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劇場版「プリズマ☆イリヤ Licht 名前の無い少女」釘宮理恵・諸星すみれ・花江夏樹インタビュー『すべてが目を離してはいけないシーン』

全国劇場で好評上映中の劇場版「Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ Licht 名前の無い少女」。TVシリーズ4期の放送を経て、今回は前作「雪下の誓い」に続く劇場版第2作目になる。

エインズワースから美遊を救出したイリヤたちは、平行世界の衛宮士郎から美遊の過去、この世界で起きた聖杯戦争のことを知らされる。それは美遊の悲しい運命であり、美遊のために兄・士郎が命を賭して歩んだ壮絶な戦いの物語だった。
人類救済のために美遊を犠牲にしようとするエインズワース。美遊のために世界の敵となると決めた士郎。相容れない2つの正義に対し、イリヤはすべてを守ると誓いを立てる。
そんなイリヤとエインズワースの決戦となる今作では、幾百年と続いてきたエインズワース血脈の闇、ベアトリス、エリカ、ジュリアンたちエインズワース側の過去が紐解かれることになる。

そこにある絶望と悲しみ、世界に対する憤りをどう演じたのか。ベアトリス役の釘宮理恵さん、エリカ役の諸星すみれさん、ジュリアン役の花江夏樹さんたちエインズワースサイドの3人に、上映を見ての感想から語ってもらった。

――今回は感染予防のため分散収録だったということで、自分以外のパートは完成映像で初めて見たと思います。まずは映像をご覧になった感想からお聞かせください

花江:きれいでしたよね。

釘宮:うん、本当にきれいでした。

花江:ワンカットごとに細かく描き込んであるというか、アクションシーンはスピード感抜群なのと同時に、1つ1つの構図がすごく格好いい。最初はそこまで注意して見ていなかったんですが、途中から「これ、とんでもない映像なんじゃないか!?」と思って、もう一度見直しさせてもらったんですね。カットの切り替わりにもストーリーがあって、ここまで考えられて作り込まれているんだなと思いました。

――カットの切り替わりというのは?

花江:言い方が難しいんですが、攻撃して、弾いてという1体1の対決シーンがあるじゃないですか。そこがどちらの立場からでも見られるというか、どちらにも感情移入できるような描き方をされているなと思ったんです。

諸星:私もアクションシーンは見て驚きました。エリカは戦いには参加していないので、ほかの皆さんがどんな収録をしているのかまったく知らなかったんです。完成映像を見て、よくこれに声を当てていたなと……。カットの激しい切り替わりもそうだし、そこに映るキャラクターの表情にも目を奪われました。

――表情でいえば、エリカは今作から一転しました。

諸星:そうですね。ゾクゾクくる表情ばかりで、今まで見てきたエリカのかわいさがあるからこそ、そのギャップに言葉が出なくなりますね。あんなに純粋でかわいらしかった女の子がこれほど醜い表情をするのかって。それも口の動きだけであったり、ほんのわずかな部分だけで伝えてくるのがすごいです。

釘宮:エリカの姿だけ、他とは違う描かれ方をしていて。それが1人で何千年も生きてきた虚無感を感じさせて、ただでさえ絵からゾワゾワさせられるのに、そこにすーちゃん(諸星さん)のとんでもなく闇ってる感じのセリフがくるからなおさらですね。

――エインズワースは第4期「ドライ!!」からの登場でした。最初は分かりやすい悪役という雰囲気でしたが、今回でいろいろなことが判明しました。今、エインズワースにはどのような印象をお持ちですか?

花江:譲れない信念、ジュリアンの背負う痛みというのが分かって、もう悪役としては見られないですね。イリヤたちからすれば正義ではなくても、ジュリアンにとってはこれしかないという正義。お姉さんへの気持ち、エリカを救いたいという気持ちが彼を突き動かす行動理念になっていて、ただただ切なくなってしまいます。

釘宮:ベアトリスも最初の登場のときは、バックボーンを知らされず、「人をいたぶるのが好きなキャラクターです」って説明されただけだったんです。収録していても、本当に生粋のサディスト。どうしてこの子はこんなに荒ぶっているんだろう、どうしてこんなにイリヤたちに敵愾心を持つんだろうって、ずっと疑問に思っていたんです。それが今回の劇場版ですべて答え合わせができて、今はベアトリスの悲しさが痛いほど分かります。すごく大好きなキャラクターになったし、イリヤには「救ってくれてありがとう」という感謝の気持ちもありました。

