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今のアスカとして言いたいことを全部言えた――「シン・エヴァンゲリオン劇場版」式波・アスカ・ラングレー役宮村優子インタビュー

「シン・エヴァンゲリオン劇場版」は好評公開中
「シン・エヴァンゲリオン劇場版」は好評公開中(C)カラー

公開中の「シン・エヴァンゲリオン劇場版」。完結編となる本作について、そして「エヴァンゲリオン」シリーズについて、式波・アスカ・ラングレー役の宮村優子さんにお話をうかがいました。

──「シン・エヴァンゲリオン劇場版」、絶賛公開中です。

宮村 無事公開されて、まずほっとしました。コロナ禍の大変な状況の中、本当にたくさんの方が公開と同時に観てくださって。完結編を心まちにする、皆さんの思いの強さを感じました。どんなに延期が重なっても待ってるよ!って言ってくださっていた人たちの声が、私はとてもうれしかったです。

──宮村さん自身は、完成した映画をご覧になって、どんな感想をいだきましたか?

宮村 率直な感想としては、冒頭の「これまでのエヴァンゲリオン」を観て、これ、試写だからついてるの? 公開版にもつくの?って、まず混乱しました。こんなに親切になるなんて(笑)。当たり前ですけど本編には、アフレコ時にはまだなかった色や音がついてますし、自分の出てないシーンの映像や他のキャストさんの芝居もはじめて見られるわけですし、夢中で2時間半があっという間でした。アヤナミそっくりさんが田んぼで後ろに倒れちゃうところとかかわいいし、戦いはみんな本当にかっこよかったし。とくにミサトさんとか、もう、めちゃくちゃかっこよかった……! 

──各シーンについてなど細かくは本誌インタビューで語っていただいていますが、25年以上、アスカという女性に寄り添って、彼女の心を描いてきた思いを教えてください。

宮村 ひとつの作品、ひとつのキャラクターにこんなに長い間携わらせていただけて、時代の変化も共に見てこられて、すごい経験をさせていただいてるなって思います。思えば、オーディションの時点では「新世紀エヴァンゲリオン」はまだ、放送枠も決まってなくて。私もアスカじゃなくて、レイ役のオーディションを受けていました。レイはおとなしい女の子だという設定をきいて、おとなしくやったつもりだったんですけど、ずっと舞台をやっていたものだったから、ぜんぜんおとなしくなかったみたいで(笑)。

──アニメのオーディションは初めてだったんですよね。

宮村 そうそう。マイクの使い方とかもよくわかってなくて。あとから考えたら、林原さんのレイちゃんの声は、アフレコですぐ隣にいても聞こえないくらいなので、私のレイじゃ、たしかにぜんぜんダメだった。そうか、マイクってこうやって使うんだあって、勉強にもなりました。オーディションでは数回のリテイクののち、「最後にもう1キャラ受けていただけますか?」と声をかけていただいて。「この子は元気で大丈夫」とのことで、レイのときに抑えてた分、一気にパカッと全開になって飛び出してきたのが、アスカでした。

──年月と作品を経て、アスカの印象は、どのように変わっていきましたか?

宮村 最初はお互い知らない同士でしたけど、ずっとずっと人生を共にしてきて、途中でアスカに対してお母さんみたいな気持ちになったりもしました。だから、「新世紀エヴァンゲリオン劇場版」なんて、今でもつらくて見られないんですけど……。

──「シン・」で描かれたアスカにはどんな思いがありますか?

宮村 今のアスカとして言いたいことを全部言えたんじゃないかと思いますし、アスカがかわいく、キラキラしているシーンがあって、本当にうれしかったです。何より、庵野さんがアスカを忘れずに描ききってくれたってことが、うれしい。長年のわだかまりが解ける思いでした(笑)。

──この25年で、庵野秀明総監督にどんな変化を感じますか?

宮村 変わったか変わってないかでいったら、絶対に変わったと思います。100人いたら100人そう答えると思う。それがどんな変化かというのは、やっぱり作品を観るにつきるんじゃないかな。庵野さんは、「エヴァ」をつくられる前から有名な監督さんでしたけど、「エヴァ」以降もっと有名になって、世の中的にも日本がすごいアニメ大国になっていって。とりまく環境もだいぶ変わっていったんだと思います。あのー、今のニュータイプ読者の皆さんは知らないかも知れませんが、昔はアニメの本って、本屋さんの奥の奥の隅っこの方にあったんですからね!? 

──確かにそうでしたね(笑)。

宮村 そういう時代にアニメーションの力を信じて、こんな表現をしたい、あんなものを描きたいって続けてきて。それから時代に後押しされて、今は「新劇場版」シリーズ4部作を完結させた総監督として、かがやいていて。今の庵野さんには、「エヴァンゲリオン」という大きなものを大団円で終わらせるだけのエネルギーと愛がある。そりゃあ、昔のあがいていた監督とは全然違うんですけど、私もファンのみなさんも、その過程を一緒に追ってこられたっていうこと自体が、とても幸せなことだったのだと思います。

──エネルギーと愛がなせた技、なのですね。

宮村 ほんとそうです。それに、庵野さんは基本的には人に気配りのできる優しい人だと思いますよ。でも、そうじゃなかったら、こんな風にキャラ全員にちゃんとエンディングを用意してあげるなんてできないもの。キャラを救って、キャストも救って、ひいてはファンの皆さんの思いにも真摯に応えられていった。「だからみんな、死んでしまえばいいのに」といっていた時代から年月を経て、「エヴァンゲリオン」という作品は「共に乗り越えましょう」と言えるようになったんです。

●みやむら・ゆうこ/兵庫県出身。代表作は「VS騎士ラムネ&40 炎」(パフェ役)、「名探偵コナン」(遠山和葉役)など。'09年からオーストラリアに移住、'18年帰国

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「シン・エヴァンゲリオン劇場版」が表紙のニュータイプ6月号は好評発売中
「シン・エヴァンゲリオン劇場版」が表紙のニュータイプ6月号は好評発売中(C)カラー


【取材・文:ワダヒトミ】

リンク:「エヴァンゲリオン」公式サイト
    公式Twitter・@evangelion_co
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