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第5話で衝撃の展開を迎えた「デカダンス」。本作の魅力を掘り下げるリレー連載第10回では、カブラギ役・小西克幸さん、ナツメ役・楠木ともりさん、ミナト役・鳥海浩輔さん、クレナイ役・喜多村英梨さんによる座談会が実現! これまでのエピソードを振り返っていただきつつ、「新章」の見どころも語っていただきました。
――第5話までの展開をご覧になって、どんな印象をお持ちになりましたか。
小西 アフレコのときは完成した映像ではなかったので、音と色が入った映像を見たときは、想像以上にスケールが大きくてびっくりしました。デカダンスのサイズ感やギアのアクションもそうですし、物語の“引き”という意味でも続きが気になる内容で。収録は終わっているので、この先どんな映像が見られるのか楽しみです。
楠木 第5話はナツメにとっても大きな転換点になるエピソードでした。カブラギとうまく関係性を育んでいって、やっと自分でも戦えるようになったと思ったら、カブラギがどこかへ行ってしまって……。アフレコしていた頃は、「このあと、どうなるんだろう!?」ってずっと気になっていました。
鳥海 台本をいただいて初めて新しい情報を知っていくので、ゲームという設定やギアとタンカーの関係など、最初は複雑で難解なイメージが先行していたんです。でも、話数が進むにつれて世界観がクリアになっていき、ドラマも盛り上がっていくので、どんどん引き込まれていきました。あとは映像がすごいですね。
喜多村 デカダンスのスペクタクルなところもすごいですし、ギアたちの戦闘シーンもぬるぬる動いていて、劇場版かと思っちゃいますよね。物語については、私も鳥さん(鳥海)と同じように「得体が知れないけれど、とにかく壮大な物語」という印象がありました。でも、サイボーグの世界とナツメたちの現実世界の設定が明らかになり、不思議なギャップの中で人間ドラマが繰り広げられていくのが、もう“胸アツ”です(笑)。
――では、それぞれのキャラクターについても振り返っていただきたいと思います。まずはここまでのカブラギの印象はいかがでしたか。
小西 生きることを諦めていたカブラギが、ナツメに触発されてもう少し足掻いて生きてみようとなったんですが、たぶんその感覚は忘れていただけで、もともと持っていたものなんですよね。特にカブラギを含む過去のトップランカーたちって、いわば何かを欲して生きていたわけです。マイキーがリミッター解除に惹かれたように、プログラムを超える欲望があるし、だからこそ彼らはトップランカーだった。その欲を失ったカブラギがナツメに出会い、世界に抗って生きてもいいんだと気づけたのが素敵だなと思いました。
喜多村 確かに、カブ様って実はアツいものを持っていますよね。奮起してからのカブ様を見ていると、 “頑張れおじさん!”って応援したくなります。
鳥海 僕は、カブはヒロインだなと思ったんです。前しか向いていないナツメに何度も突き動かされていましたし、実は引っ張っているのはナツメなんじゃないかって。
小西 ナツメが引っ張っているというのはその通りですね。装甲を修理し続けてスクラップを待つだけだったはずが、心の奥深くにあったものを鷲掴みにされ、自分も生きてみようと立ち上がれたわけですから。
楠木 ただ、ナツメとカブラギの距離が近づいたかなと思った矢先にいなくなってしまったので、ナツメはすごくショックだったと思います……。
小西 あれだけ信頼していたのに、急に捨てられたようなものですからね。
楠木 でも、カブラギはカブラギでずっと苦しかっただろうなと思うんです。見えている世界が全然違うとわかっているのに、それを伝えられなかったわけですから。ナツメたちの生は一回限りだけど、カブラギたちの素体はいくらでも換えられることや、ガドルとの戦いはいつまでも終わらないことなど、もどかしそうなカブラギを見るのは苦しかったです。
――ナツメについてはいかがでしょうか。
楠木 勢いで突き進むところは変わらないんですが、ナツメの居場所が「憧れの戦場」から「現実の戦場」に変わったことで、心情が大きく変化したと思います。演技でもその変化を表したくて、ただ元気でまっすぐだったところから、徐々に地に足がついて落ち着いた状態になっていくようにしました。
小西 ナツメは強い女の子ですよね。表面的には折れたように見えても、決してぶれない芯を持っていて、仮に立ち止まったとしてもちゃんと進むべき方向を見つけて突っ走っていける。太陽みたいな女の子で、眩しいです。
鳥海 みんながイメージするような少年漫画の王道主人公ですよね。何か特殊な力を持っているわけではないけれど、まわりをぐいぐい引っ張っていく古きよき熱血系。見ていて気持ちいいです。
喜多村 お父さんのことってトラウマだと思うんですが、それでもめげずに戦士を目指せるのがすごいなと思いました。その時点でほかのタンカーとは違いますよね。「死にたくない」「死んでほしくない」というフェイちゃんが、スタンダードなタンカーの子として描かれているので、比べてしまうとやっぱりナツメの異質さが際立つなと感じました。
