自身のこともより深く知れますしね。
――イレイナにとっての「ニケの冒険譚」のように、幼いころに読んで印象に残った本はありますか?
上田 「魔法少女レイチェル」3部作(クリフ・マクニッシュ著)ですね。イラストにパンチが効いているのですが、言葉選びが想像力をかきたてるものばかりで、読んで脳裏に浮かぶ映像はもっとパンチが効いているんです(笑)。ホラー作品を見るかのような気持ちでよく読んでいました。
――それでは、最後にメッセージをお願いします。
上田 イレイナが旅を通して人として、女性として輝いていく姿を見守って、アニメを最後まで楽しんでいただき、そのうえであらためて「リテラチュア」を聴いていただくと、2番以降がより心に響くのではと思います。この曲を「魔女旅」に浸りたくなったときのお供にしてもらえたら嬉しいです!
次回の「魔女の旅々」リレーインタビューは、エンディングテーマ「灰色のサーガ」を歌うChouChoさんにお話をうかがいます!