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TVアニメ「彼方のアストラ」を盛り上げるためのキャスト&スタッフによるリレー連載。第7回のゲストは、ウルガー役の内山昂輝さんとルカ役の松田利冴さんです。複雑な過去が明らかになった二人ですが、これまでどう演じてきたのか、たっぷり語ってもらいました。
――まずはウルガーについて、内山さんはどのようなキャラクターだと捉えていますか。
内山 この作品はわりと賑やかなシーンが多いんですが、ウルガーは基本的には無口でクールなので、みんなとは一歩離れた場所で静かにしていることが多いです。第6話でのエピソードを通してやっとみんなとの距離が近づいたのか、初めて「アイ・イェー」と言ったのが印象的でした。それまではみんなが一緒に掛け声を言っていても、全然参加していなかったので。
松田 そういえば、台本に「一同」と書かれていても、だいたいウルガーさんとユンファさんは別でしたよね。特にウルガーさんは「うるさい。黙れ」くらいしか言っていなかった気がします(笑)。
――松田さんから見たウルガーの印象はどうでしたか?
松田 見た目的な印象でいうと、前髪が顔に掛かっていてくすぐったくないのかなと(笑)。
内山 確かに邪魔になりそうですけどね(笑)。帽子も被っていますし。
松田 私には絶対にできない髪型だと思いました! あとは原作を読ませていただいたときは、やっぱり何を考えているのか全然読めない人だなという印象で、どういう人物なのか明らかになっていくのが楽しみでした。
――ルカについてはどのような人物だと捉えていますか。
松田 男の子と女の子としての両方の感情を持っている子ですが、現状では自分を男の子だと認識していることもあって、基本的にはすごくやんちゃです。己の感情に素直で、誰かにちょっかいを出したいと思ったらちょっかいを出すし、謎の球体だろうが触りたいと思ったら触りにいくという、思うがままに行動するタイプですね。誰かにツッコミを入れるときも、引いてツッコミを入れるより、感情を出してツッコミを入れることが多い印象があります。
内山 わりと、ずけずけと物を言うタイプですよね。
松田 確かに、ユンファさんに対してもさほど仲良くないのに、「すごい食べそうだし」なんって言っちゃいますからね。
内山 でも、そういう表面的な明るさからは想像できない複雑な背景を持ったキャラクターで、性別のことや家庭の事情を知ったときはすごく驚きました。同時に、演じるのが難しそうだなと。つまり、考え出すとキリがないキャラクターだと思うんです。いわゆる少年キャラクターなら、ストレートに演じるアイデアが真っ先に浮かぶけど、ルカの場合「こういう性質があるから」と複雑な背景を考え出してしまうと、それをどこまで反映させるとか迷ってしまいそうで。
松田 確かに、第1話は一番迷いました! 肉体的にも精神的にも男女両方の要素を持っていることはわかっていたので、だったら間を取っていこうと考えていたんですが、最初に「もっと男の子でいいですよ」というディレクションをいただいたんです。確かにこの段階ではそうだなと男の子側に振り切るようにしました。
内山 どこかに先を見越した工夫を忍び込ませたくなりますよね。それはこの作品に限ったことではないんですが、キャラクターに複雑な背景や過去があると、先の展開に繋がる要素を序盤からそれとなく紛れ込ませておくべきかどうか、ということについてよく話し合われます。ただ、それをやりだすと「じゃあ、あれもこれも」とキリがなくなりますし、作品やキャラクターによっては、そういうことはしないほうがベターである場合もよくあるので、どこまで先を意識するか、もっと言えば原作の展開などもどこまで知っておくべきかなど、すごく悩ましいですね。
――判断がすごく難しそうです。
内山 だから、「こうしてください」と監督や音響監督がきっちり方針を決めてくださるとすごく演じやすくなります。演じる側は考え出すと頭でっかちになって、全部の台詞に含みを持たせてしまいがちです。時々、それは作品全体にとってはノイズになる。そういう意味で、今回の細谷(佳正)君のやり方はありかもしれません。彼は毎週収録する話数の内容までしか原作を読まないようにしているそうですが、総合的に判断すると正しいし、変に含みを持たせない意味でも有効だと思いました。
松田 私もディレクションをいただいて方向性が定まって、性自認は男性だけど松田という女性から出る声で話しているというだけで、もうルカの複雑な部分はあらわれているのかなと思うようになりました。
――ウルガーの役作りはいかがでしたか?
