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地竜との戦いを経て、シュンはクラスの英雄として称えられる一方、ユーゴーは彼に嫉妬を募らせるようになり――。
人間サイドが大きく動き出した「蜘蛛ですが、なにか?」。リレー連載第7回は、ユーゴー役の石川界人さんにお話を伺いました。自信に満ちあふれながらも空回りしてしまった彼を、どのように演じられたのでしょうか。
――第4話までのユーゴーについて、どんな印象をお持ちになりましたか。
石川 わりとよくいそうな明るい高校生だなと思います。いい部分が大きく描かれているわけでもなく、悪い部分がことさら強調されているわけでもなく。アニメだからと変にデフォルメされたキャラクターではない、現実にいる高校生をそのまま描いたような印象を受けました。僕の高校時代にも、ユーゴーのようなクラスの人気者タイプがけっこういたんですが、僕はあまり明るいタイプではなかったので、ビクビクするような気持ちで見ています(笑)。
――リレー連載第2回で、石川さんはユーゴーを“ザ・悪役”とおっしゃっていました。それがすごく印象に残っていたんですが、その印象は変わっていないですか。
石川 その認識は今も変わらないです。ユーゴーって、言ってしまえば「自分は人のことをイジるのに、自分が人にイジられるとキレるタイプ」。決して、そういうシーンがあるわけではないんですが、シュンやフェイの反応を見るとおそらくそういうタイプなんだろうなと想像できます。ただ、こういうタイプが嫌いかというと、別にそういうわけではないんです。もちろん、自分が演じているキャラクターだからという理由もありますが、自分が苦手とするタイプの人を凝縮したキャラクターなので、かえって心置きなく嫌な部分を出せるというか。そういう意味での愛はあります。
――板垣伸監督や音響監督の今泉雄一さんから何かディレクションはありましたか。
石川 特にディレクションというディレクションはなくて、わりと最初の頃から自分の考えるままに演じていますが、少し先の話数でも大きな指示はなかったです。
――監督たちが求めるものとばっちりハマっていたわけですね。ちなみに石川さんご自身は、どのようなことを意識してユーゴーを演じられているのでしょう。
石川 ユーゴーは強さと勢いだけで突っ走るタイプなので、自信たっぷりの態度は常に意識しています。「もう、こいつだったら絶対に勝つだろう」というくらいユーゴーを強く見せておいたほうが、彼の失敗は生きるはずですから。ちょっと嫌な言い方になりますが、威張り散らしている人が失敗する様ってスカッとすることがありませんか?
――ありますね(笑)。
石川 あははは(笑)。そういう意味でも、絶対的な自信を持たせて、さも強そうだと思わせておいたほうが作品の流れとしてもいいのかなと思いました。
――まさに第3話の地竜戦がその流れでしたね。
石川 「俺の力ならこんなやつ、造作もねぇ!」なんて言ったそばから返り討ちに遭い、結果シュンたちに助けられる。しかも立ち上がったと思ったら、スーたちが巻き添えになるのもお構いなしに攻撃を仕掛けていく。なりふり構わない情けない姿もそうですし、返り討ちにあったときのやられ方も面白くて。視聴者の皆さんが一緒にスカッとできるよう、スタッフさんたちも意識して作っているのかなと思いました。
――まだまだ放送はスタートしたばかりですが、特に印象に残っているシーンを教えていただけますか。
石川 第1話のパーティーでユーゴーとシュンが再会したシーンです。ユーゴーはシュンや視聴者の方に嫌悪感を与えていく立ち位置だと捉えているので、わかりやすく人の心を逆なでするような芝居を意識して、このシーンでは咀嚼音をはっきり出したんです。完成した映像を見たら……とても不快になりました(笑)。自分が一番不快になる音をちゃんと出せたという意味では狙い通りですが、複雑な気持ちです!
――以前のインタビューでも、ユーゴーを演じる上で咀嚼音は重要なポイントだったとおっしゃっていましたね。
石川 ディレクションというディレクションはなかったとお話ししましたが、監督から唯一あったのが、この第1話の咀嚼音でした。「どうしてユーゴーは咀嚼音を出すんですか」と伺ったら、別に原作にそういう表現があるわけでないけれど、大きな咀嚼音はある種の不快感の象徴であるからと監督がおっしゃったんです。なるほどと納得して、そこから役作りを考えていきました。
――ところで、蜘蛛子パートについてはどのような印象をお持ちになりましたか。
石川 食べなくないものでも生きるために食べようとするガッツがすごいですし、あのメンタルの強さこそ彼女のキャラクター性であり、魅力だなと感じます。ただ、それはきっとインタビューなどで悠木(碧)さんも触れていると思うので、オタク的な観点で僕が気になったのは、あの3DCGです。技術の発展を強く感じさせられました。
――確かに、蜘蛛子の動きも魔物たちの動きも素晴らしいです。
石川 アンドロイドやロボットが人間に近づくにつれて抱く違和感、いわゆる「不気味の谷」という表現がありますよね? 3DCGってどこかこの「不気味の谷」に近い感覚を抱いてしまうことがあるんですが、この作品のデザインを見て3DCGをここまで2D風のアニメーションに落とし込めるんだ、すごいなと思ったんです。背景との溶け込み方もそうですし、モデリングがすごいのか、エフェクトのような処理の仕方がすごいのか、僕もスタッフの方に聞いてみたくなりました。
――一方で、人間サイドの映像もリッチな画面づくりでしたよね。
石川 第1話のパーティーのシーンは特にすごかったです。作画枚数が尋常じゃないんだろうなと思いましたし、これは僕の想像ですが、蜘蛛子パートは3DCGがメインなので作画メインの人間パートもそれに近づけようと考えられたんじゃないかなって。この作品は完全に蜘蛛子サイド、人間サイドに分かれていますし、監督たちが統一感を出すためにいろいろ努力をされている結果なのかなと想像してしまいました。映像的にも見どころがたくさんある作品なので、ぜひ細部まで見ていただけたら嬉しいです。
――ありがとうございます。では、第5話以降の見どころについても教えていただけますでしょうか。
石川 現在、放送されている第4話までだと悠木さん演じる蜘蛛子のキャラクター性やその成長に惹かれていることかと思います。その一方で、人間サイドではシュンのかっこよさやユーゴーの愚かしさが出てきて、これからさらにドラマが深まっていきますので、それぞれの「歩み」みたいなものを見ていただけたら幸いです。よろしくお願いします。
【取材・文:岩倉大輔】