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好評放送中のTVアニメ「究極進化したフルダイブRPGが現実よりもクソゲーだったら」(以下「フルダイブ」)。土日月さんによる小説を原作とした本作は、リアルを極めたおかげでとんでもないクソゲーとなってしまったフルダイブRPG「極・クエスト」(以下「キワクエ」)の世界で、男子高校生の結城宏ことヒロが悪戦苦闘し続けるコメディ作品です。WebNewtypeではそんなアニメに出演するキャストにリレーインタビューを実施。第4回は、親友のヒロに早々に殺され、しかしその後も度々登場するというマーチン役の石谷春貴さんに異色のキャラクターについて語ってもらいました。
――まずこれまでのマーチンの歩みを振り返りましょう。第1話ではその死から驚きの展開に突入しました。あの時点まではどのように演じようと考えていたのでしょうか?
石谷 第1話を見た方は衝撃の展開だったんじゃないでしょうか(笑)。マーチンはNPCですが、あくまであの世界ではヒロの幼馴染なので、NPCではなくヒロとずっと一緒に暮らしてきた普通の人間として演じようとは考えていました。戸惑ってるヒロに対して「どうしたんだ?」って本気で心配したりとか。そうした方が穏やかな日常からの急展開というギャップが出るかなと。
――「キワクエ」の世界に暮らすマーチンをどんな人物だと捉えていますか?
石谷 学校のヒエラルキーが上のほうの枠にいるみたいなイメージです。ヒロとマーチンって陰と陽みたいな関係で、マーチンは陽だけど親友のヒロに対して親切。しかもマッチョマンでかわいい妹がいるんですよ。そんなの人生勝ち組の人でしょう(笑)。
――確かに第1話でのマーチンはいい親友ポジション感がありました。キービジュアルでもヒロインたちに混じってヒロに寄り添ってますし。
石谷 あの中だとマーチンが一番まともでしょう。性別が女の子だったらいいヒロインになっていたはずです。だってずっとそばで見守ってくれてますからね、マーチンタイムで(笑)。
――そのマーチンタイムで、死んだはずのマーチンが第3話から度々登場します。マーチンタイムのあの演技はどう生まれたのでしょうか?
石谷 収録現場には事前にいろいろ考えていくつかパターンを持っていったんですけど、制作側の人とお話すると「本当に怖い演出になるので、マーチンも呻いてください」みたいに仰っていたのであの感じになりました。イメージとしては(ホラー作品「呪怨」シリーズの)伽耶子。無機質で不気味な感じを出せるようにしました。
――そのマーチンタイムも、第6話でケヌラの木のイベントを経て終了します。
石谷 あそこはヒロの気持ちが変化する瞬間だし、ヒロとマーチンの関係性も変わるので演じていて特に印象に残っています。ヒロが約束の場所にちゃんといてくれる安心感とか、僕も陸上をやってたときに救ってくれた友達のことを思い出しましたし。
――あのシーンの演技を振り返ってください。
石谷 マーチンのヒロイン感を一番出しました(笑)。あとどことなく現実世界とは違うというか、少し夢の中にいる感じを大事にしたいと思っていました。ただあそこは過去の話も入ったりしていいシーンのはずなんですけど、それでも急にギャグが入ってきたじゃないですか。シリアスとコメディのギャップ、落差という「フルダイブ」らしさがブレずに出てますよね。
――そうですね。では次にオーディションの話を伺いたいのですが、石谷さんはマーチンで受けられたんですか?
石谷 いや、僕は別の役を受けていたんです。でも「マーチンに決まりました」という話を聞いて。その後にスタッフのいろんな人に話を聞いたところ、オーディションで僕の陽の気を感じ取っていただいてマーチン役になったのかなと思っています(笑)。あと僕もマーチンと同じようにわりと体格がいいし、妹のアリシア役が旧知のファイちゃんというのもあって、そういった点でも相性がよかったのかもしれません。
――そのファイルーズさん演じるアリシアをどう見ますか?
石谷 第1話のアフレコで監督や原作の土日月先生が来られていたんですけど、ファイちゃんは「オーディションで一番殺気を感じた」と言われていたんです。確かにそうなんですけど、僕は彼女が演じることで憎めなさも出ていると感じています。あと僕はずっと妹が欲しかったので、「妹かわいいな」という思いも少しあって。
――兄弟はいらっしゃらないんですか?
石谷 僕は弟しかいないんです。だから妹や姉という存在に憧れがありまして。そういった意味では、オーディションでは自分の長男らしいところも出ていたのかもしれません。
――続いてヒロについて話を聞かせてください。石谷さんも彼と同じように学生時代に陸上をしていて、挫折を経験されたという話を拝見しました。ヒロに共感するところはありますか?
