アニメ「LUPIN ZERO」畠中祐＆武内駿輔 対談――「自分たちなりにキャラクターを理解した結果、同じ解釈に行き着いた」

---

あのルパンがまだ「ルパン三世」になる前の昭和30年代を舞台に、少年時代のルパンと次元の出会いと冒険を描いたアニメ「LUPIN ZERO」。DMM TVで独占配信中の本作でルパンを演じた畠中祐さんと次元を演じた武内駿輔さんのスペシャル対談をお届けします。

---

---

――「ルパン三世」は幅広い世代に親しまれているシリーズですが、特に思い入れのあるタイトルやシリーズがあれば教えてください。
武内　僕らは「金曜ロードショー」のTVスペシャルや再放送で「ルパン」シリーズを楽しんでた世代なんです。だから、やっぱり「ルパン三世 ルパンVS複製人間」と「ルパン三世 カリオストロの城」。自分が生まれる前のTVシリーズはレンタルビデオで見ていました。特に「PARTIII」が好きです。絵柄も独特だし、音楽も電子音とか使っていたりして、あの当時ならではのオリジナリティがあるじゃないですか。
畠中　僕もいちばん印象に残ってるのは「ルパンVS複製人間」と「カリオストロの城」なんですが、TVスペシャルの「ルパン三世 ワルサーP38」も好きですね。レンタルビデオで見たのかなぁ。
武内　敵役の内海賢二さんがまたいいんだよね。
畠中　そうそう。小学校のころ初めて見たんですけど、とにかくルパンの渋さにあこがれましたね。ジャケットを着て、ワルサーP38のエアガンを持って、ルパンごっこまでしてました（笑）。だから、そんなルパンを演じるのはプレッシャーしかなかったです。武内くんは、どちらかというとポジティブにとらえていたけれど。
武内　そりゃあルパンのほうがプレッシャーになるのは当然だし、そこは互いにバランスを取るというか、これだけの機会もなかなかないので、逆にベストを尽くすために楽しんで
やろうと。

---

---

――誰もが知ってるルパンと次元だからこそ、自分流を貫き過ぎてもいけないし、モノマネになってもいけない。難しい役どころですよね。
畠中　そうなんです。監督の酒向（大輔）さんもね、アフレコ中に「みんなが思ってるルパンもあります。だから、そこも大事にしてほしい」という話をしてました。
武内　自分たちなりにキャラクターを理解していった結果、今まで演じられてきた方々と同じ解釈に行き着き、“あの音”になったのであれば、それはモノマネにはならないだろうと。だから今回、最初から全部さかのぼっていきました。それこそ野沢那智さんや広川太一郎さんが出演されていたパイロット版からつないでいった感じです。
畠中　アフレコに臨むにあたって「ルパン」シリーズを振り返る時間をつくりました。もうやっぱりおもしろいし、山田康雄さんや小林清志さんのお芝居はしびれるぐらい生き生きとしてるし、単純に歴史をさかのぼっていくこと自体がすごく楽しかった。「ルパン」に魅入られ、「ルパン」のことばかり考えてアニメ業界に入ってきたという酒向さんの気持ちも分かるなと。結局、収録が終わった今も見ていますし。
武内　僕の場合、過去のアドリブとかメモに全部起こして、ルパンと次元の語録をつくったんです。たとえば、どんなときに「あらららら～」って言うのか、「うわーっ」て言うのか（笑）。そういう教科書がひとつできると、なんとなく次に何を言うべきか予測ができるようになってくる。ただ、あくまでも自分の声とか感性を大切にして、自信をもってやっていこうという話もしました。
畠中　やっぱり山田さんは山田さんのままルパンをやってて、だからこそ唯一無二の存在になったんですよね。ルパンっぽい感じをまねすることはできるけど、あの山田さんのルパンは、そりゃあ山田さんにしかできないよねって言わしめる何かがにじみ出てる。
武内　やっぱりただ山田康雄さんのルパンにしようと思っても、それは演技にならないし、ルパンにもならない。もちろん、たまに相手の芝居を聞いて、互いに「そこは『～だな』じゃなくて、『～だなぁ』のほうが彼らしいんじゃない？」みたいな意見を言い合ったりすることもありましたけど、根本にあるのは自分の言葉にできてるかどうか。
畠中　次元に関して、僕から何か言えることはほとんどなかったと思うけど（笑）、そういう時間も含めて楽しかったよね。
武内　結局、収録そのものは、全6話だから6日もなかったんですよ。でも全部終わったあと、監督から「たった数日の収録だったけど、それ以外の時間もルパンと次元でいてくれたことが伝わってきました」とおっしゃっていただいて、それがすごくうれしかったなぁ。
畠中　ちょっと僕なりのルパンが出過ぎたかなという反省点もありつつ、最終的にディテールを気にするだけじゃない、僕らの「ルパン」を残せた気がしてます。

