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鈴木このみ×伊東歌詞太郎! 再タッグの心境は「優勝確定」!? 「異世界かるてっと3」EDテーマ「君色、僕色」制作秘話

「劇場版 異世界かるてっと ~あなざーわーるど~」の主題歌「メロディックロードムービー」で、圧巻のハーモニーを聴かせた鈴木このみさんと伊東歌詞太郎さん。そんなお2人が、TVアニメ「異世界かるてっと3」のEDテーマ「君色、僕色」で再びタッグを組みました。劇場版のパワフルな楽曲から一転、等身大の悩みに優しく寄り添う新曲はどのようにして生まれたのでしょうか? お互いの意外な第一印象から、鈴木さんが「まじまじと観察した」というプリプロの裏側、そして「自分らしさ」という深いテーマに至るまで、2人のクリエイティブの源泉に迫る、月刊ニュータイプ2025年11月号に掲載しきれなかったロングインタビューです。

「こんちくしょう!!」から始まった信頼関係


鈴木このみ、伊東歌詞太郎「君色、僕色」


――ライブでの共演も多く、以前から交流のあるお2人ですが、改めてお互いのアーティストとしての印象を教えていただけますか?
鈴木 歌詞太郎さんは、最初お会いする前に、担当のディレクターさんから「鈴木さんと近いスピリッツをもっている人がいる」とうかがっていたんです。私、10代のころに「歌さえあればもう何もいらない」って言っていたらしいんですけど、それとまったく同じことを言う人がいると(笑)。なので、お会いする前からすごく楽しみでした。実際に会ってからは、本当に歌うことが大好きな方なんだなっていうのと、加えてすごく自由な方だなと。性格もそうですし、歌声の音域も広くて、すごく自由に音楽で遊ばれる方だなっていう印象です。
伊東 僕は誰からも情報をもらえなかったので(笑)、自分でWikipediaを調べました。そしたらタイアップの数が50曲もあって、思わず「こんちくしょう!!」って(笑)。僕自身がタイアップとは縁遠い人生だったので、嫉妬しましたね。お会いしてからは、そこにいろいろな印象がプラスされていきました。僕は音楽について「悩む」ことはすごく大事だと思っているんですけど、鈴木さんもすごく悩みながら音楽と向き合っているのがわかって、ボーカリストとしてすばらしい生き方をしている人なんだと感じました。まあ、タイアップが多くてうらやましいなっていう第一印象は、今も変わらないですけど(笑)。

劇場版からの再タッグ! “戦い”から“等身大”へ


鈴木このみ


――そんなお2人が、TVアニメ「異世界かるてっと3」のEDテーマで再びタッグを組むことになりました。
鈴木 また呼んでいただけたということが何よりもうれしかったです。とくに芦名みのる監督は私が10代のころからお付き合いがあって、人見知りを発動してひとりでポツンとしている私によく話しかけてくださっていたんです。当時から「あなたの歌声が好きだ」ということをずっとおっしゃってくれていたので、こうしてまたごいっしょできるのは特別な気持ちです。
伊東 芦名監督は本当に音楽が好きなんですよね。僕もよくカラオケバーに連れていってもらって、そこでよく「歌って!」とマイクを渡されています(笑)。

――今回も作詞・作曲は「メロディックロードムービー」と同じくヒゲドライバーさんです。
鈴木 聞いたときは「“優勝”や」って思いました(笑)。みんなが好きな布陣だし「優勝確定」っていう気持ちでしたね。ただ「メロディックロードムービー」で、ある意味この3人での完成形が見えたので、今回はどういうふうに攻めるんだろうっていうのはとても気になっていました。
伊東 僕はどちらかと言えば、個人的な感情よりは、この座組のなかで自分がどんな役割を果たせるのだろうかということをまず考えました。タイアップ曲である以上、「いせかる」という作品をどう引き立たせるかも大切なので、それがいちばんですかね。