内山 原作は全部読んだので、一応ウルガーの過去や兄との関係は頭の片隅に入れておきました。ただ、今お話ししたように、兄の仇を取るとかジャーナリストを目指しているとか先々の要素の風味を最初から入れてしまうと邪魔になりうると思って、なるべく状況に合わせてシンプルにやっていこうと考えました。
――そして、放送が終わったばかりの第6話ですが、ここでウルガーとルカの背景が明らかになりました。
松田 いつものグイグイ迫っていくルカとも違うし、いつもの淡々としたウルガーさんでもなかったので、とても新鮮でした。
内山 ウルガーがあそこまで声を荒げることなんてなかったですからね。新たな一面が見えた話数でした。
松田 ウルガーさんがどれぐらいの怒りや悲しみをぶつけてくるのか、演じるのも楽しみでした。「彼方のアストラ」の面白いところは、毎回こちらが準備したり想定したりしたものを軽く超えるような掛け合いがあって、現場でどんどん新しいアイデアが生まれるところなんです。今回もウルガーさんの想いがびしびし伝わってきたので、その感情に乗っていく気持ちでアフレコに臨みました。
内山 でも、難しかったですね。銃を突きつけた状態で、過去を回想しながら心情を吐露する流れは。観ている人にウルガーの過去を伝える回想シーンだから説明ゼリフが多いけど、物語内の現在の状況としては、ウルガーがその場でみんなに語っているはずだから、その雰囲気も乗せないと嘘っぽくなってしまう。ただのナレーションにしない、そのバランスを探るのに苦労しました。
――第6話は、ウルガーの感情の起伏が大きかったですよね。
内山 ウルガーには兄を亡くしたという過去があり、自分なりの復讐を虎視眈々と計画していたという背景があった。これまでの積み重ねてきた思いがついに爆発するシーンでしたが、爆発させることよりもメリハリをつけることに気をつかいました。怒り一辺倒になると、ウルガーの繊細な感情が見えなくなってしまうのではないかと思ったんです。ただ、兄のことを思い出したり、ルカとの会話で兄の言葉がフラッシュバックしたりという、原作からある流れのおかげで良い具合のバランスに持っていけたと思いますし、演じてみて改めて巧みな構成だと感じました。
――一方、Bパートではルカも珍しく声を荒げるシーンがありました。
松田 「うぜえんだよ」ですね! 実は何度かリテイクのあった大変なシーンでした。でも、結果的に啖呵を切るような感じになって、ウルガーさんの不意は突けたかなと思います(笑)。Bパートはルカがウルガーさんをからかうシーンもあって、彼がすごくかわいらしい方だとわかったので、これからもルカとしてウルガーさんの魅力を引き出していけたらなと思います!
――では、今後の見どころについても聞かせていただけますか。
松田 ルカとしては秘めていたことが明らかになり、今まで以上に自由に行動するんじゃないかなと思います。性格そのものが変わったわけではないですが、見る側の捉え方がだいぶ変化したと思うので、新鮮な気持ちで見ていただけるはずです。
内山 ウルガーは自分の背景や心情、未来への決意を語って、これまでよりはみんなと打ち解けられたと思うので、これから他のメンバーたちとどう協力していくのか注目していただきたいですし、みんなが無事に旅を終えられるか最後まで見守っていただけたら嬉しいです。
【取材・文:岩倉大輔】