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二万年後の地球を舞台に描かれるゴジラとそれに抗う人類の物語——。通称“アニゴジ”三部作の最終章となる「GODZILLA 星を喰う者」が、ついに11月9日(金)に公開される。ゴジラ作品の歴史に衝撃の新解釈を加えた本作、ラストでどんな興奮が待ち受けるのか?
ゴジラに敗れ、絶望感とともに始まる本章。そこに重要なポジションで登場するマイナ役の上田麗奈さんが語ってくれました。
――マイナは二章から登場していましたが、最終章では重要なポジションとなっています。
上田:まさか、こんな展開になるとは……(笑)。主人公であるハルオに、さらに特別な想いを抱くようになっていくんです。
――ラストシーンは…衝撃でした。
上田:いやもう、マイナとしては……ではないな、自分としても「おいおい!」って突っ込みたくなるような(笑)。でも、ハルオらしいなと思いますし、そんなハルオだからマイナは好きになったのかもしれません。
――以前、「二章は一章から想像つかないような内容」と語っていましたが、最終章もまた二章からは想像できない仕上がりに。ハルオVSメトフィエスとなるわけですが……。
上田:ゴジラという存在に対してどうするのが正しいのか、とても難しいですけど、同じ人間として考えたいテーマでもあって。どちらが悪者ということではなく、それぞれに守りたいものがあって、思い描く「今」や「未来」がある。だから、ハルオの気持ちもメトフィエスの気持ちもわかるんですよね。遠い未来ではなく、自分たちの身近にも置き換えられるような話なのかなと、率直にそう思いました。
――最終章でも引き続き、“人がなすべきこととは”というテーマが語られるわけですね。
上田:そうですね。ビルサルド人やエクシフの考えにも触れながら、人間として「今」を守ることを選んできたハルオが、どういう考えに行き着くのか……。それが最終章でいちばん見てほしいと思うところです。
――もし、上田さんがこの絶望の世界に生き残ってしまったら、どう動くと思いますか?
上田:私だったら……ゴジラには抗えない、という気持ちになっちゃうと思います。だって、こわいですしね。ハルオのように挑み続けるエネルギーはないかもしれない。挑むことがいちばん苦しいと思うので(笑)。
――収録はプレスコで行われたそうですね。
上田:本編を録り終えてから、追録が何回かあったんですけど、そのたびにシナリオがちょっと変わっているという(笑)。でも、骨組みは変わらなくて、そこに肉付けをしていく感じでした。この脚本で勝負するんだっていうスタッフのみなさんの自信を感じました。
――プレスコということもあって、役者の声によってキャラクターのイメージを変えることもあったと聞きました。
上田:マイナもけっこう変わったみたいです。私も、他の方の演技を聞いて絵が浮かぶようなことがたくさんあったので、スタッフさんの気持ちがよくわかるなと。
――実際に仕上がりを見たときの印象は?
上田:収録のときから、スタッフのみなさんが作りたいものが明確に感じられていたので、それがちゃんとフィルムにも現れていて感動しましたし、すごい作品に携わっているんだなと、あらためて実感しました。想像以上だったのは、ゴジラやギドラの圧倒的な迫力。ギドラがこんなに美しく描かれるなんて……。ゴジラもすごくかっこよくて魅力的ですよね。これは絶対に劇場で見てほしい! って思いました。
――マイナはフツアという種族で卵を守っている巫女。最終章でマイナに注目してほしいところは?
上田:最終章では、長い間ゴジラから身を守ってきたフツアたちが、危なっかしいハルオたちに介入していきます。マイナもまた、ハルオへの気持ちを行動に移していくんですよね。テレパシーではなく人の言葉を話すようになるので、マイナの気持ちをより強く感じてもらえると思います。マイナって、不器用だけど、しっかりと軸になる気持ちを持ってるんです。思っていることすべてを表に出すタイプではないけど、マイナが心に秘めた気持ちをしっかりと信じて演じることができました。
――二章では区別がつきにくかった双子の妹・ミアナとの違いも、最終章でははっきりと見えてきますね。
上田:もともと、活発で好奇心旺盛なマイナに対して、ミアナは冷静で警戒心が強い性格。性格は違うけどハルオには同じように接してきたから、違った形で心を開いていくことに最初は驚きました。責任感が強くて、決して楽観的ではないからこそ、なんだか危なっかしいハルオに惹かれたのかもしれません。
――最終章全体を通して、印象に残っているシーンは?
上田:言えないことも多いんですけど(笑)。ひとつは、モスラが出てくるシーン。一瞬ですけど、その登場の仕方がすごく印象的でした。監督が「人間のそれぞれの想いの象徴としてゴジラやモスラが出てくる」とおっしゃっていたんですけど、モスラの姿にマイナやミアナの気持ちが現れているような気がして。マイナへの思い入れが強い自分としてはうれしかったです。
――本作で“こわいもの”の対象として描かれているゴジラですが、上田さんにとって“こわいもの”とは?
上田:おばけ……もこわいんですけど、いちばんこわいのは、自分に植えつけられた感覚、ですね。24年間生きてきて、経験してきたものもたくさんあるはずなのに、もともと持っていた性質や性格はどうしても変えられないような気がして。変えたいと思ったときに、なかなか変えられないものって、こわいですよね(笑)。
――それで失敗したこともある、ということ?
上田:お仕事としては自分のその性格が魅力となるときもありますが…、毎回同じように後悔することが多くて(笑)。変わりたいなあって。
――変われるとしたらどんな風に?
上田:自分が「夜」みたいな存在だとしたら、「朝」になりたい。昼はたぶん真逆すぎるんだけど。以前、太平洋に広がる空を見ていたとき、夜は波の音がこわく感じられたのに、朝日はすごくあったかくて気持ちがよくて。爽やかで優しくて、恐怖感がひとつもなくて……。「変えられない自分」は、決して抗えない恐怖ですね。でも、だからこそ人間なのかなって感じる客観的な自分もいます(笑)。
――抗えないものこそが恐怖であり、人間たるもの、その恐怖と一生つきあっていくしかないのでしょうか。深いですね……。上田さん、ありがとうございました!
取材・文:吉田有希