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『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ 各駅停⾞劇場⾏き』×『プラグマタ』特別対談――SF世界を舞台とする2作品の共通点とは。ハガ署⻑の元ネタはカプコンの……!?


2025年7⽉より放送・配信されたショートアニメ[NOLINK]『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』(以下、『ミルサブ』)。軽快な掛け合いや、コミカルなキャラクターたちの活躍などで⼈気を博した。
2026年2⽉6⽇にはショートアニメシリーズ全12話に新作パートを加えた映画『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ 各駅停⾞劇場⾏き』が公開。本稿では映画の公開を記念して、『ミルサブ』の監督を務める⻲⼭陽平⽒との特別対談をお届け。
⻲⼭監督のお相⼿を務めるのは、カプコンより2026年4⽉24⽇に発売を予定している『プラグマタ』のディレクターを務める、趙 容煕⽒だ。『ミルサブ』も『プラグマタ』も、宇宙を舞台にメカニカルなキャラクターたちが登場するほか、趙⽒は『ミルサブ』の⼤ファンとのこと。
おふたりが業界を⽬指したきっかけや、SFとは何か、映像作品とゲームの違いなど、さまざまな話題が⾶び交った対談を、ぜひじっくりと読んでみてほしい。
※本稿には『ミルサブ』のネタバレが含まれます。未視聴の⽅はご注意ください。



⻲⼭陽平 ⽒

●かめやま・ようへい/『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ 各駅停⾞劇場⾏き』監督。2022年に専⾨学校の卒業制作で公開した『ミルキー☆ハイウェイ』がネット上で話題を呼び、2025年にその続編となる『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』をショートアニメ全12話でシリーズ化した

趙 容煕 ⽒

●チョウ・ヨンヒ/カプコン『プラグマタ』ディレクター。以前は『バイオハザード』シリーズのキャラクターデザイン、アートディレクションなどを担当していた


©亀山陽平/タイタン工業


©CAPCOM


ふたりが業界を目指した経緯とは?

――まずは⻲⼭監督がこの道を⽬指したきっかけを教えてください。
⻲⼭ ⾃分は中学⽣ぐらいのころから映画がすごく好きで、なんとなく映像系のエンターテインメントの仕事がしたいなって、ふんわりと思ってました。映画監督になりたい、みたいな明確なビジョンがあったわけではないんですが。

――ちなみに、とくに好きだった映画はありますか︖
⻲⼭ 『第9地区』や『エリジウム』 などのニール・ブロムカンプ監督の作品ですね。あのSF世界がとくに好きです。

――そこからどのように、映像作品を作ることになったのでしょうか︖
⻲⼭ ⾼校を出てから「あれ、このままだと映像業界に⼊れないんじゃ︖」と、ふと危機感に気づきまして(笑)。これはまずいと専⾨学校に⼊ったら、3DCGにのめり込んだんです。
 いろいろ学んでいざ卒業となったとき、もしこの先どこかに就職したら、好き勝⼿に映像を作る機会はやって来ないだろうと思って、やりたいことを全部詰め込んだのが『ミルキー☆ハイウェイ』 でした。結果的には、いまもそれを『ミルキー☆サブウェイ』 として継続してやらせてもらっている感じです。

――映像作品と⾔っても⼿描きアニメ、実写などいろいろありますが、なぜ3DCGにハマったのでしょうか。
⻲⼭ 昔からディズニー作品ですとか、海外のアニメもたくさん⾒ていたので、アニメーションをやりたいという気持ちはありました。ただ、⽇本のアニメとなると、テレビシリーズ作品などを⾒ても、キャラクターの細かい仕草にこだわれるチャンスが少ないのかなと。⾃分は、細かい仕草や何気ない会話みたいなところを描く映像作品が好きなんですよ。
 あと個⼈的にはアニメーターは⾷べていくのが厳しい、みたいな印象もあったので、だったら3DCGならなんとかなるかもしれない、と思って⼿を出した感じです。で、実際に学び始めたら3Dは3Dなりに独⾃の楽しさがあって、その魅⼒にハマっていきました。



