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初期ベストアルバム発売記念!林原めぐみインタビュー

6月17日(水)に歌手活動25周年を記念した企画“第一弾”として、メーカー13社の協力のもと幻の楽曲を集めた初期ベスト盤「タイムカプセル」(3780円)が発売される林原めぐみさん。たくさんの楽曲のなかから選ばれた今回の収録曲について、みずから解説をしてくれました。

■私の20数年の申し訳なさを天に返せました(笑)

――アニメ主題歌やオリジナルアルバムもたくさんリリースしてきた林原さんですが、声優と直結している点では、「タイムカプセル」に収録されたキャラソンのほうが得意だったりもしますか?

林原:レコーディングにかかる時間は、キャラソンだと半分と思ってもらっていいかもしれません。キャラによって、たとえば「星くずパラダイス」の結城りなならアイドル歌手で、守らなければならない顔もありますが、(「魔神英雄伝ワタル」の)ヒミコみたいなイロモノっぽいのは、3・4回歌って終わりでした。自分の曲だと「どこがいちばんいいんだろう?」と悩むけど、ヒミコならヒミコ、(「魔動王グランゾート」の)グリグリならグリグリで「正解はコレ!」と見えていて、疑問を挟む隙間もないから。

――ヒミコは林原さん初のメインキャラで、当時はキャラソン自体もそんなになかったと思いますが、キャラで歌うことに戸惑いはありませんでした?

林原:「ヒミコが歌うって、どんな状況だろう?」とすごく考えました。マイクの前でじっとしてはいないだろうな。それでも歌い切るって、どういうことなのか。「歌い終わったら肉まん100コあげるからね」と言われているのか、「聴いた人が元気になるから歌って」と頼まれて「わかったのだー!」と歌うのか……とか。でも、スタジオではノリノリでした。「騒擾楽園(パラリラパラダイス)」の最後に「やっぱおかわり!」って入っていますけど、あれはアドリブなんですよね。歌い終わって、つい出た言葉、みたいな。他も台詞はほぼアドリブじゃなかったかな。楽しい現場だったと記憶しています。

――今回の収録曲で、改めて聴くと頭のなかにあったイメージと違っていた……みたいなものはありませんでした?

林原:共通して言えるのは、歌を聴くとキャラクターやコミックスが見えたのが、自分にとって非常に価値がありました。ただ、実は私、このなかですごく後悔の残る作品があって。

――どれですか?

林原:OVAの「BAD BOYS」。曲はいいんです。でも、広島の不良モノで飛び交う台詞は広島弁。本当の広島出身や関西系の人を集めたなかで、私1人が東京人。方言のお手本のテープをもらってガチに練習はして行きましたけど、「なんで私? ネイティブ広島人がやったほうが絶対いいのに」という気持ちは否めなかった。だから、「BAD BOYS」と聞くと「申し訳ない!」という気持ちが先に立ってしまって。そんななか、たまたまこの前、別の作品ですけど「忍空」のブルーレイBOXが出るので、オーディオコメンタリーを録ったんですね。

――「タイムカプセル」にも里穂子の歌も収録されていますね。

林原:重なるものだなー、と思いました。そっちの現場で「忍空」を観直して、真殿(光昭)くんに「藍眺、良かったね」とか話して。彼はあれがテレビアニメの初メインだったらしいんです。でも、「それより前に『BAD BOYS』を一緒にやったよ」という話になって、彼は広島出身なんですけど、当時の私の広島弁を「完璧だった」と言ってくれて。「東京の人間と聞いて只者じゃないなと。『忍空』で再会して『コイツか』と思った」と誉められて、私の20数年の申し訳なさが天に返されました(笑)。そして、曲もここに入れられる巡りあわせ。さらに、その、忍空の里穂子の歌も入るという……。ああ神様、ありがとうございます……と思った。もう、お互い褒めちぎり合いましたよ(笑)。

――「忍空」の曲の「好きと言いなさい」のほうは、小悪魔っぽい感じで。

林原:藍眺さんが里穂子に全然振り向いてくれないので。いつも「バカ! ブス! 死ね!」とか言われて、今なら放送できないくらい(笑)。顔面を蹴られたりもしていましたから。そんな里穂子が「好きと言いなさい」と一生懸命歌っている。健気だな……とか、作品を1コ1コ思い出しながら浸っています。

――そういう思い入れは、テレビアニメの曲でもドラマCDの曲でも、変わらずありますか?

