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動物たちが世知辛い世間のサラリーマンとして大奮闘…と思いきや、暴言と奇行で日本人的社会を突破する!? 10月6日(日)からスタートした話題のTVアニメ『アフリカのサラリーマン』の見どころをWebNewtypeでは連載でお届けします。第1弾は、ライオン役の大塚明夫さんにインタビューしました。
――昨日、第1話が放送されて、衝撃を受けている方は多いと想像しております。原作コミックの面白さがそのまま映像になっていましたね。
大塚:そうですね。あの衝撃的な内容を弱めてしまうと、この作品の良さが薄まってしまうので。そのあたりが戦いになる作品だと思います。そもそも、この作品をアニメ化しようと思った試みがいいですよね。よくアニメ化のゴーサインが出たなとは思いますが(笑)。このシーンは世間的にマズイからやめておこうとか、そういう忖度をせずにどこまで放送していけるのか、注目が集まるんじゃないですか(笑)。
――3人の中心キャラクター(ライオン・トカゲ・オオハシ)の中で、ライオン先輩は上司の立場です。最初にどんな印象を持ちましたか?
大塚:ライオンではあるんだけども、おとなしい普通の人。だから、ライオンであることを意識しないほうがいいんじゃないかと。優しくて、ちょっとボーッとしていて、もし人間だったら珍しいくらいイイやつ。処世術の一つである“鈍感力”も高いんですよ、ライオンは。
――処世術は、サラリーマンにとって大事な要素かもしれません…。
大塚:だからといって、ライオンの場合は自分が得をしようとしているわけではない。なりゆきで上司になっただけで、出世したいとか、給料を増やしたいとか、あんまり考えてないんでしょうね。
――もっとイカツイのかと思いきや、穏やかな演技に驚きです。
大塚:オオハシはあの通りハチャメチャだし、トカゲ君は勤勉で、強面で乱暴なキャラクターは他にもいるし。全体を考えたときに、あのポジションが空いているんですよね。先輩なのに人の良さで巻き込まれていくっていうのが、いちばんいい場所だろうなと。
――いざアフレコで、トカゲ役の津田健次郎さん、オオハシ役の下野紘さんと合わせてみて、いかがでしたか?
大塚:楽しかったですよ! ケン坊(津田健次郎)もヒロくん(下野紘)も腕がいいんでね。お互いに探りながら、どのポジションに立てばいいのかを自然とわかりあえる。「こうしよう」っていう話はほとんどしません。リズムとコードだけが決まっている音楽のセッションみたいに、「どうやるんだろう」と見ていて、「いいのかな」と思ったら入ってみる。そういう面白さが、ベテランと若手の違いじゃないかなぁ。2人が僕に、何もしないでいいようにしてくれる(笑)。
――素晴らしいです(笑)。どのシーンも強烈なインパクトのある作品ですが、大塚さんの印象に残っているシーンとは?
大塚:ラーテルががんばってくれましたね。たっつん(鈴木達央)が、消費カロリーの高い芝居を。ラーテルって自分より明らかに強そうな動物にも真っ向勝負を挑む動物なんだけど、「ここに蜂蜜がありますよ」って教えてくれるミツオシエという鳥だけは大事にしているらしくて。その鳥が陰険でね、いつも暴力で脅されているものだから、「バカ野郎、早く死ねばいいのに」なんて思ってる(笑)。その関係も面白くてね。
――今後は新たなキャラクターも続々登場し、会社の内情なども描かれていきます。どんなところが見どころになりそうですか?
大塚:僕がいちばん好きなのは、殺傷ハムスターって役。あれがどうしてハムスターで、なんでいつも包丁を振り回しているのか、よくわからなかったんだけど、木野(日菜)さんが声を入れたことで俄然面白くなっている。その化学反応みたいなのがすごいなと思ってね。結局、“性格の博覧会”みたいなことで、凶暴であったり、逆に大人しかったり、みんながそちらへ進めば進むほど、それが動物園のようになって面白い作品なんだろうなと。
――どのキャラクターもひと癖ありますね。
大塚:ライオンなんかは、たぶん無能ですよね。オオハシは無能というよりは邪魔、というかお荷物。無能でも十分お荷物だけど、人の邪魔になるっていう意味ではマイナスになるっていう。でも仕事じゃないものに対するバイタリティがすごい。現に、この作品はオオハシが引っ張っていますからね。オオハシを演じるヒロくんの名前がクレジットの最初にくるべきじゃないかと、いつも思うんですけど。
――ライオンもいなくてはならないキャラクターですから…。
大塚:でも主役っていうのは、物語をひっぱっていく人だから。ただ誰が主役になるかっていうのも難しくてね、この作品は。いろんなやつがいるってだけでドラマが生まれて、そのドラマ自体が主役。誰目線でも見られるし。イケメン作品のかっこいいキャラ勝負とは反対に、それぞれの主張をどこまでできるかっていう勝負。だから、自分がこの作品に呼ばれたのはなぜか、この中で何をすればいいのかってことに向き合わざるを得ないし、それがわかっていないとキャラクターがボケちゃうんだろうね。
――見る側も、主人公だけでなく、いろんなキャラクターの目線になって、自分の生活に重ね合わせられる、ということでしょうか。
大塚:そうでしょうね。ここに出てくるようなキャラクターが周りにいたら…いや、こんなやついねえよ!って突っ込んだりしながら(笑)。だって彼らは気楽そうだから。本当のサラリーマンがどれくらい大変なのか僕にはわかりませんが、やっぱりいろいろと気を使うんでしょうね。でも、どこかの世界にコイツらがいると思うだけで、微笑みが生まれてきたりすればいいなあと思います。
【取材・文:吉田有希】