---

---

――そもそもわれわれの知ってる“ルパン三世“と”次元大介“になる前の彼らですしね。
武内　次元もまだ大人ぶってる少年なんですよね。タバコとかも含めて、背伸びしてカッコつけてるだけで、いずれそれが美学に変わっていく。その成長途中感がよく表われているなと思いました。
畠中　ルパンも、最後にあの服を着ますけど、まだ少し大きくて着られてる感じだったじゃないですか。あれがバッチリ決まったときが、本当のルパン三世になれた瞬間なんだろうな。だから、あの帽子と次元が出会うまでの物語も知りたくなっちゃうよね。
武内　最終回の次元は、学帽からハンチングになってたり、ボタンシャツになってたり、ちょっと片鱗みたいなものが見えてきてるのもいい。「PART2」でチラッと描かれた、過去の若い次元もハンチングをかぶってるんですよ。
――個人的には、若いころのルパンと次元が2ケツしてる画と「ルパン三世主題歌II」の組み合わせを思いついた時点で、この企画は“勝ってた”気がするんです。
畠中　わかります！　バイクに乗ってるのが不二子じゃなくてね。
武内　あれはいい。大人になったら、よっぽど追いつめられない限り、2ケツなんかやらなそうだもんな。
畠中　あのルパンと次元が、まだ青臭かった瞬間をとらえてるんだよね。だから尊い。第5話の屋根の上でのやりとりとかもさ、大人になったら小っ恥ずかしくてできないよ。そういう意味では、大人ルパンじゃできないことをいっぱいやれた気がするな。そういう意味では、子供たちにも見てほしいよね。「PART1」とかで味わえる渋さもあるけど、「PART2」っぽいファミリータイプの「ルパン」でもあるし、すごく取っつきやすい作品になってると思うんです。僕自身、今回のルパンには共感しやすかったんですよ。やっぱり敷かれたレールの上なんか歩きたくないよなって。でも俺は今、敷かれたレールの上を走ってるような芝居してないか!?みたいな（笑）。
武内　祐で言ったらさ、やっぱり親父も役者だからね。うちも母親が声楽をやっていて、僕もクラシック音楽を勉強していたことがあって……別にその道を強要されるようなことはなかったんですけど、多少は期待されていた部分もあったと思う。でも、自分なりに生きたいように生きる。しかし、ルパン三世の名前は引き継ぐぜっていう継承の仕方もすごくよかったな。
畠中　今回、スタッフの座組も熱いんですよ。酒向さんも副監督から監督になって、音響監督の丹下（雄二）さんも、ずっと「ルパン」をやられてる清水（洋史）さんのお弟子さんで、今回が初音響監督。キャラクターデザインの田口（麻美）さんも、前は補佐として入ってたのが、今回はガッツリっていう感じで、今まで下についてた方々の手による「ルパン」なんですよね。本当にいっしょにやれてよかった。

---

---

――この座組による若かりし日のルパン一味、もうちょっと観てみたい気もしますが……。
畠中　ホントに！ でも、すごくきれいな終わり方をしてるんですよね。
武内　余白を残すというか、サクッと6話で終わらせるという美学もありますもんね。ある種、僕らもやりきることはやりきれた気もするし、それだけの満足感がもてるほど真剣に集中して取り組めた作品だなという自負はあるので、これから先は見てくださる方々しだいかなぁと思っています。
畠中　そうそう、僕らが決められることではないからね。でも「ルパン」にかかわってた期間が、あまりにも楽しかったぶん、やっぱり今はものすごく寂しさがあるんですよね。だから、またいつかルパンと出会える日が来ることを願ってます。

---

---

【取材・文／ガイガン山崎】

■「LUPIN ZERO」
●DMM TVにて独占配信中

スタッフ：原作…モンキー・パンチ／監督…酒向⼤輔／シリーズ構成…⼤河内⼀楼／設定考証…⽩⼟晴⼀／キャラクターデザイン…⽥⼝⿇美／⾳楽…⼤友良英／メインテーマ…「AFRO"LUPIN'68"」（作曲…⼭下毅雄・編曲…⼤友良英）／エンディングテーマ…「ルパン三世主題歌Ⅱ」（歌…七尾旅⼈、作曲…⼭下毅雄、編曲…⼤友良英）／アニメーション制作…テレコム・アニメーションフィルム／製作…トムス・エンタテインメント

キャスト：ルパン…畠中祐／次元…武内駿輔／洋⼦…早⾒沙織／しのぶ…⾏成とあ／ルパン⼀世…安原義⼈／ルパン⼆世…古川登志夫

リンク：アニメ「LUPIN ZERO」公式サイト
　　　　公式Twitter・@lupin_zero