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TVアニメ「蜘蛛ですが、なにか?」を盛り上げるリレー連載、第8回はスー役の小倉唯さんが登場。スーはクールビューティーな印象とは裏腹に、兄であるシュンを心から慕いすぎるあまり、シュンの交友関係に気が気でない様子。そんな“ギャップ”のある彼女をどのように演じているのか、たっぷり語っていただきました。
――第5話までオンエアされましたが、スーはお兄ちゃん愛がすごいですね。
小倉 私もびっくりしました! オーディションのときは第二王女で才能のあるミステリアスなオーラをまとった子という印象だったんです。お兄ちゃんが好きなことは知っていたんですが、いざ台本を読ませていただくと完全に「お兄ちゃん命」な子で(笑)。ミステリアスな表情の裏側にどんな感情があるんだろうと思っていたら、予想を遥かに上回ったお兄ちゃん愛で驚きました。
――オーディションは最初からスーを受けられたんですか。
小倉 最初はカティアで受けていたんですが、スーはビジュアルや設定を見てずっと気になっていたキャラクターだったので、急遽その場で受けさせていただくことになりました。
――その際は、どう演じようと思われたのでしょうか。
小倉 オーディション用のセリフって、キャラクターの喜怒哀楽を中心にしたシーンから選ばれることが多いので、そのときは兄様に対してここまで熱烈な愛を持っているとは思わず、王女としての芯の強さと見た目のはかなさ、か弱さのギャップを表現できたらいいなと考えていました。でも、いざアフレコがはじまると、1話からお兄ちゃん愛が炸裂していたので、だいぶ印象が変わりましたね。
――確かに、第1話からシュンへの強い想いが表れていましたね。
小倉 見た目とのギャップにも驚きましたし、フィリメスへの対応を見るとお兄ちゃん以外はみんな敵と見なしているような感じですよね。「なんですか、この怪しいのは」とか「兄様はああいう子どもっぽいのが好きなの?」とか、息をするように毒を吐いちゃうんです。まわりを冷静に分析できるのは魅力でもあるんですが、それが時に冷たく見えるところは少しヒヤヒヤしますね(笑)。
――第1話ではフィリメスに、第3話ではユーゴーに、第5話ではユーリにと、スーは毎回誰かに鋭い視線を向けますよね。
小倉 そうなんです。現実の人間関係においても、いろいろな感情が顔に出やすい方っていますよね? スーはそれを突き詰めた女の子なのかなと思います。でも、まわりに不快に思われているような様子はなくて、むしろ「スーがまた言ってる」くらいの感じで流されているので、周りからも「そういう子なんだ」と受け入れられているのかなって。スーを受け入れてくれる人たちも優しいなと思いますけど、スー自身にそうさせてしまうような才能がある気もしました。
――実際、演じる上でもそういった点は意識されているのでしょうか。
小倉 そうですね。スーは発言に毒があったり、冷たい印象があるんですが、不器用だからこそそういった言い方をしてしまうと思うんです。あくまでもシュンに対して一途すぎるだけなので、ただの嫌な子にならないように、かわいらしい一面がが出せたらいいなと考えながら演じています。
――そのまっすぐさが特にクスリと笑えるときがありますよね。
小倉 そうなんです! 第3話で魔法の練習をするシーンは私も笑いました。自分の練習よりも兄様が魔法を使って賞賛される姿を見ていたいって、なんてすがすがしいんだって(笑)。兄様への愛が一周回って少しギャグテイストになってしまうようなところも可愛らしいです。
――その第3話では地竜との戦いがありました。
小倉 いつも「兄様、兄様」と言っているので、シュンに頼り切りなのかと思いきや、自分から率先して地竜に向かっていくところはかっこよかったです。頼もしさを感じましたし、私も「兄様」というセリフにいつもより勢いを乗せるように意識しましたね。
――第5話はシュンを賞賛する発言がたくさんありましたね。
小倉 尊敬するシュンが地竜を倒して英雄扱いされているわけなので、スーにとってこれ以上嬉しいことはないですよね。どんどんヒートアップしちゃう気持ちもわかります。シュンを侮辱したユーゴーにもその強さを見せつけられましたし、彼女にとってはかなり快感だったんじゃないかな、と。私も少しスカッとしました。
――そうだったんですね。
小倉 スーがユーゴーに対して怒ったときは、私も同じような心情になったんです。スーを演じていることが大きいかもしれませんが、ユーゴーに言い返したい!って(笑)。だから、第5話は私自身もユーゴーを見返してやったぞ!という気持ちになりました。
