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地球を覆う感染症の恐怖。ランドルフ症候群――発症者は昏睡しつづけ、やがて衰弱してやがて死に至ります。現在、治療方法がいっさい存在しない恐怖の病の原因は、南極に出現した巨大地下世界「アサイラム」にあると考えられていた。そこに広がるのは人間に襲いかかる異形の生物群の姿と、未知の資源。その資源を求める組織「アンタークティカ・フロント」ヴェーラ隊に配属された時雨・ダニエル・魁は、仲間たちとともに過酷な任務に挑戦する……。
ゲーム、マンガ 、アニメにまたがるメディアミックスプロジェクト「Deep Insanity(ディープインサニティ)」。現在放送中のそのTVアニメ版「ディープインサニティ ザ・ロストチャイルド」のレスリー役を務める鳥海浩輔さんへのインタビュー。後編では最期を迎えたレスリーへの思いなどをうかがいました。
――謎が多い隊長のヴェーラですが、どんな人物であると感じますか?
鳥海 第7話でようやくメンバーの先頭に立ってアサイラムへと降りたヴェーラですが、パーソナルな部分は不明なままで、過去についても写真があるだけです。正直、僕にもヴェーラのことはよくわからないですね(笑)。ただ、レスリーとしてヴェーラに接するときは、彼女に対して危うさを感じています。多くを語らず、いつも先を見据えて気持ちを張り詰めさせているヴェーラに対して、声にこそしませんが「そんなにがんばりすぎちゃって大丈夫?」と気に掛けているんです。だからこそ、おちゃらけてみたり、明るく憎まれ口を叩いたりしているのかな。例えるなら、極めてうすいナイフのように、鋭利さと脆さを同時に抱えるのがヴェーラです。
――2人の会話の雰囲気もほかのメンバーとは一線を画していますね。
鳥海 お互いに本質を言及しないので、「言わなくてもわかるでしょ」というようなやり取りですよね。そういう意味では、ほかのメンバーと比べて、余韻のあるおしゃれな会話でした。
――エイデンとの関係性についてはいかがでしょうか。
鳥海 過去の写真や、エイデンの言った「エクス・ボーイフレンド」というセリフからもあるように、かつては浅からぬ縁があったように思えます。また、時雨に対して言った「死んでも構わない、と思っていた者はここを去った」人物がエイデンであったことからも、深い影響をうけていると想像できます。でも、レスリーは、そんな過去を振り切って、純粋に排除すべきものとしてエイデンを捉えていますね。レスリーは、副隊長としてヴェーラ隊のメンバーを率いる立場にあり、同時に彼らを「死なせたくない」と考え、エイデンと対峙します。一方で、エイデンも、何らかの目的でアンタークティカ・フロントと袂を分け、レスリーを敵として扱っています。情に流されず、自分の信念に沿って行動できる、彼らの強さを感じますね。
――本作を演じていて、印象的に残っているシーンはありますか?
鳥海 いちばん会話をする機会の多い時雨とのシーンは、よく覚えていますね。ヴェーラ隊の実戦部隊のトップとして時雨を教え導き、成長を見守ってきましたから。そんな時雨が、レスリーの教えや思いをどう受け止め、どう受け継いでくれるのかということには興味があります。
――第7話の冒頭で、レスリーが命を落としていたことが明らかになりましたが……。
鳥海 アフレコに入る段階から、レスリーは物語の途中でリタイアするとは聞いていました。どんな最期になるのかは聞いていなかったのですが、なんとなく時雨やヴェーラなど仲間をかばって華々しく命を落とすのかなと想像していました。そうしたら、思ったよりあっさりとしていて(笑)。第6話が終わった後、いっしょにブースにいた下野さんと「もしかして生きているんじゃ……」と話していましたが、その希望はあっさりと打ち砕かれました。最後の「アンタたち……ヴェーラを……」という言葉は、残されたヴェーラ隊のメンバーを思いやる発言で、レスリーらしい最期だったなと思います。
――要を失ったヴェーラ隊は、今後どうなると予想をしていますか?
鳥海 レスリーの死をきっかけに、メンバーはもう一段階成長してくれるはずだと期待しています。特に、レスリーが目を掛けていた時雨にかける期待が大きいのは、先ほども言ったとおりです。心配なのはヴェーラですよね。いちばん信頼しているレスリーという人物がいなくなってしまいましたから。ヴェーラが自分の隊の中でどう立ち振る舞うのか、また、レスリーの代わりになるような人物が今後出てくるのか心配です。
――そんなヴェーラ隊はどんなチームだと感じていますか?
鳥海 昭和の家族みたいですね。お父さんは仕事ばかりして、帰ってきても新聞を読みながら、黙ってお酒を飲んでいる。その場を肝っ玉母さんが明るくして、自由奔放な子どもたちを叱ったり、褒めたりして育てる。ヴェーラがお父さん、レスリーがお母さん、その他のメンバーが子どもたちとするとしっくりきます(笑)。昔を題材にしたドラマやコントで見てきた家庭のような、まとまっていないようで意外とうまくまわっているチームですね。
――今後の見どころを教えてください。
鳥海 僕も今後、物語がどう展開するのかは詳しく聞いていないので、ファンの皆さんといっしょに楽しんでいきたいと思います。謎がどう解決するのか、あるいは謎のままゲームへと続いていくのか、クライマックスに向けてますます加速する物語とキャラクターたちのをお楽しみください!
【取材・文:星政明】