――専⾨学校で学んだこと以上に、⻲⼭監督の才能や努⼒が『ミルキー☆ハイウェイ』の評判につながったと思います。どのように腕前を上げていったのでしょうか︖
⻲⼭ ⾃習できる環境が整っていたんですよね。いまはYouTubeにも映像の作りかたのチュートリアルみたいな動画がたくさんアップされているので、それを⾒るだけでも勉強になります。また、⾃分が3DCGを作るのに使っているのは“Blender”というツールなのですが、専⾨学校に⼊ってからはとくにツールの使いかたが上達していきました。
 上達すればするほどやれることも増えて楽しくなって、⾝につくスピードも早かったです。その楽しさがあったので、⾃発的に何かやりたいという気持ちがどんどん膨らんでいったのが⼤きかったのかなと思います。あと、専⾨学校時代はコロナ禍の最中だったので、家の中で過ごす時間が⻑かったのも、振り返るとよかったのかなと。

――おそらく3DCGの造形ができる⽅々って、絵⼼もあると思うんです。『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ ビジュアルブック』に⻲⼭監督の学⽣時代のイラストが掲載されていますが、もともと絵を描くのは好きだったんですよね。
⻲⼭ ⼩さいころから、⾃由帳の落書きみたいに絵を描いていました。漫画のアニメのキャラクターを描くみたいなことは、なんだか恥ずかしくて全然やってなかったです。写実的な絵や、何かのスケッチを描くことが多くて、アニメらしい雰囲気の絵は描いておらず、メカっぽいものを描いたりしていました。


©亀山陽平/タイタン工業


――ですが『ミルサブ』って、めちゃくちゃアニメらしいデザインですよね︖
⻲⼭ 味のあるデフォルメ、みたいな画⾵は最近になってようやくできるようになったことです。そこの調整は僕がいちばん苦労したところで、何ならいまでも苦労しています。
趙 昔描いていたというイラストを⾒せてもらっていいですか︖



⻲⼭ これですね。もう本当に写実的なものばかりで。
趙 いや、かなりリアリティーありますね。作品からは想像できないような。僕はもう昔からアニメチックというか、漫画的なイラストばかり描いていて。で、なんか気づいたら写実的な⽅向に向かっていって、いまは写実的なアートスタイルになりました。
⻲⼭ 趙さんはいまどのようなイラストを︖
趙 こんな感じです。



亀山 おお、メカメカしい。

――お互い、始まりと現在のスタイルが逆なのも興味深いですね。趙さんは、どのようにゲーム業界を⽬指したのでしょうか︖
趙 僕も⻲⼭さんと同じで、やはり絵を描くことが好きなんです。アニメを作る仕事に就くか、漫画家を⽬指すかで悩んでいました。どちらかというと漫画家志望だったので。
 僕は韓国出⾝で、⼩さいころは韓国で暮らしていました。そのとき読んでいたのが『ドラゴンボール』 です。韓国にも週刊少年ジャンプ的なものがあって、連載されていたんですよ。もう『ドラゴンボール』のためだけに読んでいました。
 それくらいハマって、絵を描くのも『ドラゴンボール』を参考にしてみたり、漫画を描いて友だちに⾒せて喜んでもらったり、楽しかったです。

――そこからどのようにゲーム業界へ︖
趙 じつは漫画だけではなく、映画やアニメ、ゲームももともと好きなんです。⼩さいころは映画を1⽇に何本も借りてきて鑑賞したり、アニメをブッ通しで視聴したりして。その傍らでスーパーファミコンのゲームもたくさん遊んだりと、好きなものを楽しんでいました。
 ⼩さいころから漫画家になりたかったけれども、アニメの世界にも興味を持ち始めて……。そんなとき、友だちの親戚の家でプレイステーションに出会ったんですよ。初めて⾒たとき、CD-ROMでゲームが動くことに驚きながら初めてプレイしたのがカプコンの『バイオハザード』だったんです。
 当時は3Dで描かれたグラフィックに驚きましたし、何よりメチャクチャ怖くて。でもプレイステーションが欲しい︕ って思いながら、そのときふと「ああ、ゲーム業界を⽬指す道もあるのか」と意識するようになりました。
 よく考えてみると、グラフィックがあるから絵も描ける、物語を構築できる、アニメーションも作れる、おまけにゲームも遊べるなと、⾃分のやりたいことが全部詰まってると思ったんですよね。そこからはゲーム業界を⽬指すようになりました。