石谷 そうですね。僕は漏らしてはいませんけど(笑)。僕の場合、ゴール地点でバランスを崩して左手を地面についたら腕の肘から上が一回転半くらいしていて……ヒロはその瞬間に「終わった」と感じていましたが、僕はアドレナリンが出ていたせいか痛みもなくてしばらく大丈夫だったんです。「すごいことになってる」と笑ってたくらいで。でも救急車で運ばれた先で「即手術です」と言われた瞬間から落ちていきました。「大学の推薦もあったのにどうしよう」とか「今まで積み重ねたものが全部崩れちゃった」とか考えちゃって……当時の記憶、1週間くらいないんですよ。そんなことがあったので、僕は「フルダイブ」のヒロの話を見たときに少しゾッとしました。自分は友達のおかげで吹っ切れて今この世界で働いていますが、そのきっかけがなかったらヒロみたいに落ち込みっぱなしだった可能性もあったはずです。
――ではヒロがあんな風に落ち込むのも誇張ではないと。
石谷 はい。ヒロは強いですよ。あんなことがあると「もう誰も信じられない」という風になってもおかしくないのに、ゲームなどで誰かと関わろうとしていて。ああいう姿勢はすごいと思います。
――ありがとうございます。次にマーチンが退場してしまったあとなので恐縮ですが、今後の「フルダイブ」の注目ポイントを教えてください。
石谷 やっぱりアリシアですね。彼女がどういう風にヒロを追い詰めていくか、ヒロインとしてどういう風に迫っていくかを楽しんでほしいです。マーチンの代わりに、八面六臂の大活躍をしてくれるでしょうから。
――それでは本編から離れた話を伺います。石谷さんは最近ゲームをプレイされていますか?
石谷 はい。最近だと「Apex Legends」などのFPSをやってます。でもRPGも好きだし「仁王2」や「SEKIRO」といった“死にゲー”もしますし、ジャンルや遊び方に好き嫌いなく遊んでます。
――かなりゲーマーなんですね。ジャンルを問わず楽しんでいるのは昔からでしょうか?
石谷 はい。最初に買ってもらったゲームは幼稚園のときのNINTENDO64でした。それから過去のハードで「ポケットモンスター」や「ドラゴンクエスト」などのRPGを遊びつつ、少し成長したら「東方」シリーズでシューティングゲームをやったり。あとTYPE-MOONなどのアドベンチャーゲームも好きで、大学ではPCゲームをプレイしました。
――それでは次に最近「クソゲー!」と感じたことを教えてください。
石谷 少し前ですが、去年の12月は酷かったですね。まず月の頭に保険証を財布から取り出そうとしたら、スーッと道路の排水溝に落ちていって流されて行っちゃったんです(笑)。
――では最後に「キワクエ」における「親友殺し(ベストフレンド・キラー)」のような称号に関するリレー質問です。まず前回登場したファイルーズさんからは「徳高き指導者」という称号を与えられました。
石谷 ははは(笑)。またなんでそんな称号に?
――「フルダイブ」の現場でもお世話になったし、彼女が初めて声優として参加したドラマCDの収録現場でも主人公役の石谷さんによくしていただいたからだそうです。後者は「覚えてるかな?」とも仰っていましたが……。
石谷 覚えてますよ(笑)。
――すごい! その頃のファイルーズさんの印象は?
石谷 当時も今と同じくインパクトはありましたけど、それ以上にきっちり自分のお芝居を持っていたのが印象的でした。あと僕が言うのもなんだけど、お芝居を勉強し始めてからまだ日が浅かったものの、何か伝えると彼女はちゃんとレスポンスを返してくれるんですよね。それで「ああ、この子はたぶん大丈夫だな」と思いました。
――最近の彼女の活躍ぶりを見るに、石谷さんは先見の明をお持ちなんでしょうね。続いて、次にインタビューが公開される結城楓役の古賀葵さんに称号を与えてください。
石谷 「兄者大好き♡慈愛のボクっ娘」でしょうか。読み方はスタチュー・オブ・リバティ(自由の女神)にちなんで「シスター・オブ・チャリティー」で。
――その心は?
石谷 自分が持つ古賀さんのイメージの組み合わせです。話すと長くなるんですけど、古賀さんとはいろんな作品でご一緒させていただいていますが、とある現場で僕の誕生日に最初に「おめでとうございます」と言ってくださったんですよ。それですっっっごく優しい方だなと思って「慈愛」で。
――残る「兄者大好き♡」と「ボクっ娘」は?
石谷 古賀さんのTwitterアカウントをフォローしてるんですけど、そこで「兄者が!かまってくれん!お正月なのに!」と呟いて「めっちゃ仲いいやん!」と思ったのが印象的で。それと同業者のラジオって勉強のためにもわりと聴いているんですけど、古賀さんが「僕はね」と言っていたんですよ。それを組み合わせた結果「兄者大好き♡慈愛のボクっ娘」になりました……古賀さん、ごめんなさい!
【取材・文:はるのおと】