林原:それぞれ印象に残っています。ドラマCDでも原作は読み込むし。特に歌となると、台詞以上にキャラクターをわかっていないとできないから。「MIYUKI WORLD」の時は、山口美由紀さんの原作を事務所に買ってもらえず、本屋を探し回りました。当時はamazonとかなかったから。近所で見つからず、池袋の大きな本屋さんで見つけたなーとか、そんなことを思い出しました。でも、やっぱりテレビの作品は印象深いですね。「シンデレラなんかになりたくない」は毎週「チンプイ」のエンディングで流れていて。「Give a reason」くらいから私を知った人は、もしかしたら小さい頃にテレビで「シンデレラ~」を誰が歌っているのか知らずに聴いていて、このアルバムで記憶が呼び起こされたらおもしろいかな、とも思います。

――林原さんのファンの方は「スレイヤーズ」でドンと増えた感じですか?

林原:「らんま1/2」かな? 「らんま」がドカーンとあって、後で何かの作品に出会うと“大ブレイク”って言葉が使われるのが、困るよね。「エヴァンゲリオン」で大ブレイクとか、確かにそうかもしれないけど、“ブレイク”って何だソレ?と思う。

――また何回目かのブレイクを狙う気はないと?

林原:ない、ない。ブレイクはしないほうがいい。うまく言えないけど、“ブレイク”って言葉がつくと、土足で入ってくる人が突然増えるから。それは「エヴァ」で経験済み。人類補完計画について延々と質問されて「私は知らないんだけど……」とか。かたや「声優さんは口パクを合わせるのが大変じゃないですか?」と聞かれて「そこから?」とか。ブレイクは若い方たちに任せて、私は地味にやれることをできたら。“ブレイク”ではなく、線路は続く~よ~ ど~こま~で~も~、みたいなのがいいな。その線路は新幹線でなくていい。リニアとかは若い世代にお任せして、1日1往復のローカル線でもいい。ただ、寸断されることはなく、線路はそこにある……みたいのがいいかな、と思います。【記事:WebNewtype】

※7月10日(金)発売のニュータイプ8月号でも林原めぐみさんインタビューを掲載予定です

※shot by JUNJI OKUNISHI、text by TAKASHI SAITO

■林原めぐみ「タイムカプセル」
発売:6月17日(水)
価格:3780円
◇DISC1
COME TRUE…/アルバム「PULSE」
Follow you,Follow me/アルバム「PULSE」
Go ALONG ! GO AROUND!!/アルバム「PULSE」
夢を追いかけて/アルバム「PULSE」
星の涙ポ・ロ・ロ・ン/「宇宙英雄物語」
Dear Friends/「ぽっぷるメイルパラダイス」
Kaleido scope/「WILD HALF」
おカネがいちばん/「ルナ・ソングス2」
ALCHEMY OF LOVE~愛の錬金術~/「天地無用inLOVE」
虹色れんあい/「星くずパラダイス」
約束だよ(KWAK'S SONG)/「あひるのクワック」
ハッピー・ハッピー(ALFRED'S WALK)/「あひるのクワック」
クローバーイノセンス/「MIYUKI WORLD」
ぴょこLOVE注意報/「デジキャラットにょ」
Grow up~明日があるぴょ~/「デジキャラットにょ」
◇DISC2
夢のBalloon/「らんま1/2」
未確認Girl/「エリアル」
好きと言いなさい/「忍空2」
花言葉にゆれて/「絶対無敵ライジンオー」
ぶらんこの歌/「七つの海のティコ」
プラスα~Album Version~/「瑠璃丸伝」
騒擾楽園(パラリラパラダイス)/「魔神英雄伝ワタル3」
にんじんとグリグリ/「魔動王グランゾート」
シンデレラなんかになりたくない/「チンプイ」
いつまでもwith you/「七つの海のティコ」
あなたの風になりたい/「BAD BOYS 2」
あこがれ/「ルパン三世 炎の記憶」
November Rain/「らんま1/2」
JUSTIS~ダンガン×ヒーローより~/「MIYUKI WORLD」
HI・MI・KO/「魔神英雄伝ワタル2」
◇DISC3
COME TRUE…
Follow you,Follow me
Go ALONG ! GO AROUND!!
夢を追いかけて
※セルフカバー
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