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「第十七回 声優アワード」主演声優賞&MVS・江口拓也インタビュー 「飽きることがないくらい、追求することの多い仕事」

2023年3月11日、2022年度に最も活躍した声優を讃える「第十七回声優アワード」の受賞者が発表されました。本稿では、主演声優賞、MVSを受賞した江口拓也さんのオフィシャルインタビューをお届けします。


「第十七回 声優アワード」主演声優賞&MVS・江口拓也さん


——主演男優賞とMVS賞のW受賞、おめでとうございます。この賞の対象期間は2021年10月〜2022年9月なのですが、この期間は江口さんにとってどのような1年でしたか?
江口 ご時世としてコロナという問題があり、一堂に集まって収録ということができなかったので、僕のなかでは実感のない1年という感じでした。キャスト表でお名前を拝見しても、お会いできないまま作品づくりが終わってしまうことがあったので。絡ませていただく役同士だといっしょに録れるんですけど、それ以外の方と交流がなかったので、そういう意味ではさびしい1年でした。
——対象期間に主役を演じられた「SPY×FAMILY」ロイド・フォージャー役について、収録当時の思い出や、印象深かったことなどを教えてください。
江口 オーディションに受かったとき、担当マネージャーがめちゃくちゃ喜んでくれたんです。ふだん、テープオーディションのときは、自分の演技プランで録音して送るという形なんですけど、今回の担当マネージャーは作品への思い入れがあって、「視聴者としての僕だったら、こういう感じのほうがグッと来ますね」と入り込んで聴いてくれたんです。その熱量に後押しされて、ある意味いっしょにつくったからこそ受かったと思うので、それが印象的でしたね。
——原作が大人気で、アニメ化に際しても注目度の高い作品でしたが、それに対する意欲やプレッシャーなどはいかがでしたか?
江口 注目度は後から感じたんです。駅構内や電車をジャックするなど、宣伝周りの熱量がすさまじかったので、これはスゴイ作品だぞ、と。でも、役者としてやっていることは変わらなくて、どの作品も等しく、同じパワーで臨んでいるだけなので、そういう意味では〝ご縁〟だな、と思います。
——座長として意識なさったことは?
江口 「SPY×FAMILY」はロイドが主人公ということになっていますが、実質主人公はアーニャだと思っているので、アーニャを支えていけるような立ち位置でもお芝居をやっていこうという感じでした。お芝居以外のことでは、宣伝活動に呼んでいただくことが多かったので、それは主役と呼ばれるキャラクターを担当する者の役目として、できる限り頑張らせていただきました。
——「SPY×FAMILY」へのご出演で得たものは?
江口 僕は子供に興味がまったくなかったんですけど、アーニャを見ていて、かわいいなと思うようになって、ちょっと〝父性〟というものがわかった気がしました。


「第十七回 声優アワード」主演声優賞&MVS・江口拓也さん


——江口さんが感じる声優というお仕事の魅力は?
江口 終わりがないところです。たとえばゲームをしていても、もうすぐクリアだと思うと止めてしまったりするんです。終わりたくないという気持ちもあるし、終わりが見えると飽きちゃうという……。すごい飽き性で、すぐ冷めちゃうんですけど、そんな自分が、この仕事をめざしてから、まだ飽きていないということが、ひとつ正解なのかなと思います。たぶん飽きることはないだろうって思うくらい追求することが多いし、先輩たちがすばらしいから、追うべき対象もいっぱいいるんですよね。後輩も、おもしろい子や刺激を受ける子がたくさんいるから、そういう人たちに触れることで、もっと自分にもできることがあるんじゃないかと思えてくる。生きているだけで次々と新しいステージが出てくるところが、自分には合ってるんじゃないかと思います。苦しいことのほうが楽しいと思えるので、崖っぷちのほうが生きている感じがします。そういった意味では、この道を見つけるまで、誰かに敷いてもらった道を生きていただけだったのかもしれません。なんとなく過ごしてこられたのはありがたいことでもあるけど、生きている意味とか、人生の実感みたいなものは全然なかった。今はどんなに苦しくても、暗闇を全力疾走するような危うさがあっても、これが生きてるっていうことだよなあと感じています。
——経験を重ねたことで、お芝居に対して変化したことはありますか?
江口 デビューしたてのころは緊張していたし、マイク前に立っている状態がまともじゃなかった。失敗したらどうしようとか、どう評価されるだろうという恐怖心もすごくありました。先輩しかいないなかで、自分のお芝居がすごくちっぽけに感じる瞬間があったり……。いろんなプレッシャーのなかで必死に絞り出していたんですけど、今は何も考えなくてすむようになりました。緊張はしますけど、考なくていいことを削ぎ落とせるようになったのは、仕事をしていく上で適応できた部分だと思います。
——そういった余裕が生まれたのはいつ頃なんでしょう? きっかけはありますか?
江口 20代から30代になって、心も年齢にシフトしていったからこその落ち着きというのがあったと思います。20代のころって、自分は舐められてるんじゃないかとか自意識過剰になったりしてたけど、30代になると認めてもらえる部分も増えてきたし、年を重ねることで得られたものもあったんだと思います。だから早く40代、50代になりたい(笑)。
——今後、挑戦してみたい作品のジャンルや、演じてみたいキャラクターのタイプなどはありますか?
江口 僕はかっこいいおじいちゃんが好きなんです。ふだんはひょうきんなんだけど、スイッチが入るとめちゃくちゃ強い、みたいな。そういうキャラクターがあこがれだから、いつかやりたいと思うし、そこにたどり着くまで声優をやれる、というのはすごいことだから、今のうちに渋さや年齢の重ね方を研究して演じられるようになりたいです。
——読者の方々にメッセージをお願いします。
江口 自分がこういった賞に選んでいただけたのは、話題となる作品のチームに入れてもらえたから、ということが大きいので、作品の偉大さをひしひしと感じます。これからも関わった作品をチームでいいものにしていこうと頑張るだけです。新しい作品との出会いを通して、楽しんでいただく理由のひとつになれたらうれしいので、今後とも引き続きよろしくお願いします。


「第十七回 声優アワード」主演声優賞&MVS・江口拓也さん


【撮影:田上富実子/取材・文:垳田はるよ】

■第十七回声優アワード 受賞者及び受賞作品
主演声優賞&MVS 江口拓也
主演声優賞&助演声優賞 種﨑敦美
主演声優賞 安済知佳
助演声優賞 池田秀一
助演声優賞 置鮎龍太郎
新人声優賞 梅田修一朗
新人声優賞 直田姫奈
新人声優賞 永瀬アンナ
新人声優賞 日向未南
新人声優賞 若山詩音
歌唱賞 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会
外国映画・ドラマ賞 貫地谷しほり
外国映画・ドラマ賞 森川智之
シナジー賞 呪術廻戦
富山敬賞 諏訪部順一
高橋和枝賞 川村万梨阿
キッズ・ファミリー賞 大谷育江
キッズ・ファミリー賞 松本梨香
インフルエンサー賞 花江夏樹
功労賞 秋元千賀子
功労賞 屋良有作
特別賞 やくならマグカップも 

リンク:「声優アワード」公式サイト
     「声優アワード」公式Twitter・@seiyuawards

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