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肌で感じた「エヴァ」人気――「シン・エヴァンゲリオン劇場版」赤木リツコ役山口由里子インタビュー

「シン・エヴァンゲリオン劇場版」は好評公開中
「シン・エヴァンゲリオン劇場版」は好評公開中(C)カラー

公開中の「シン・エヴァンゲリオン劇場版」。完結編となる本作について、そして「エヴァンゲリオン」シリーズについて赤木リツコ役山口由里子さんにお話をうかがいました。

──公開中の「シン・エヴァンゲリオン劇場版」。皆さんの反響をどのように受けとめていますか?

山口 知人たちも見たよと報告してくれて(笑)。しばらく会ってない友人も「26年間ありがとう」とかメッセージをくれ、こちらこそと思いながらもうれしかったです。私自身、公開初日にも映画館に出かけたのですが、「行ってきました」というツイートに対して、「いいね」をつけてくださった、カウントがみるみるうちに跳ね上がってびっくりしました。あらためてエヴァの人気を肌で感じましたね。延びていた公開が突然決まって、大っぴらに宣伝する機会もほぼないままスタートしたわけですが、届くべきところに届いていく広がり方もよかったと思います。

──山口さん自身は、映画をご覧になって、どんな思いをいただきましたか?

山口 初号試写を見せていただいたときは、大好きな作家の久しぶりの長編小説を読み終わった感動に浸る感覚とでもいいましょうか。はぁっと心地良いため息が出ましたね。公開日には息子と観に行きました。息子は13歳なのですが、これまでのお話も予習していて、自分のわかる範囲で色々と考えているんですよ。だから観終わった後、「すっごく面白かった。考えすぎて頭がガンガンする。早く帰りたい」とかいって。そこから家までの間、質問攻めでした。聞かれたことに「えっと、それは……」って詰まると、「ああ、そこは庵野さんにしか分からないんだね」ってちょっとがっかりされたり(笑)。私の考えと息子の考えが違うところもあったりして、つくづく面白い作品だなあと思いました。息子はそのあと友だちと観に行ってますからね、ハマりましたね。

──13歳というと、ちょうど「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズと同じくらいの……。

山口 ええ。「:序」のアフレコのとき、まさに臨月でした(笑)。収録が出産の予定日とかぶってきてしまって。何かあったら救急車を呼んでもらうお願いをして、収録中も休憩を入れさせていただきながら進めた思い出があります。お腹の子にも「今日はエヴァンゲリオンというものを録ります」と言い聞かせて、「ママの心がびっくりしたり、すごく揺さぶられるかもしれないけれど、お芝居だから心配しないでね」って(笑)。

──このエピソードだけでも、人生の節目に「エヴァンゲリオン」が深く関わっていることがうかがえます。25年以上、本シリーズへ携わってきたことへの思いを教えてください。

山口 リツコを通して自分が成長したことは間違いないですし、「エヴァ」に出会って人生が大きく変わったことも間違いありません。そもそも、「エヴァ」がなかったら声優をやっていなかったと思います。「エヴァ」が声優としての初めてのお仕事で、声の仕事のことを少しも知らないまま現場にはいってしまっていたし、何の勝手もわからなくて。すごい方々に囲まれているんだってこともよくわかっていなかったですからね。でも、「エヴァ」だったから(作品が)続いたし、リツコだったから続けられた。エヴァの呪縛ですね。思っても見ない人生になりました(笑)。

──TVシリーズに「新世紀エヴァ劇場版」、「新劇場版」。そのあいだにもゲームコラボなどさまざまなコンテンツが制作されてきました。

山口 実は、はじめの10年、15年くらいは翻弄されました。自信もなくて、ここは私の場所じゃないんじゃないかという負い目や迷いがありました。ありがたいことにその間にも色々な作品のお仕事をいただいて、もちろんまっすぐに取り組んできたのですが、だから、ずっと誰にもいえなかった。実際にこの仕事辞めようかと思った時期も自分の中では何度かありました。でも、そんな時にまたエヴァの仕事が舞いこんだりして……。そんなことが続くうちに、もしかしたらここには、私がやらなければならない役割が何かあるのかもしれない、と思えるようになっていったんです。もちろん今は最高に面白いし、大好きな仕事だと思っています。最高だと思えている今、「エヴァ」を完走できたのは、とても幸せなことですね。

──最後、「終劇」という文字を見たとき、どんな思いがありましたか?

山口 終わりが心にすっと入ってきました。やり遂げた、という感じですね。でも、この26年ずっとリツコのことを考えてきて、彼女はもう自分の中に確実にいるので、それは永遠に消えないと思います。リツコはとても人間くさい人です。不倫だったりの描写もありましたけれど、そんなの誰にでも起こりうることじゃない?という生身の心を常に持っている。そんな彼女と、ひとりの女性として人間として、これからもずっとつき合っていくんだと思います。そんな作品、滅多にない……あ、もうひとりいます! 20年以上一緒にやっている大切な女性が(笑)。

──手がいっぱいでてくる方が。

山口 ふふふ。あ、そういえば、どこだったかな、2回目に映画を観た時、ああっ、ここで手を出せたらと思ったシーンがありました。技が出せない!って(笑)。

●やまぐち・ゆりこ/大阪府出身。代表作は「ONE PIECE」(ニコ・ロビン役)、「ポケットモンスター」シリーズ(ジョーイ役)など

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「シン・エヴァンゲリオン劇場版」が表紙のニュータイプ6月号は好評発売中
「シン・エヴァンゲリオン劇場版」が表紙のニュータイプ6月号は好評発売中(C)カラー


【取材・文:ワダヒトミ】

リンク:「エヴァンゲリオン」公式サイト
    公式Twitter・@evangelion_co
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