――「君色、僕色」についてですが、前作のパワフルな雰囲気とは少し違って、とても軽やかで等身大な楽曲ですよね。
鈴木 最初にデモを聴いたときは、すごく穏やかな風が吹いている景色が浮かんで、さらには歌詞太郎さんが歌っているイメージが浮かんだんです。
伊東 そうだったんですか?
鈴木 そうなんですよ。「メロディックロードムービー」のときは、どちらかと言えば私の楽曲の世界観に歌詞太郎さんが飛び込んで来てくださった印象ですけど、今回はその逆で、歌詞太郎さんがふだん歌われているような雰囲気に近いのかなって。
伊東 それはおそらく比較すると、なのかな? 僕は自分では「メロディックロードムービー」のような疾走感MAXな曲も大得意だと思っていますから(笑)。
鈴木 そうか。私はふだん疾走感MAXな曲を歌うことが多いので、「君色、僕色」は私にとってはちょっとした挑戦のような気がしたんですよね。
伊東 なるほど。たしかに今回は鈴木さんと僕がマイクでバチバチに戦うというよりは、ともにひとつの曲をつくり上げていく感覚でしたからね。とくにサビに関しては、2人じゃないと成立しないような歌い分けの構成になっていて、ひとりでも歌えなくはないけど、すごく不自然になってしまう。そこに、2人でひとつのものをつくり上げていくというテーマ性を感じました。

鈴木このみは“観察”する!?  プリプロで生まれた化学反応


伊東歌詞太郎


――今回は鈴木さんの希望で、本番前に対面でプリプロ(仮歌唱)をされたそうですね。
鈴木 そうなんです! 「メロディックロードムービー」では声を合わせることができなかったので、今回はぜひ!とお願いしました。同じ空間で、目が合う状態でいっしょに歌うことができてすごくよかったです。

――そのプリプロでは、鈴木さんが伊東さんのことをかなり“観察”されていたとか。
鈴木 あはは(笑)。歌詞太郎さんのAメロのアプローチがすごくすてきだったので、どういうふうに体を使って、どう声を出しているんだろうって、じーっと見ていました。
伊東 ホントですか? 現場では全然そんなこと言ってくれなかったのに(笑)。
鈴木 言えませんでした(笑)。でもそのとき観察して感じたエッセンスを、自分の本番のボーカルにも取り入れることができたんですよ。なので、自分にとってはすごく貴重な時間でした。
伊東 なるほどね。でも僕も、先に歌ってくれた鈴木さんの本番テイクのグルーヴを聴いて、それを自分の体に貼りつかせるような感覚で歌っているので、手段は違えど同じようなことをやっているのかもしれません。

「自分って何なんだろう?」――アーティストとして向き合う“自分らしさ”



――歌詞も「自分って何なんだろう?」というフレーズから始まり、考えさせられる内容です。お2人はこの歌詞についてどんなことを感じられますか?
鈴木 きっと誰もが共感できるんじゃないかと思います。どんな生活を送っていても、少なからず孤独は感じるだろうし、逆につながりも感じると思うんです。そんななかで、最終的には『自分は自分なんだ』と思えるかどうかって、大人になるほど大切なことだなって感じます。
私自身、「自分らしさとは何か?」って悩むことはたくさんあります、って言うかむしろずっと悩んでいて。その昔、田村直美さんにお会いした際、そのときが初めましてだったにもかかわらず「自分のことがわからないんです!」って泣き出しちゃったこともあるくらい(笑)。でもその時、田村さんが私をギュッと抱きしめてくれて「私もいまだにわからないもん」と言ってくださったんです。最近になってようやく、何をしていても「らしさ」ってどこかに絶対にあるんだって思えるようになってきて、改めてあのときの田村さんのことばに救われた気がしますね。
伊東 僕は、この歌詞から伝わるメッセージをひと言で言うと「慈悲」なんじゃないかと思うんです。今の世の中って、SNSとかで他者と比較して「承認欲求」に苦しんでいる人がすごく多い。でも、大事なのは自分軸で生きることだし、僕自身、たとえ誰も聴いてくれていなくても歌うことの楽しさは変わらないんだって気づいた時期があって。この曲は、そういう悩んでいる人たちに対して、寄り添いつつも救いを与えてくれる、そんな菩薩のような慈悲の心を感じます。 僕も自分の音楽を通じてそういうことを伝えていきたいとは思っているんですけど、なかなか自分ではここまで直球な歌詞は書けなくて。そこはヒゲドライバーさんのすばらしいところで、この曲には今の世の中に必要なメッセージがすべて詰まっていると思っています。

