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アニメと声優と落語の親和性が楽しめるイベント「声優落語天狗連」の第3回が3月20日(日)、豊島公会堂で開催されました。
このイベントは、テレビアニメ「昭和元禄落語心中」をきっかけに落語に興味をもった人に落語の楽しさを知ってもらおうと、自身も落語好きとして有名なニッポン放送 吉田尚記アナウンサーが企画したもの。今回も、芸人であり日本語学者のサンキュータツオさんとのダブルMCで進行されました。
最初のトークコーナーで、アニメで二代目 有楽亭助六を演じる山寺宏一さんがスペシャルゲストとして登場! 吉田アナが選んだ劇中の印象的なシーンを上映しながら、3人で印象を語り合いました。
ここで吉田アナが選んだのは、第4話「夢金」、第7話「火焔太鼓」、そして11話の「野ざらし」の3シーン。特に、11話の「野ざらし」について、吉田さんとサンキュータツオさんは“日本のアニメ史上で語られるべき屈指の名シーン”と絶賛、場内からも同意の拍手が沸き起こりました。それを受けて山寺さんから、収録では山寺宏一ではなく助六としての落語を心がけていること、そして助六の“走りすぎるが、明るく人を笑わせたい”という落語は自分のやりたい方向に合っているという考えが明かされました。
さらに、山寺さんは、収録現場にストップウォッチを持ち込み、カットの中で残りどのくらいのセリフを入れられるかを確認した上で、台本にはないセリフを入れこんだというエピソードも披露。本来のアニメの制作現場では考えられない行動に、場内から驚きの声が上がっていました。また、11話「野ざらし」での石田彰さんとの二人落語は、事前打ち合わせ無しの真剣勝負で挑んだことなど、興味深い話が次々と飛び出しました。
その後白熱した落語談議から、こんな面白エピソードも。
後輩との待ち合わせ前、近くの寄席で大好きな古今亭志ん朝師匠が高座に上がると知り、いても立ってもいられず飛び込んでしまった山寺さん。師匠の落語にとても感動した山寺さんが、合流した後輩に交差点の真ん中で志ん朝師匠の素晴らしさを力説していると、見ず知らずの人から「私もそう思います!」と声をかけられ、固く握手をかわしたとのこと。その後輩が、なんと与太郎役を務める関智一さんだったそうで、強い縁を感じます。吉田アナたちは、山寺さんの“志ん朝師匠と同じ時代に生まれて幸せ”という熱い言葉に頷きつつ、「でも、我々は『落語心中』のある時代に生まれて幸せですよ」と返し、大きな拍手に包まれました。
そして、新人声優が挑む「声優落語チャレンジ」には、4月からスタートするテレビアニメ「クロムクロ」で主人公を務める阿座上洋平さんが登場。落語はもちろん、お芝居でも人前で演じたことはほとんどないという阿座上さんにオファーが来たのは、なんと2週間前。しかも演目は、登場人物が3人も登場する、初心者向きではない「出来心」という難しいものでした。立川志ら乃師匠に稽古を付けてもらい高座に上がった阿座上さんは、当初緊張していた面持ちでしたが、観客からの笑い声が多くなるにつれて持ち前のサービス精神を発揮。泥棒に入られた八五郎と大家のやりとりのくだりでは、コミカルな八五郎とまじめな大家さんを見事に演じ分けていました。
そしてイベントのクライマックスは、春風亭一之輔師匠による、第9話で助六が真打ち昇進の際に披露した「居残り佐平次」の口演。その軽妙かつ変幻自在な師匠の語り口に、その場にいる全員がグイグイと噺に引き込まれます。一之輔師匠が独自に入れた現代的な表現や場面の追加により、落語初心者でも理解しやすく、そして何より面白い圧巻の口演となりました。
口演終了後、「こんなに『居残り』で受けたのは初めて(笑)」と語った一之輔師匠に、舞台袖で見ていた志ら乃師匠は「さすが! うまい!」と大絶賛。サンキュータツオさんも、演じる人によって印象がガラッと変わる、これこそ“古典落語の醍醐味”と興奮気味に感想を語りました。
イベントの最後には、吉田アナから「第4回 声優落語天狗連」の開催決定が発表されました。次回は5月に開催され、声優落語チャレンジはアニメ「ワンパンマン」でサイタマを演じた古川慎さんが挑戦します。【取材・文=オガワヨウヘイ】