⻲⼭ ということは、趙さんがカプコンに⼊ったのは『バイオハザード』がきっかけだったんですね。
趙 そうですね。少年時代は『ロックマン』が好きな少年だったのですが、『バイオハザード』で衝撃を受けて。カプコンのゲームが⾃分に影響を与えてくれました。

――ではそのあたりから、ゲームの3DCGなどにも興味を持っていたのでしょうか。
趙 いえ、正直に⾔うと当時は幼少期ながらに3DCGから暖かさを感じられなかったんです。作るなら2Dがいいなと思っていました。ドット絵のキャラクターに魂が宿っている気がして。
⻲⼭ わかりますわかります︕ ⾃分も3DCGって最初は興味なかったです。⼿描きアニメのほうが好きでした。ゲームは⼩さいときには遊んでいて、駄菓⼦屋に『メタルスラッグ』があったのですが、あれは2Dグラフィックがものすごいですよね。
 イラストを描いたりしていると、絵ってなんとなくどうやって作られているのか想像できます。でも3DCGって何がどうなってるのかわからない、ちょっと⼊り込めない、みたいな感覚は多くの⼈が感じると思っています。
趙 わかります。そして紆余曲折を経てカプコンに⼊り、『バイオハザード』シリーズにも関わるようになった⾃分の⼈⽣には感謝しています。もちろんいまでは3DCGも⼤好きですし、しっかり魂を込めて皆さんに魂を感じてもらえるように⼼がけています。

――ゲームの場合って、2Dグラフィック、とくにドット絵だと昨今はクラシックゲームに⾒られたりと、それよりも写実的な3Dグラフィックが求められがちですよね。映像作品は、逆に⼿描き作品のほうが評価されたりして。
 そこはプレイヤーさんのニーズなのかなと思っています。ゲームは⽐較的⾼価なものですから、⾼級感のあるグラフィックであるほど納得性があると⾔いますか。プレイヤーさんもハイクオリティーな⾒た⽬を求める⽅も多く、そうなると3DCGがメインになるのかなと。
⻲⼭ あと、3DCGがいちばん⽣きるのはゲームなんですよ。たとえば3Dだとフレームレートが⽐較的簡単に上げられるので、キャラクターを操作するという部分で3Dのほうが強い。2Dだとフレームレートをもし上げるとなれば、その分だけさらに描かないといけないため、ものすごい作業量になってしまいます。
 また、3DCGアニメだと決まったカットを⾒せるだけで済みますが、ゲームだったら360度⾒まわしたりしたいじゃないですか。ですから、3Dはゲームだからこその体験を産み出せるツールなんだと思います。だからこそ、お客さんもそれが味わいたいんじゃないでしょうか。



『ミルサブ』『プラグマタ』の魅⼒に迫る︕

⻲⼭ もともと『ミルサブ』は1話あたり3分30秒のショートアニメで全12話です。それを劇場版になんとか1本につなげたので、なかなかしんどかったです。また、劇場作品として完璧かと⾔われると、正直「ぐぬぬ……︕」とまだまだこだわりたかったところもあります。
 ショートアニメシリーズをそのまま続けて流すみたいな⽅向性も考えていたのですが、それだとおもしろくない、味がないなと思い、1本にまとめることにしました。おかげで劇場版ならではの体験を味わえるものになったと思います。ぜひ多くの⽅に楽しんでほしいですね。

