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ベテラン声優が初めての落語!「ONE PIECE」ウソップ役や「コナン」工藤新一役の山口勝平さんの稽古場を濃密レポ

アニメ「昭和元禄落語心中」のテレビ放送にあわせてスタートしたイベント「声優落語天狗連」が、ついに第10回の節目を迎えることに。名物の、声優が落語に初挑戦するコーナー「声優チャレンジ」に登場するのは、ベテラン声優・山口勝平さん。山口さんといえば、「名探偵コナン」の工藤新一役や「ONE PIECE」のウソップ役、そして「犬夜叉」の犬夜叉役など、長きに渡って声優業界で活躍し続けている声優です。そこで今回は、山口さんが落語にどう挑んでいるのかを探るべく、稽古場を訪れました。

山口さんが挑戦する噺「粗忽長屋」(そこつながや)に稽古をつけるのは、同イベントで多くの声優弟子たちの稽古を行なってきた立川志ら乃師匠。何年もかけて芸を磨いていくプロの噺家に対して、山口さんが本番までに受ける稽古はわずか6回で、今回はその5回目だそう。

落語は、台本を手にセリフを喋るアニメとも、相手に対してセリフを喋る舞台とも違って、台本をすべて1人で覚えるところから始まります。山口さんは、落語口演が決まった時は台本が覚えられるかどうか不安だったそうですが、1回目の稽古にはすべての台本を覚えて臨んだとか。そのため、この日の稽古は演出をつけていく段階に。しかし、稽古時間はわずか1時間。軽い会話の後、すぐに稽古へ突入します。

「粗忽長屋」とは、八五郎や熊五郎など複数の人物が登場する噺。浅草観音に来た八五郎は道端に人だかりを見つけ、身元不明の行き倒れがいることを知ります。その顔を見た八五郎は、行き倒れの知り合いを探す役人たちに「同じ長屋の熊五郎だ」「それを確かめるために、これから熊五郎本人を呼んでくる」と言い残し、長屋に戻って熊五郎を連れてきます。浅草観音に戻った2人は“熊五郎の死体”を抱き起こし、2人を引き止めようとする役人たちと押し問答しながら運び去ろうとします。

行き倒れが熊五郎だと言って引かない八五郎や、そんなことはないと言いながら八五郎に説得されてしまう熊五郎、そんな2人に呆れる役人…と、噺の中に生きる人たちに息を吹き込んでいく山口さん。あらゆる作品で“人”を知り尽くしている山口さんが、表情を変えたり、左右細やかに首を振って人たちの会話を表現すると、浅草の賑やかな街並みが頭の中に広がるようです。さらに特筆すべきは、その熱量の高さ。熊五郎たちと役人との押し問答では、座布団から体がはみ出るほど体を揺らし、ただごとではないその様子に見ているほうも息をのみます。

タオルで汗をぬぐうほど、熱さたっぷりの高座を終えた山口さんに、今度は立川師匠が稽古をつけていく番。1つ1つ、具体的に話し方や体の動かし方についてレクチャーしていく中で印象に残ったのは、「最初の時点で、お客に、熊五郎がまともな人なんだと思わせたい」という話でした。「粗忽長屋」は、後半に向けて“ちょっとおかしいな”という流れになっていくのですが、それを伝えるには、人が“まとも”でないといけない、とのこと。アニメであれば、絵や音楽が話の筋を説明してくれますが、落語では、人物像や場所、その場の空気感までを噺家が伝えていくため、首の振り方ひとつ、笑い声のあげ方ひとつによって、物語の受け止め方が変わってきます。

また、口演ではお客の目線が演者1人に注がれます。そこで大事なのが、師匠曰く「お客に息継ぎのタイミングを与えること」。夢中で噺を聞いているお客は、演者と同じ息継ぎになることが多く、演者があまり早口では息が上がってしまいます。そのため、ゆっくり話すことや、ところどころに長めの“間”を入れることで、お客は深い呼吸を挟み、より噺に集中して楽しむことができる、というのが師匠の指導。これは、むずかしい技術でもあるそうですが、すでに噺の筋書きを十分に理解している山口さんだからこそ、次に進めるステップだといえそうです。

正座でメモを取りながら師匠の指導を熱心に聞く…と真剣そのものの稽古ですが、師匠がお手本の合間に挟む“たとえ話”に笑いが起きることも。わずか1時間でしたが、覚えきれないほどのレクチャーが詰め込まれた濃密な時間に。山口さんはこの稽古の録画を持ち帰り、ご自分での予習・復習も欠かさないそうです。

山口さんの、芸への真摯な姿勢や人への探究心が詰まった「粗忽長屋」。残り1回の稽古でさらにブラッシュアップされ、山口勝平さんにしかできない、しかも、ただ一度の“初めての高座”として、見逃せない口演となりそうです。山口さんのお人柄に触れたい人も、山口さんが演じるキャラクターが好きな人にも、期待が高まるこの機会をお見逃しなく。

5月6日(土)のイベントでは、山口さんによる声優落語チャレンジのほかに、イベントMC・サンキュータツオさんと吉田尚記アナによるアニメ&落語談義や、春風亭昇々さんによるアニメ「昭和元禄落語心中」劇中に登場した噺の口演も。また、同日に開催される、仲村宗悟さん、高塚智人さん、中島ヨシキさん、そして立川志ら乃師匠が口演する第一部「声優落語天狗連 ver.立川志ら乃と愉快な声優たち」もチェックです。【取材・文=麻布たぬ】

■第一部「声優落語天狗連 ver.立川志ら乃と愉快な声優たち」
日程  :5月6日(土)開場12:30・開演13:00
会場  :浜離宮朝日ホール 小ホール
価格  :4000円
出演  :立川志ら乃・仲村宗悟・高塚智人・中島ヨシキ
内容  :出演者による口演&トーク

■第二部「声優落語天狗連 第十回」
日程  :5月6日(土)開場16:30・開演17:00
会場  :浜離宮朝日ホール 小ホール
価格  :4000円
出演  :サンキュータツオ・吉田尚記アナ(ニッポン放送)・山口勝平・春風亭昇々
内容  :アニメ&落語談義(サンキュータツオ&吉田尚記)・声優落語チャレンジ(山口勝平)・口演(春風亭昇々)

【第二部 チケット販売情報】
抽選受付:4月30日(日)23:59まで
一般発売:5月3日(水)21:00〜5月5日(金)18:00(第二部のみ・先着順) ※カード決済/famiポート限定

リンク:アニメ「昭和元禄落語心中」公式サイト
    チケット予約(イープラス)
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