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好評放送中のTVアニメ「彼方のアストラ」をさらに盛り上げるための、キャスト&スタッフによるリレー連載がスタート。
第6回のゲストは、ユンファ役の早見沙織さんです。劇的な変化を遂げたユンファと第4話の挿入歌「Star of Hope」のレコーディング秘話を語っていただきました。
――ユンファの第一印象はいかがでしたか。
早見 長い前髪と眼鏡で顔が隠れていて、表情から感情が読み取れない子なので、他人と距離を置きたがる、あまり目立ちたがらないタイプなのかなと思いました。実際、第1話のアフレコでは「ユンファは冷たい雰囲気で、感じが悪いぐらいで大丈夫です」というディレクションを音響監督さんからいただいて。その認識は間違っていなかったんだなとホッとしました。
あとは、キャスト全員にあったディレクションですが、キャスト陣がわりと同世代で気さくな方が多い現場なので、第1話からキャラクター同士の距離感が意外と近い感じのお芝居になっていたんです。それもあって、「これから仲良くなっていくので、最初はお互いを拒絶するぐらいでいいですよ」というディレクションがありました。
――特に序盤ですが、ユンファは本当に台詞が少なかったですよね。
早見 本当に喋っていませんでしたね。アドリブすら全然なかったんです。たとえば、メインで喋っている人の後ろでお喋りするアドリブは、音響監督さんが「誰々さんと誰々さんはアドリブでお願いします」と丁寧に説明してくださるんですが、序盤はユンファとウルガーはほとんど呼ばれませんでした。それだけ他のメンバーと距離感があったということなんでしょうね。
謎の球体に飲み込まれるときも、みんな「わー!」とか「キャー!」というアドリブを入れるのに、ユンファだけは息を呑むような引きのリアクションで。あまり声を前に出さないようにしていました。
――そのユンファも第4話で大きなターニングポイントを迎えました。
早見 これまでじわじわと溜め込んできたものが、ついに爆発したのが第4話だったのかなと思います。ユンファは幼少の頃から前に出るなという教育のもとに育ってきたので、人前にぐいぐい出ていくことをよしとせず、自分で自分を縛ってきました。B5班のメンバーとも深く関わろうとしませんでしたが、私はすごくつらかったんじゃないかなと思うんです。
何もできない劣等感もあったでしょうし、一線を画しながらもこの人たちと何かをしたい、役に立ちたいというジレンマがあったと思うので。もし本当にどうでもよかったら、アストラ号から逃げ出したりしないと思うんです。もどかしい思いをしていたから、あの場から逃げてしまった。ようやくユンファの内面に触れられた話数でしたね。
――カナタとのやりとりでは様々な思いを吐露していましたね。
早見 素敵なシーンでした! 自宅でアフレコ用のビデオをチェックしたときもいいシーンだなと思ったんですが、実際にカナタ役の細谷(佳正)さんと掛け合ったら、本当に心が揺さぶられるような気持ちになったんです。熱いけれど、温かく心をほぐしてくれるような言葉がとても心地良くて。だから、ユンファも自分を解放してみようと決意できたのかなと思いました。
――ちなみに、母親のルーシー・ラム役が高垣彩陽さんであることは収録前からご存じでしたか。
早見 知ったのは収録の一週間前ぐらいですね。彩陽さんの娘役ができて光栄だなと思いました。実は、彩陽さんから収録の前日にLINEが来たんです。「はやみんのお母さん役をやることになったよ」という朗らかなメッセージだったんですが、実際、お母さんはあの冷たい態度という(笑)。さすが彩陽さんだなと思いましたし、同時にユンファは大変だっただろうなとつらい気持ちになりましたね。
――また、第4話は挿入歌「Star of Hope」を歌唱されました。
早見 ユンファ役のお話をいただいたときに歌があると伺ったんですが、原作を読ませていただいたらとても大事なシーンで流れる歌だったので、急にプレッシャーを感じました。
――楽曲の印象はいかがでしたか。
早見 すごく感動しました。超大作のSF映画で流れていそうな壮大な音楽で。メロディの流れもどこかミュージカルみたいなんです。普通のキャラクターソングとは違うなと、身が引き締まる思いでした。
――素晴らしい歌唱だと思いました。
早見 ありがとうございます! 第4話の映像を見ながら歌えたのが心強かったですね。レコーディングスタジオに安藤(正臣)監督やプロデューサーさんも来てくださって、監督から「冒頭は意を決しながらも素朴にぎこちなく歌っているけれど、Bメロぐらいから心が乗ってきて、サビで視界が広がりステージに立っているイメージになるんです」と、映像と歌の説明をいただいたんです。どちらも劇的な展開を見せるので、歌い方にもドラマ性を持たせられたらいいなと思いながら歌いました。
――アフレコをしながら歌っているみたいですね。
早見 まさにそんな感じでした。もし映像を見ずに歌だけをレコーディングしていたら、歌い出しも最初からメロディをなぞるように歌っていたかもしれないですね。映像があったからこそ、喋っているようにあまり音を伸ばさず、メロディを置いていくイメージができたんだと思います。
――とても難しそうな楽曲ですが、大変なところはなかったですか。
早見 難しいポイントだらけでした。サビ前とサビからで楽曲の印象がガラリと変わるので、その変化を出すためにBメロで助走を付けるんですが、サビもまた二段階になっているんです。助走とサビの頭で盛り上げすぎると、今度はサビの二段階目で息切れしてしまうので、いい案配を探るのが難しくて。最初はレガートで滑らかに歌いながら、サビの後半の盛り上がりはリズムを刻むことを意識して、一歩一歩踏み出していくような音の乗せ方を意識するようにしました。
――そして、第5話以降のユンファですが、髪の毛も短くなり、どこか明るい印象になりました。
早見 すごくかわいいです! イメージがガラリと変わって、マイク前に立ったとき自分から出る声の調子も全然違うなと感じました。完全にみんなの仲間入りを果たしたぞという気持ちになりましたし、ワクワクしながら第5話の収録に臨んだんですが……。ポジティブさを出し過ぎてしまったみたいで、音響監督さんから「明るくはなったけれど、ユンファはまだユンファです」というリテイクをいただいて。キトリーのような会話のテンポよりずっと遅く、もう少しタメがあるイメージで臨むようにしました。
――今後のユンファは積極的にB5班のメンバーに関わっていくのでしょうか。
早見 そうですね。私もメンバーの一員なんだという意志が芽生えつつあります。嬉しかったのは、アドリブも入れられるようになったことですね。そのアドリブの入れ方も面白くて。船が揺れたり、緊急事態があったりすると、みんな「うわー!」って叫ぶんですが、ユンファも同じようにやろうとしたら、「ユンファはもっと鈍くさい感じでお願いします」というディレクションをいただいたんです(笑)。それを聞いて、「ユンファ、なんてかわいいんだ!」って思いました。
――鈍くさいんですね(笑)。
早見 そうなんです。スタイリッシュに行動できないみたいです。たとえば転ぶときは普通「うっ」って声が漏れたりしますが、ユンファは「あわわわ」みたいな感じで。新たな発見でした。今後はぜひユンファのアドリブにも注目していただけたら嬉しいです。
――では最後に、物語の注目ポイントについても聞かせていただけますか。
早見 これからは怒濤の展開が続きます。B5班のメンバーそれぞれにどんな過去があるのかも明らかになっていきますし、もちろん刺客の謎も深まっていきます。ぜひ最後まで謎解きを楽しんでいただけたら嬉しいです。
【取材・文:岩倉大輔】