――ちなみに「いせかる」には個性的なキャラクターがたくさんそろっています。とくにお気に入りのキャラクターなどはいますか?
鈴木 見ていていちばん好きなのは「このすば」のめぐみんです。必ず何か…おもにエクスプロージョンですけど、起こしてくれるので、場が盛り上がりますよね(笑)。ただ私自身は人見知りなので、個性的すぎる彼女と友達になるのは難しいかも(笑)。遠くから見ているくらいがちょうどいいのかもしれません。
伊東 確かに。僕はキャラとしては「リゼロ」のスバルが好きなんですけど、友達になるなら「このすば」のカズマかなあ。逆に絶対に友達になれないのは「幼女戦記」のターニャ(笑)。ただ、彼女との間に2、3人フィルター役を挟めばよきメンターとして人生相談に乗ってもらえそうなので、そういう距離感のつきあい方ならターニャはアリかなとも思いますね。

――では最後に、この曲を楽しみにしているファンへメッセージをお願いします。
鈴木 「異世界かるてっと」って、ファンやキャストさん、スタッフさんの“信頼”でできている、奇跡のような作品。そこから再びお声がけいただけたことが本当にうれしいですし、私の想像以上にいい楽曲になりました。皆さんがどんなふうに聴いてくださるのか今から楽しみですし、この想いが皆さんにしっかり届いてくれたらいいなと思います!
伊東 アニメを輝かせるために、僕ら全員がベストを尽くしてつくり上げました。アニメを見て、この曲が作品をさらに輝かせているなと感じてくれたなら、それが僕にとって最高の喜びです。作品とともに、ぜひ楽曲も楽しんでください!


TVアニメ「異世界かるてっと3」は好評放送中
©異世界かるてっと3/KADOKAWA


鈴木このみ(すずき このみ)

第5回全日本アニソングランプリ優勝を機に15歳でデビュー。「Re:ゼロから始める異世界生活」の「Redo」など、ゲームやアニメのタイアップは60曲を超える新時代のアニソン女王。エネルギッシュな歌声と、音楽に真摯な探究心が魅力。

伊東歌詞太郎(いとう かしたろう)

ネットシーンを中心に絶大な支持を集めるシンガーソングライター。TVアニメ「デカダンス」のEDテーマ「記憶の箱舟」など、数々のアニメ主題歌を担当。「自分軸」を大切にする深い哲学をもつ。

【取材・文:岡本大介】

■鈴木このみ、伊東歌詞太郎「君色、僕色」
KADOKAWA/各音楽配信サイトにて配信中
download・streaming:https://nex-tone.link/9R2cR2hrR

■TVアニメ「異世界かるてっと3」
放送:TOKYO MX…毎週月曜 22:30~/BS11…毎週月曜 23:30~/MBS…毎週火曜 26:30~/AT-X…10月17日より毎週金曜 20:45~ ほか
配信:dアニメストアにて地上波同時・最速配信中
〈その他配信サイトでは10月16日(木)より毎週木曜 22:30~順次配信〉

リンク:
アニメ「異世界かるてっと」公式サイト
アニメ「異世界かるてっと」公式X(Twitter)・@isekai_quartet
鈴木このみ 公式X(Twitter)・@suzuki_konomin
伊東歌詞太郎 公式X(Twitter)・@kashitaro_ito

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