諸星:自分には理解できない行動や考えを持っている人って、違う存在のように見えてしまうじゃないですか。エインズワースへの見方はそれと同じで、イリヤの美遊を救いたいという気持ちとぶつかるから悪になってしまうんですよね。だけど、どうしてそういう立場になったのか、根本にあるのがジュリアンの優しさだと知ると、悪とはなんだろうって。そういうのをすごく実感しました。今回の劇場版で、ジュリアン、エリカ、ベアトリスのことが愛おしくなったし、イリヤが、自分の生き方から弾くんじゃなくて、分かってあげようと寄り添ってくれたのがうれしいですね。

――今回の収録で印象に残っていること、苦労された部分などはありましたか?

釘宮:いっしょに録った(門脇)舞以ちゃんがすごかったんです。私はその瞬間の感情を大事にする事が多いので、普段はあまり自分からテイクを重ねようとはならないんですけど、舞以ちゃんは「もう1回やらせてください」「もう一度いいですか?」って、何度も繰り返して。感情の乗せ方を試行錯誤していたんだと思うんですけど、本当にイリヤが乗り移ったみたいでした。どれだけテイクを重ねても絶対に最後までやり切るというイリヤと同じ意思の強さを感じて、とても感動しました。

――釘宮さんはベアトリスに対して特に意識した部分はありますか?

釘宮:こんなに切ないバックボーンがあると分かっていなかったので、台本を読んだときには号泣してしまって。その気持ちを大切に演じたいと臨んだんですが、あまりにも前半のアクションのボリュームがありすぎて、途中で音響監督さんに、一番最後のシーンを先に録れないかご相談しました。このままアクションシーンを続けていくと私の中のベアトリスがいなくなっちゃう(笑)。だから、喉を使い切る前に録れませんかって。

花江:分かります(笑)。釘宮さんパートは大変だろうなと思いました。

釘宮:先にイリヤからの救いを受け、心が温かく溶けていくみたいなところを収録させてもらいまして、ドカーン、バリバリー!みたいなところを最後の最後に。「もう今日はこれで終わりだから、喉使い切ってもオッケー、レッツゴー!」みたいな気持ちでやりました(笑)。

――諸星さんはいかがでしたか?

諸星:エリカは前回までのちっちゃくて愛らしい姿から、絶望に覆いかぶされたエリカだったり、パンドラだったり、いろんな表情の彼女がいたので、最初は私も翻弄されながら、どういうふうにエリカの感情の変化を表現していこうかと、探り探りで、温度感を確かめたりして。パンドラのときって冷酷な印象があるんですけど、それは心を閉ざした諦めからくる表情で、攻撃的なものではないんですよね。音響監督さんからは、だれに向かって、どういうつもりでしゃべっているのかが分からない、ちょっと機械的な感じという部分を出してほしいと指示がありました。今回のエリカがまとっている怖さって、すべてに対しての諦めなんですよね。

花江:僕は1人での収録だったんですが、皆さんやっぱり相当苦労していたんですね(笑)。

――ジュリアンはどういうところが大変でしたか?

花江:ジュリアンは基本的には今までのままのジュリアンなのですが、やっぱり感情的にはいろいろなものが揺れ動いていて、叫び1つをとっても、今、なにに対して怒っているのかというのは自分なりに細かく考えたところです。エリカを救うというのが彼の行動理念ですが、それができない不甲斐ない自分、エインズワースの闇、理不尽な世界とか、いろいろものに怒りを抱いているんですよね。その表現は感覚的に変えたつもりです。あとこの叫びですが、今回あまりにも多かったので、どこをマックスに持っていくかというのは考えながら収録しました。序盤から飛ばしすぎると一辺倒になってしまうので、内に込めた怒りだったり、じわじわ湧き上がる怒りというところから、最後で爆発させるように。そういうところからもジュリアンの感情が読み取れると思います。

――今回、回想で幼少時代のジュリアンも出てきます。そこはいかがですか?

