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ついに最終回が放送されたTVアニメ「究極進化したフルダイブRPGが現実よりもクソゲーだったら」(以下「フルダイブ」)。土日月さんによる小説を原作とした本作は、リアルを極めたおかげでとんでもないクソゲーとなってしまったフルダイブRPG「極・クエスト」(以下「キワクエ」)の世界で、男子高校生の結城宏ことヒロが悪戦苦闘し続けるコメディ作品です。WebNewtypeではそんなアニメに出演するキャストにリレーインタビューを実施。最終回では、結城宏(ヒロ)役の山下大輝さんに再び登場してもらい、ヒロの成長や本作の破天荒な魅力などについて語っていただきました。
――称号に関するリレー質問で、井澤さんから山下さんに贈られた称号が「さわやか美食ハンター」でした。静岡県のハンバーグチェーン・さわやかがかなりお好きだとか。
山下 ええ。好き過ぎて、両親の顔と一緒にさわやかが浮かぶくらいです。「お父さん、お母さん、げんこつハンバーグさん」みたいな。
――そのさわやかを始め、美味しいものが好きなんですね。
山下 はい。ゲームと美味しいものが大好きです。コンビニに水を買おうと思って行っても、いつの間にかお菓子やカップラーメンを買っているくらいですから。この世は美味しい物に溢れているので、それらの誘惑に負けず太らない人が奇跡のような存在に見えます。
――本当に美食ハンターですね。それでは「フルダイブ」について伺います。まず全話収録を終えた段階での感想は?
山下 とにかく先が気になります。正直、何も解決してないじゃないですか(笑)。ヒロの気持ちは一歩前に進めましたが、事件的には何も解決していない。むしろこれからですし、終盤の盛り上がりはすごくて「今からやってやるぜ!」というテンションのまま終わっちゃったので、土日月先生が書かれる続きを早く読みたいです(笑)。
――ヒロの成長を描いていましたが、どのように変化したと捉えていますか?
山下 現実よりもクソゲーという逆境を乗り越えたことで、現実について「俺ってこんなことで凹んでたの」と思えるくらいにメンタルが鍛えられたんですよね。そういう風に前向きになれたのが成長かなと。それを受けて、今のヒロには「現実世界でもチャレンジしてみよう」とか「悔しい思いをしたくないから、もう1回頑張ってみよう」という気持ちが生まれていると思います。
――「キワクエ」はクソゲーだけど、ヒロにとってはいい成長のきっかけになったと。
山下 クソゲーだけど、それでもなお取り憑かれるような魅力のあるゲームなんでしょうね。最初は全然美味しくないのに噛んでたら癖になる、みたいな。ヒロもプレイしていて何度も「もうやめよう」「二度とやらねえよ!」と思っていますが、それでもいつの間にかゲームの世界に足を運んでしまいます。ゲームを遊んでいる間に、やりがいを感じたり生きているという実感を得たりしていたんじゃないでしょうか。クソゲーがヒロという人間を育てたんですよ。
――前回話を伺った際に山下さんはかなりゲーマーだと感じましたが、その気持ちは少しわかりますか?
山下 難易度の高いゲームを「クソゲー!」と言って投げ出すのは簡単です。でもそこで投げ出さずに、やりきったときは達成感みたいなものってありますよね。それはその人にしかわからないかもしれないけど、とても気持ちいいもので。ゲームでノーマルモードだけではなく、ハードモードやさらに上の地獄級みたいなものがある意味ってそういうところだと思います。達成感を味わおうとどんどん高みを目指す、そのために自分を追い込んでいくのはアスリートっぽいですが、ヒロも元アスリートとしてそういう楽しさを、どこかしらで感じているんじゃないでしょうか。「フルダイブ」はそういう部分が良いバランスでリンクしている話で、きっと最後のほうのヒロは素敵な表情になっているだろうなと思いながらお芝居しました。
――なるほど。言われてみれば上手くできている話ですね。
山下 小・中学生向けの教材にしてもいいくらいですよ(笑)。
――それには過激なキャラクターばかりのような……ヒロインで魅力的だと感じるのは誰でしょう?
