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描かれるは命のドラマ―「宇宙戦艦ヤマト2205」山寺宏一インタビュー

2021年10月8日(金)から全国の劇場で上映開始となるアニメ「宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち 前章 -TAKE OFF-」(以下「2205」)。1979年に放送されたTVスペシャル「宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち」をベースに、それ以降の「ヤマト」の要素も盛り込んだリメイク作品です。

物語の舞台は前作「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」から3年後。ヤマトの新艦長となった古代進とクルーたちが激動の時代で新たなる船出を迎えます。上映を目前にひかえ、アベルト・デスラーを演じる山寺宏一さんにお話をうかがいました。

――「2205」の台本を読んでの感想をお聞かせください。

山寺 本シリーズは「宇宙戦艦ヤマト」のリメイク作品であるわけですから、読む前から大体の展開の予想はしているのですが、それを上回るほどに衝撃が走る内容でした。冒頭はデスラーの長セリフから始まって「なんだかナレーターみたいになっちゃったぞ」と思っていたら、読み進めていくうちに「そういうことか!」と。実はもう後編のアフレコも終わっていますので、ここではまだお話できないたくさんのことが今脳裏をよぎっています(笑)。

――デスラーは発表済みのティザービジュアル、キービジュアルでも大きく扱われていますね。

山寺 「それでも『生きろ』と?」というキャッチコピーとともにデスラーが大きく描かれていてるティザービジュアルは、僕もスマートフォンの待ち受け画像にしています。「2205」でも活躍の場をいただけたのはうれしいかぎりですが、(デスラーの身に)あまりにいろいろなことがありすぎて、アフレコでは心を持っていかれることもありました。たったひと言のセリフで、グッタリとつかれてしまうこともあったほどです。

――「2202」でデスラーの過去が深く描かれていましたね。

山寺 「2199」はもちろん、「2202」のこともしっかり踏まえて演じなければとあらためて感じました。特に「2202」ではランハルト(クラウス・キーマン)があんなことになってしまったので、より一層ガミラスのため、亡き兄のためにがんばらなければと。

――アフレコを終えて、デスラーへの印象に変わりはありましたか?

山寺 これまでデスラーを演じさせていただいてきてずっと気になっていたのは、彼がイスカンダルやスターシャに向けた思いがどれほど強いものなのかということです。「2205」ではそうした思いの深さが描かれ、(デスラーにとっての)"イスカンダルとは"、"スターシャとは"という気持ちが、そのまま"ガミラスとは"という思いに繋がっていきます。

デスラーはいつもすべてを知っているかのように振る舞いますが、当然彼がまだ知らないこと、初めて知ることもあるわけで、それには僕も衝撃を受けました。「ヤマト」は古代進をはじめ多くの人々の成長が描かれる群像劇という側面もありますが、デスラーもまた例外ではないと感じました。ただ、彼の場合は成長というのとはまた少し異なるのですが……。

――アフレコの際にディレクションなどはあったのでしょうか?

山寺 こちらから尋ねる分にはお話していただけますが、基本的には「ヤマト」の現場ではいつもお任せいただけている感じですね。台本の中にしっかりと感情の機微が落とし込まれていますので、それを読み込んで、感じたままのお芝居をさせていただいています。

――「ヤマト2199」の劇場先行上映が2012年でしたので、来年で10年になります。ご自身にとって、デスラーはどのような存在になっていますか。

山寺 大切なキャラクターの1人です。来年でもう10年と言われてビックリです(笑)。旧シリーズを手がけたスタッフのみなさん、そのときにデスラーを演じられた伊武雅刀さんのお芝居あってこそのキャラクターですので、そこをなるべく踏襲したいという思いは最初からずっと抱いています。

ただ、今のシリーズは深い「ヤマト」愛を持つ人たちが"新たなヤマトを"という思いで臨んでいるわけですから、それだけではなく、新たなデスラーを成立させなければ意味がありません。この作品にかぎらず、偉大な方から役を引き継がせていただくのはいつも大変な思いです。大きなプレッシャーも感じずにはいられませんので。

それでも折れずにいられるのは、やはりそれだけ作品がおもしろいから、そして、とてもやりがいがあるからですね。「こんなにいいセリフを言える役を(他の人に)本当に取られなくてよかった」と、よく思います(笑)。演じがいがある役をやるときほど、声優として楽しいときはありません。

それを見ていただいたみなさんに評価していただけるのももちろん大きな喜びですが、こういう役を演じられるというのがまず楽しい。しかも、デスラーはやりがいだらけのキャラクターですから。

今回の「2205」も、(アフレコに備えて)家で練習しているときから感極まって「このひと言に懸けてみよう」と思えるセリフがいくつもありました。でも、見る人にそれが伝わらなければ一人よがりに終わってしまいますので、アフレコで意外とあっさりOKが出ると、逆に不安になってしまうこともあります。

他の役者さんたちと一緒に収録している時は、絡んでいる人にやり直ししてもらうのは嫌なので、スタッフのみなさんがOKであれば僕からは何も言わないのですが、本作はコロナ禍の情勢を鑑みて1人ずつのアフレコでした。これなら他の役者さんの迷惑にはならないぞと「ここのセリフ、次の人がまだだったら、もう1回だけいいですか」とこだわらせていただいた部分もあります。

――映像を見ての感想もお聞かせください。

山寺 「2202」のズォーダ―率いるガトランティスも恐ろしい存在でしたが、今回のデザリアムもとんでもない敵で、作中では彼らのデザリアムハンマーという恐ろしい兵器が登場します。作中では誰も兵器の名称は口にしないのですが、台本に書かれていた兵器名を思わず覚えてしまうくらいでした。音と映像の両面で新たな脅威が描かれますので、ぜひみなさんにも大画面で見届けてほしいです。

それはそれとして、デザリアムハンマーの音はGOMAさんが演奏するディジュリドゥのように「どうやったらこんな音が出るんだろう?」と、深い印象も残すもので、いつかこんな音を口でやってみたいなとも感じました(笑)。

――最後に、10月8日の上映開始に向けてファンにメッセージをお願いいたします。

山寺 壮絶なバトルも描かれますが、やはり「ヤマト」は人間ドラマ、命のドラマだなというのを強く感じさせる作品になっていると思います。デスラー目線でお話しさせていただきましたが、古代をはじめ、チョーさんが演じる薮助治、畠中祐くんが演じる初登場の土門竜介にもグッときました!

■「宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち 前章 -TAKE OFF-」
2021年10月8日(金)より劇場上映
同日よりBlu-ray特別限定版販売&デジタルセル配信 スタート

スタッフ:原作…西﨑義展/製作総指揮・著作総監修…西﨑彰司/監督…安田賢司/シリーズ構成・脚本…福井晴敏/脚本…岡秀樹/キャラクターデザイン…結城信輝/メカニカルデザイン…玉盛順一朗、石津泰志、明貴美加/音楽…宮川彬良/音響監督…吉田知弘/CGディレクター…後藤浩幸/アニメーション制作…サテライト/配給…松竹ODS事業室
キャスト:古代進…小野大輔/森雪…桑島法子/真田志郎…大塚芳忠/アベルト・デスラー…山寺宏一/スターシャ…井上喜久子/土門竜介…畠中祐/徳川太助…岡本信彦/京塚みやこ…村中知/板東平次…羽多野渉/坂本茂…伊東健人

リンク:アニメ「宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち」公式サイト
    公式Twitter・@new_yamato_2199
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