――ナツメは叫ぶことも多いですし、かなりパワフルな演技を求められるのではないですか。
楠木 そうなんです! こんなに叫ぶキャラクターを演じるのは初めてでした。今まではどちらかというときれいな感じや、かわいい感じの演技をすることが多かったので、泥臭さやアツさを意識した演技はとても新鮮です。叫んだり、戻したりするシーンは、きれいな声を意識せずかなり汚く演じています(笑)。あとは、ナツメのセリフはカブラギにダイレクトに突き刺さるセリフばかりなので、しっかりと刺さるようにセリフ一つ一つにニュアンスを込めるようにしました。
――ミナトについても聞かせていただけますでしょうか。
鳥海 ミナトはシステムに忠実なサイボーグなので、いろいろ裏があるんじゃないかなと勘ぐっていたんです。でも、職務に忠実かと思ったらカブに便宜を図ることもあって、意外な人間らしさに驚きました。現時点では敵なのか味方なのかわかりませんが、少なくともカブとは良好な関係で、ただの知り合い以上の強い繋がりがあるんだろうなと思います。演じるときも職務中とカブと会話するときで差をつけるようにしました。
喜多村 ミナトはカブ様の嫁みたいです(笑)。
小西 何かあったら二人でプライベート回線を使っていますからね。サイボーグの世界にそういうのがあるのかわかりませんが、付き合っているんじゃないかなって(笑)。それぐらいの親密さを感じるので、どんなバックグラウンドがあるのかすごく気になります。でも、よくカブラギのことを見てくれていて、ありがたいですね。
鳥海 マイペースなカブを片思いみたいに気にかけているのが面白いです。ただ、ミナトは戦場へ行こうとするカブを心配しつつも、タンカーの生死なんて別にどうなってもいいという、ある意味、サイボーグ世界の当たり前の中にいる存在なので、その態度が今後どう影響してくるのか気になるところではあります。
――クレナイの印象はいかがですか。
喜多村 クレナイはナツメの憧れの存在であり、“かの力”のエースといってもいい存在。生も死もたくさん見てきた人なので、まずはその人間性よりも、登場時点ですでに戦士として仕上がったキャラクターにしたいという気持ちで臨みました。ナツメの目指す道の先にいる目標のひとつ、その象徴であることを意識しています。ただ、カブ様に対しては残念系ということもあって、テスト収録でやりすぎちゃうことがありました(笑)。
楠木 カブラギと同じようにナツメを引っ張ってくれる人ではあるのですが、カブラギはどちらかというと見守るタイプで、ナツメがついていかないと置いて行っちゃう人なんです。でも、クレナイはうしろからそっと背中を押してくれる、精神的な部分での支えの存在という印象があって、クレナイがいなかったらここまで「戦う」ということに執着しなかったんじゃないかなと思います。
喜多村 ナツメと会話するときのクレナイって、“かの力”のエースというよりは、姉妹や兄弟のような距離感になるんです。かといって母性の人ではないので、絶対的な安心感を押しつけるわけでもない。その距離感はかなり意識しました。
楠木 同じ人間ということもあり、ナツメと見ている世界が一緒なんだなと思いました。特に言葉の選び方が人間らしいんです。第4話の「それは自分で決めたの?」というセリフは、サイボーグでは出てこない人間ならではのセリフだと思いました。
喜多村 あのシーンは、ともりちゃんがストレートにナツメの感情を表してくれたので、その二、三歩先から気持ちを汲んであげたいなという思いで言葉を投げかけました。あそこはクレナイの大人の優しさが感じられるシーンですね。
――ありがとうございました。最後に、第6話以降の見どころを教えていただけますでしょうか。
喜多村 得体の知れないシステムやその他の設定も徐々に明かされていくと思います。ただ、それ以上に人間ドラマがさらに濃くなっていくので、イチ作品ファンとしてその人間ドラマを推していきたいです。
鳥海 ここからサイボーグの世界にもスポットが当たり、新しいサイボーグもたくさん登場します。ミナトもカブラギの件でいろいろ思うことが出てくるのではないでしょうか……。
楠木 ナツメは自分で努力をしながらも、まわりの人にたくさん支えられてここまでやってきました。でもカブラギがいなくなり、ここからは自分一人で前に進んでいく期間になります。カブラギなくして、ナツメはどう成長するのか。そこを是非見ていただきたいです。カブラギには再会できるのかな……?
小西 どうなんでしょうね。一体、カブラギはどうなったのか、再びナツメに会えるのか。疑問はいっぱいあると思います。一つ言えるのは、第5話の最後にカブラギが放った「世界にバグは必要だ」というセリフが重要になってくるということですね。それと、このあと出てくるサルコジというサイボーグがいいキャラをしているので、彼に注目してください。
楠木 私もサルコジ、大好きです!(笑)
【取材・文:岩倉大輔】