――ここまでスーを演じられてきて、何か楽しいなと感じたことはありますか。
小倉 画面の隅でこっそりとシュンを見ていたり、シュン越しに他の女の子を睨んでいたりと、ちょっとしたところでシュンへの愛情が溢れているのが面白いです。監督のこだわりなのか、スーの細かい心情も表現してくださっていて嬉しくなりました。お芝居をする上でも、「ここで睨んでいたから、このセリフに繋がるんだ」というような、スーなりの伏線みたいな部分が画面から伝わってくるので、感情が乗せやすいんです。それはすごくありがたいですね。
――確かに、よく画面内に映り込んでいますよね。
小倉 第5話でシュンとユーリが顔を近づけて話しているときに、「近い」ってぼそっと呟くんですけど、実はその前から二人が話している横でずっと睨みつけているんです。なので、そのときは私も感情を溜めて溜めて、「近い」というセリフをたのせました。
――板垣伸監督や音響監督からは、何かディレクションはありましたか。
小倉 提案していったものがガラッと変わるようなディレクションを受けたことはあまりなかったですね。ただ、感情をあまり表に出せない子というところで、最初に「あまり言葉に抑揚をつけすぎないようにしてください」と言われたのを覚えています。第3話の地竜戦では、感情を乗せても大丈夫ですと言っていただけたので、ここは普段よりも声を張るように意識しました。スーは、戦闘シーンで危機が迫るると、シュンへの愛情とは別に彼女なりの信念や正義みたいなものが表に出るんだなと思いました。
――シュンについてはどうご覧になっていますか。
小倉 シュンもスーのことを大事に思ってくれていますけど、あくまでも妹としてなので、スーを演じる身としてはちょっともどかしい気持ちになりますね。シュンの優しさって、スーからすると色々と勘違いしちゃうだろうなぁて……。地竜との戦いでもスーのことを必死に守ろうとしてくれていましたし、話し方もいつも柔らかくて、乙女心をくすぐるような言い回し方をしますよね。私自身もシュンはすごく好きなキャラクターですけど、時折ちょっとずるいなって思います!
――(笑)。でも、本当に優しいお兄ちゃんですよね。
小倉 はい。ただ、その優しさが弱点でもあると思うんです。何かあっても対応できる器用さがあるからか、ユーゴーのことも現段階ではそこまで問題視していないようにも見えますし、難しいところだなと思います。
――他に気になるキャラクターはいますか。
小倉 カティアが気になります。スーってカティアにはわりと心を開いているというか、信頼しているのか、シュンのことであからさまな敵意を向けるのは少ない印象です。ただ、シュンとカティアはもともと親友ですし、今後も絆を深めていくことになると思うので、シュンとカティア、スーとの三角関係がこれからどうなっていくのか気になります。
――蜘蛛子についてはいかがですか。
小倉 台本を読んで、びっくりしました。キャスト一人でこんなに喋る台本、見たことないなって。アフレコはあおちゃん(CV.悠木碧)とは別なので、蜘蛛子の声は完成映像をいただくまで聞けていなかったんです。アフレコ現場では、よく人間サイドのキャストさんと「蜘蛛子の声、聞けました?」、「いや〜、まだなんです。楽しみですよね!」って話をしていました。
蜘蛛子はセリフ量が多いだけじゃなくて、テンションの上がり下がりも激しいんですよね。あおちゃんが演じる蜘蛛子は、そういった意味でとてもナチュラルに蜘蛛子が実在しているかのように感じられ、納得させられました。いつか収録が一緒になったら、アフレコのことを根掘り葉掘り聞いてみたいですね。
――では第6話以降の注目ポイントを教えていただけますか。
小倉 シュンサイドの視点としては、やはりシュンとユーゴーの関係がこれからどう発展していくのかに注目していただきたいです。英雄になったシュンと彼に嫉妬するユーゴーが、今後どのような対立関係になるのか。物語としても重要なポイントになるので、見逃さないでください。スーに関しては……兄様への愛情がどんどんどんどん捻れていってしまいます(笑)。一途すぎるがゆえに、スーが一体どうなってしまうのかも注目して見ていただけると嬉しいです。
一見、全く関わり合いが無く見える蜘蛛子とシュンたちのパートですが、実はよくみると色々な部分で繋がっているところもあるので、気になったらは最初から見返していただいたりするとまた新たな発見があると思います。ぜひ何度も繰り返し見て、第6話以降も楽しみにしていただけたら嬉しいです。よろしくお願いします。
【取材・文:岩倉大輔】