――趙さんは劇場版の試写をご覧になられたほか、ショートアニメシリーズも全部⾒ているんですよね。
趙 もちろんです。もう⼤ファンです︕ とくに好きなのがキャラクターたちの演技です。先ほど⻲⼭さんが「細かい仕草が好き」とおっしゃっていましたが、まさにそこです。登場⼈物たちの⾝振り⼿振りもそうですし、あとは声優さんの演技も⼀般的なアニメっぽくないですよね。⽣々しいセリフになっていて。ひとりひとりのキャラクター作りもすごく上⼿で、本当に⼤好きで す。
⻲⼭ ありがとうございます。⾃分でもそういう細かい演技が好きで描きたかったんだなという⾃覚があります。僕は昔から映像作品を⾒るとき、シーンごとのキャラクターの演技や演出を⾒るのが好きでした。ですからキャラクターの⽴ち振る舞いや、声優さんの演技についてはかなりこだわって作っています。
 『The World of GOLDEN EGGS』 を⾒ている感覚に近いものもありました。
⻲⼭ たしかにアニメっぽく聞き取りやすいセリフではなく、⽣の会話のライブ感みたいなものを出すのは影響を受けているかもしれません。僕が⼩〜中学⽣のときに『The World of GOLDEN EGGS』や『Peeping Life』 といった、アドリブ的な声優さんの演技が光る作品が好きだったので。
 それに加えてストーリー性のある映画も⼤好きでした。そのためアドリブ的なライブ感のある会話を演出しつつ起承転結のしっかりある物語も作るというのが、⾃分の中で⾏きついたスタイルかもしれません。


©亀山陽平/タイタン工業


 後半、マキナが「ゴミ野郎じゃねーわ︕」とカッコつけるシーンで、アカネが「でもいま……」ってちょっと茶々⼊れるシーンがありますよね。そこはイジらなくていいじゃん︕ みたいな、ああいうノリが⼤好きで。その、SFモノってなんかこう、ちゃんとやると地味で重くなりがちじゃないですか。そこをキャラクターたちが緩めてくれているような。
⻲⼭ ありがとうございます。ただ、僕は『ミルサブ』をSFだとはあまり思っていなくて、どちらかというとコメディ作品と⾔いますか。劇中に出てくるメカやガジェットって、かなりご都合主義でして、科学的な設定よりも物語を優先して組み⽴てているもので。
 SF作品って、その作品に出てくる設定を中⼼に、物語が展開するものだと思っています。『ミルサブ』はキャラクター優先で物語を作っているので、ガワの部分だけSFっぽさがあるコメディなのかなと。
 昨今はSFの定義も曖昧と⾔いますか、それっぽいだけでSFと呼ぶこともあるのは理解してます。ただメカが登場する、宇宙が舞台である、と設定されていても、それだけではSFではないはずですよね。
趙 あぁ、わかります。たとえば『スター・ウォーズ』 ってSFじゃないですよね。
⻲⼭ そうですそうです。ファンタジーですよね。わかりやすいSFって、『ドラえもん』 だと考えています。ひみつ道具という技術があって、それに対して⼈間たちが愚かなことしたりするっていうのが基本になっていて。ものすごくわかりやすいSFだと思います。
 同感です。同様に僕の中では『バイオハザード』シリーズもSF作品と思っています。
⻲⼭ ゾンビは出てきてもオカルトではなく“t-ウィルス”といったリアルな設定が中⼼ですからね。それで⾔うと、『プラグマタ』からはかなりSFモノっぽさを感じていますが、実際はどうなんでしょう︖
 『プラグマタ』は少なくとも⾒た⽬をSFっぽくしています。でも、⽉⾯施設を監査するためにやってきたヒューと⽉⾯施設にいた少⼥型アンドロイド・ディアナ、このふたりの物語が中⼼なんですよ。そのため、SFという⼀⾯は強く押しすぎないようにしています。

――ちなみに本作はどのような物語なんでしょうか。
 ⽉⾯施設はAIが管理していて、AIが3Dプリンタで建設したり製造して運営しています。もちろん⼈間も居たのですが、その
⽉⾯施設のクルーたちと突然連絡が取れなくなってしまうんです。そして地球から派遣された主⼈公・ヒューが調査することになり、危険な⽬に遭ってしまいます。そこからディアナと出会い、ふたりで危険な⽉⾯施設を脱出しよう……というお話です。
⻲⼭ そうなんですね。調査しに来た先で危険な⽬に遭い脱出を⽬指す……という流れは『バイオハザード』に似ていますね。
 ゲームの王道的な話ではあります。何か問題がないとキャラクターたちは動きませんから。
⻲⼭ 謎の現象や何かがあってそこへ⾏く。たしかにSFというよりは、ゲームの王道ストーリーなのかもしれませんね。
 ですから最初、『プラグマタ』をハードなSFモノにするか、もっとライトにするのか悩みました。結果的にはハードSFで進めると、やはり理解できない⽅々が多いだろうと思い、ふたりの物語にフォーカスしました。もちろんそういった設定もあるのですが、理解できなくても楽しめる作品にしたほうが、多くの⽅々に遊んでもらいやすいですよね。