山下 いないんですよね~。もちろんそれぞれに魅力はあるんですけど、自分は関わりたくないタイプばかりで(笑)。ゲームの中だけの関係で、現実世界では勘弁してほしい。
――では現実世界にいる楓くらいなら……。
山下 そうですね。むしろ楓はとてもいい妹だと思います。ちゃんと厳しいことを言ってくれるだけありがたい存在ですよ。
――幻滅した兄のことなんて無視してもおかしくないですよね。
山下 「以前のお兄ちゃんはかっこよかったのに」「どうにかしてまた前を向いてほしい」と諦めてないからこそのやさしさですよね。そういう意味では楓が一番いいです。
――ほかのヒロインは、一作にひとりいても充分なくらいの異色のキャラクターばかりですもんね。
山下 みんなおのが道を行く、覇道を歩む者たちですから。それが最後には揃っちゃって、お互いに火と油みたいになって。
――大人のはずのレオナもかなり変なキャラクターでした。
山下 「レオナこそ一番やばいんじゃないか」とキャストでも話をしていました。
――男性キャラクターも曲者揃いでした。
山下 しかも「1回しか出てこないだろうな」というキャラクターが意外と頻繁に出てくるんですよね。興津(和幸)さんがやってるアモスとか小西(克幸)さんのギンジとか。そんな1回しか出ないキャラクターが、最後まで何か残していくという。
――妙に声優さんが豪華でよかったです。
山下 「小西さんのキャラ、よりによってそこ?」っていう(笑)。あと松岡(禎丞)さん演じるカムイも。カムイが、攻略と称していろんなことを口悪く教えてくれますが、そこで松岡さんが大変そうだったのも印象に残っています。松岡さんの振れ幅、豊かさは聞いていて面白かったです。
――カムイと言えば、第12話で「ゆうてえみやうおけむこうほりいようじとりまやあきーらぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺ」と叫ぶという復活方法をヒロに伝授していたのも印象的です。
山下 「ドラクエ2」の復活の呪文が元ネタですよね。あそこの松岡さんはマジで大変そうでしたし、自分も大変でした。特に「ぺぺぺぺ」。上手く言えてよかったです。いや、きちんと言えたかも怪しいのでオンエアが楽しみです(笑)。
――「キワクエ」は全話通していろんなクソゲーらしい仕様がありましたが、一番嫌だと思った仕様はどれでしょう?
山下 断トツで痛覚です。マジでクソゲーだなと思いました。痛覚だけはやっちゃいけない。だって危なくないですか? ヘッドマウントディスプレイを付けてるだけでどうやって痛覚を感じさせているのか。たぶん脳に電流とか流してたりするんですよ。絶対に危ない。
――それでもヒロはプレイするんだから、生粋のゲーマーなんでしょうね。
山下 痛覚は多少なりとも軽減されているかもしれないとは言え……オフ機能が欲しいところです。
――個人的には、このアニメが最終回まで迎えても最初のテッドの町から出なかったのが驚きでした。
山下 僕的にもそこが魅力だと思っていました。「絶対に出ないほうがいいじゃん」って。そうしたら最初の町の事件すら解決しないまま最終回まで終わって。
――最終回の台本をもらったときは「よし!」って感じでしたか。
山下 「よし!」でしたよ。「振り切ってていいぞ~」と。
――振り切り過ぎでは(笑)。
山下 そこが最高なんです。原作がどう終わるか、現時点ではまったく想像がつきません。
――では最後に、今回のアニメはヒロが町を救うためにまたフルダイブするというところで終わりましたが、今後どんな展開が待っていると思うか教えてください。
山下 フルダイブして町を救って、そこでエンディングじゃないですか。僕は「キワクエ」ってどういうルートを通って町を出るかという脱町物語だと思ってるので。新しいタイプの脱出ゲームですよ。あと町から出ようとしても、その先には世界が広がってないとか全然ありそうですよね、クソゲーなので。
――見えない壁があるみたいな。
山下 「まだアップデートされていません」「ダウンロードコンテンツを購入してください」というメッセージが表示されるとか(笑)。もしくはこの町だけが異常で、ほかは全然平和かもしれない。そういった考察、想像の余地が大きくある作品ですよね、「キワクエ」って。
【取材・文:はるのおと】