花江:あのころのジュリアンは闇っぽさの欠片もない、姉を慕う純真な子供なので、僕も澄んだ心で(笑)。あそこはジュリアンにとって本当に大事なシーンで、今のジュリアンの原点はここにあるんですよね。彼の怒りの原点。それは今回、ジュリアンを演じる上でつねに意識するようにしました。

――今作を通して、特に印象に残っているシーンを教えてください。

釘宮:私はもう全部ですね。TVシリーズからの流れを知っていると、今回、美遊がクロに寄せる信頼感には「おお!」となったし、イリヤのものすごい成長、母性のような芯の強さ、優しさ、温かさとか。不穏な形で脈々と続いてきたエインズワースの闇に、今ここにきて、光が当たって浄化していくような流れも印象的でした。あとは、桜のゾゾっという怖さとかも。すべてが目を離してはいけないシーンになっています。

花江:今釘宮さんが話してくれたとおりで、本当に映像のすべてが見どころの塊だと思います。そういう中でも僕が特に好きなシーンでいうと、最後に、エリカとジュリアンが抱きしめ合うところですね。あそこはジュリアンの気持ちが溢れ出ていて、ラストシーンにかけての流れは彼の心の変化が見えてとても印象的でした。

諸星:そのシーンは私もとても好きです。ずっとずっと闇の中にいて、心を閉ざしていたエリカが最後、穏やかな表情でジュリアンに寄り添う姿はじーんときてしまいました。エリカが変わってしまったのは、優しさもそうですし、純粋で無邪気な心を持っているからなんですよね。そのせいでいろいろなものに飲み込まれてしまったところがあると思うので、最後に自分を覆っていた負の鎧が一気に剥がれて、素直な気持ちでジュリアンに言葉をかけてあげられたのは、本当に良かったなと思います。私も魂を込めてセリフを吹き込んだので、ぜひエリカの心を感じ取っていただきたいです。

――物語は続編に続きます。今後の展開で気になっている点、期待している点があれば教えてください。

花江:続編、ジュリアンの出番はあるんでしょうか(笑)。僕は今回で出し切ったので、あとは小西克幸さん(ダリウス役)にバトンタッチして、エインズワースの行く先を見届けたいと思います。

釘宮:たしかに、やっぱりダリウスがラスボスだったという二転三転の展開は気になりますよね。あと、私は田中さんに注目しています。飛び切りかわいいのに存在が謎すぎて、どんな活躍をするのか。また腕を飛ばしちゃうのかな? 「田中さん、ファイト!」って思っています。

――エリカは次で本当に救われるのか、ですね。

諸星:私も先の話はまったく知らないので、全部が楽しみです。田中さん、あとギルくんもどうなるのかなって。今回でエインズワースの謎が紐解かれたように、続編で2人の謎が明かされるのを待ち遠しくしています。

――最後に代表して、花江さんからファンへメッセージをお願いします。

花江:これほど長期間にわたって同じ役を演じるというのはなかなかないことで、とてもいい経験になりました。スタッフもキャストも全力を注いで作り上げた作品なので、何回でも見ていただきたいですし、見るたびに発見があると思います。続編はまだまだ先になりそうですが、その分時間はたっぷりあるので、TVシリーズから見直したり、原作コミックを読んだりして、『プリズマ☆イリヤ』の世界にもっと深く入り込んでいただけるとうれしいです。

【取材・文:鈴木康道】

■劇場版「Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ Licht 名前の無い少女」
全国の劇場で公開中

スタッフ:原作…ひろやまひろし・TYPE-MOON(株式会社KADOKAWA 月刊コンプエース連載・角川コミックス・エース刊)/監督…大沼心/副監督…高橋賢/脚本…井上堅二、水瀬葉月/キャラクターデザイン…平田和也/主題歌…「Just the truth」栗林みな実/音楽…加藤達也、石川智久(TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND)/音楽制作…ランティス/アニメーション制作…SILVER LINK./配給…角川ANIMATION

キャスト:イリヤスフィール・フォン・アインツベルン…門脇舞以/美遊・エーデルフェルト…名塚佳織/クロエ・フォン・アインツベルン…斎藤千和/ベアトリス…釘宮理恵/エリカ・エインズワース…諸星すみれ/ジュリアン・エインズワース…花江夏樹 他

リンク:劇場版「Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ Licht 名前の無い少女」公式サイト
   公式Twitter・@prisma_illya
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