新作&おすすめアニメのすべてがわかる!
「月刊ニュータイプ」公式サイト
地球を覆う感染症の恐怖。ランドルフ症候群――発症者は昏睡しつづけ、やがて衰弱してやがて死に至ります。現在、治療方法がいっさい存在しない恐怖の病の原因は、南極に出現した巨大地下世界「アサイラム」にあると考えられていた。そこに広がるのは人間に襲いかかる異形の生物群の姿と、未知の資源。その資源を求める組織「アンタークティカ・フロント」ヴェーラ隊に配属された時雨・ダニエル・魁は、仲間たちとともに過酷な任務に挑戦する……。
ゲーム、マンガ、アニメにまたがるメディアミックスプロジェクト「Deep Insanity(ディープインサニティ)」。現在放送中のそのTVアニメ版「ディープインサニティ ザ・ロストチャイルド」でレスリーを演じる鳥海浩輔さんへのインタビューを、前後編でお届けします。
――「Deep Insanity」という作品を初めて知ったときの感想を教えてください。
鳥海 第1話の冒頭で「この新たな病魔がゆっくりと、しかし着実に人類に迫りつつあった……」というナレーションがありましたが、今の状況とリンクしてしまうような世界観でドキッとしました。でも、その状況に僕たちが慣れつつあるように、キャラクターたちにとっても、ランドルフ症候群がある世界が当たり前なんですよね。アサイラムに対しても、新任の時雨はフレッシュな反応をしていますが、レスリーたちにとっては慣れた職場も同然です。だから、ランドルフ症候群や死が当たり前となっている世界で、キャラクターたちがどう生きていくのかを描くのが本作の肝になるのかなと感じました。
――レスリーはどんな思いで役作りをしましたか?
鳥海 アフレコに入る前の段階では、キャラクターのイラストだけを頂いていました。つまり、レスリーのパーソナルな部分について、事前に説明はなかったんです。なんとなく、中性的なロン毛の男性かなと思いながら台本を呼んだのですが、最初のセリフで驚きました(笑)。
――第一声に驚いたファンも多いようです。
鳥海 でも、ヴェーラ隊のメンバーの誰もが、レスリーの口調を変に思っていないどころか、言及すらしないんですよね。つまり、レスリーをそのまま受け入れているわけです。演じる僕としては、レスリー本人の本質に寄り添って、ナチュラルな女性を演じているつもりで演技しています。
――レスリーの精神性を大事にしているのですね。
鳥海 そうです。レスリーは、隊の副隊長として部隊の中で、おそらく年齢がいちばん上。だからか、セリフの端々に母性のようなものを感じますし、そこがレスリーのアイデンティティーだと思うんです。そこからにじみ出る部分が口調とあいまって、“お母さん”っぽいと言われることは多いですね(笑)。
――回を重ねるごとに、レスリーの人間性が明らかになってきました。
鳥海 第1話では、時雨がヴェーラ隊に参加して初めての戦闘をするまでがメインでした。そのため、上官としてのセリフが主であった印象です。そこから第2話以降、時雨やメンバーとの関わり合いのなかで、レスリーのキャラクター性をより深く理解していきました。生死をかける場にいるアサイラムや、日常のなかでメンバーと軽口を叩く場面などたくさんのレスリーに出会いましたが、みんなのお母さんであり、お姉さんであり、人生の先輩であり、本当にいろいろな面をもったキャラクターだなと実感しました。
――そんなレスリーを演じる鳥海さんから見て、時雨はどんな人物だと感じますか?
鳥海 当初は、普通の子が「ヒーローになりたい」というあこがれだけで大変なところに来てしまったなという感じでした。そのなかで、自分で自分の道を切り開こうとする姿は、主人公らしい人物だなと感じます。ヴェーラから特殊な任務を托されたときも、迷いながらも受け入れるという、勇敢な結論をくだしました。芯が強く、どんなときも前に進んでいこうとする姿は好ましいですね。レスリーとしても、そんな時雨を高く評価しているように感じます。
【取材・文:星政明】