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2015年に声優デビューし、さまざまなキャラクターを演じてきた市川太一さん。2024年7月より放送されたTVアニメ第2期「神之塔 -Tower of God- 王子の帰還」で感じた自身の変化をはじめ、芝居の幅を広げた役、長く演じることの難しさを知った役などについて語っていただきました。
プロフィール
いちかわ・たいち●2月4日生まれ/東京都出身/ヴィムス所属/主な出演作品は、「神之塔 -Tower of God-」(夜/ジュ・ビオレ・グレイス)、「時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん」(清宮光瑠)、「終末のハーレム」(水原怜人)ほか。
――TVアニメ 第2期「神之塔 -Tower of God- 王子の帰還」が制作発表されたときの気持ちは?
市川 本当にうれしかったです。作品全体を見ると、第1期はまだまだ序章だと僕自身も思っていましたし、いち原作ファンとしても先の物語をアニメで見たいという思いがあったので、ようやくその願いが叶って「気合いを入れて収録に臨もう」とモチベーションも高かったです。第1期で演じた夜は受け取ったものを何でも吸収してしまうスポンジのようなキャラクターだったので、何色にも染まることができるような彼の純粋無垢なところを大事にしたいと思いました。騙し騙され蹴落とされていくような環境のなかで、出会った人間を当たり前のように信じることができるのも彼の魅力ですよね。夜を演じたのは5年前でしたが、声のトーンやお芝居はきっと当時の僕にしか出せないニュアンスがあって、今オーディションしたとしても僕は受からなかったと思うし。そういう意味でもすごく運命を感じたキャラクターでした。
──第2期で主人公のジュ・ビオレ・グレイスを演じるにあたり、準備したことなどはありましたか?
市川 「彼はどんなふうに成長していくんだろう?」と改めて原作を読み返しました。夜を演じているときから第2期、第3期と続いていくことを想定して僕は役づくりをしていたので、演じるのが楽しみなキャラクターでもあって。他人を信用しないというか、重い使命を課されながらひとりで前に進んでいくビオレの闇みたいな部分は夜とは正反対ですが、彼の行動から感じられる根っこのところの優しさは夜に通じる部分があるんじゃないかと思い演じています。
──第2期の収録に臨む際に意識したことはありましたか?
市川 「神之塔」第2期の収録が始まった当初は第1期から引き続き登場するキャラクターもいなくて、スタッフの皆さんも第2期から参加する方たちが多かったので、現場はある種まっさらな状態でした。だからこそ、第1期の雰囲気を知っている僕が作品の世界観やセリフのなかに出てくるトピックなどを、ほかのキャストの方たちに伝えていけるといいなと思っていました。第1話の収録から笑いが絶えなかったし、「みんなで作品を盛り上げていこう」という気持ちが伝わってくるような、とても雰囲気のいい現場でしたね。
──第1期から5年経って、市川さんご自身はどのように変わったと感じていますか?
市川 第1期を収録していた5年前の自分は、がむしゃらに目の前のことに向かって一生懸命だった記憶がありますが、今は当時に比べると少し落ち着きが出てきて、周りに対していろいろとアンテナを張る余裕が出てきたんじゃないかと実感しています。そういった姿勢というのは、この5年間いろんな現場を経験させていただいたことで培われたものだと思いますから……貴重な機会をくださった皆さんに感謝しています。
──変わらない部分は?
市川 役への向き合い方はずっと変わっていないと思います。自分との共通点を見つけるところから始めて、役を知っていく。そのなかで自分と違うところや同じところを照らし合わせてアジャストしていくというアプローチです。自分のなかで記号化して「このキャラクターはこういうタイプだからこうしゃべるだろう」みたいなことはやらずに、内面から寄り添っていきたいという気持ちはずっと変わりません。
──ビオレのほかにもさまざまなキャラクターを演じていますが、ご自身のなかで新たな発見となった役などはありましたか?
市川 「アルゴナビス」の二条奏は僕が演じるという意味では意外なキャラクターで、自分の幅を広げてくれた役でした。別の役もいくつか受けていて、二条奏が一番引っかからないだろうなと思っていたのですが、決まったと聞いたときは「こういうキャラクターでも選んでいただけるんだ」と知ることができたのは大きかったです。明るくていいヤツに見えて、兄に対しては愛憎に似た複雑な感情があるという……演じていて楽しかったですね。奏をきっかけに複雑な性格をしたキャラを演じさせていただく機会が増えたので、そういったご縁もありがたいです。
市川 自分とまったく共通点が見出せないキャラクターを演じるときは、思いっきり振りきって演じることができるので、自分にはなかった扉を開けてくれるいい機会だと思ってチャレンジします。自分のなかで思い描くキャラクターをまずはやってみる。合う・合わないは制作陣に決めていただくものですから。臆することなく「とりあえずやってみよう」と挑戦することが大事なんじゃないかと思うんです。意外という意味ではないですが、「デュエル・マスターズ!」も自分のなかでは大きかった作品です。
──どう大きかったのでしょうか?
市川 3、4年間ずっと同じキャラクターを演じる機会というのは、声優の仕事をやっていくなかでもそんなに多くないですし、キャラクターが少しずつ成長していく過程を視聴者の方たちに伝えていきながら、変わらない部分もしっかりと維持する難しさを感じました。また、尊敬する大先輩の皆さんと現場で一緒にアフレコでき、本当にたくさんのことを学ぶ機会をいただけたのも貴重な機会となりました。ずっと同じ役を長い期間演じていると、どうしても変えてみたくなったりするんですよね。でも、やっぱり変わらないことがとても大切で。先輩方は、変えないけれど遊び心をもちながらお芝居されている印象というか……例えば、佐藤せつじさんのアドリブって「ここまでやっていいんだ!」と驚くほど自由ですが、ちゃんとデッキ―なんです。すごく楽しくお芝居されているのも印象的でした。
【撮影:福岡諒祠/ヘアメイク:横手寿里/文:とみたまい】