©CAPCOM


⻲⼭ あぁ、わかります。映像作品でもハードなSFモノを作るとなったら、設定をすべて説明しないと理解してもらえないないし単純におもしろくありません。とは⾔えその説明パート⾃体はつまらなくなってしまったりして。楽しめる⼈はいるけれども、⼤衆向けではないんですよ。
 そうなんですよね。
⻲⼭ 僕はゲームのほうがそういう部分を受け⼊れてもらいやすい、楽しんでいただける媒体なんだと思っていましたが、同じようなジレンマを抱えていらっしゃるんですね。
 僕も作品の世界全体を映像で楽しんでもらうにはどうしたらいいんだろうって、つねづね考えているんです。僕は時代劇も⼤好きなのですが、いまの⽇本って時代劇モノが少なくなっているるように感じています。おそらく江⼾時代など当時のルールや昔の⽂化への知識が弱くなっているのかなと。それで時代劇の世界に⼊り込めなくなっているんだなと思っています。
 そういう前提の知識ありきで作られた世界を⼤衆向けに楽しめるようにお届けするのってなかなか難しいんです。『プラグマタ』もきっと、細かい設定や世界設定が作り込まれていますよね。
 はい。ですが、それを中⼼に楽しめるようにはしていません。せっかくゲームを買ったのに、なんでこの世界について勉強しなきゃならないの︖ ってなっちゃいます(笑)。

――世界設定って、ゲームなら読み物系のファイルなんかにしてプレイヤーが好きなときに読むことができたりしますが、アニメだとシーンとして魅せる必要がありますよね。
 『ミルサブ』はそこがうまいと思いました。たとえばマキナの⾝体のパーツについて、トイレでカートやマックスたちが「あの感情再現プログラム⾒た︖」みたいに、ものすごいパーツを使っていることを会話していて。それだけで世界設定の⼀部が⾃然にわかるじゃないですか。そういうのがいいんだよなぁって。
⻲⼭ それはニール・ブロムカンプ監督作品の影響が強いです。たとえばスマホって、もう昔の⼈が⾒たら意味のわからない未知の機械だと思うんですが、いまの現代⼈にとってはみんな使っている当たり前のデバイスですよね。みんな充電がどうとか、テクニカルな話も当たり前にできますし。
ですから、その世界の⼈たちが⽇常的に使っているガジェットや技術はカジュアルに会話の中に出てくるんだなと。そういった部分を想像しながらセリフに取り⼊れています。
 そういう演出の何がいいかって、「え、何。⾃分も知りたい。話に混ぜて︕」という気分になって、すごく興味が沸くんですよ。
⻲⼭ 興味をどう持ってもらえるのかというのは重要です。ただ、⾃分の場合は匂わせだけはしているんですけど、実際にちゃんと細かい設定を決めているかというと、全然そんなことないんです(苦笑)。いざ説明しろって⾔われると、雑に決めているため何も答えられなかったりして(笑)。
 実際はそんなもんですよね。世界設定や時代背景など含めて、観客にどう楽しんでいただけるのかという部分では……。たとえばNetflixに『サンクチュアリ -聖域-』 という相撲ドラマがあります。⾃分は相撲にまったく興味がなかったのですが、相撲世界のことを学びながら、最後まで最⾼に楽しめたんです。ちなみにこの作品は『スラムダンク』 の相撲版みたいに感じていま
す。
⻲⼭ テーマや設定が知られていなくても、エンタメとして完成されていたら観客が付いて来れると信じています。Netflixで⾔えば『イカゲーム』 ってまず、エンタメとしておもしろいですよね。そのうえで、韓国の知らない⼿遊びとかが出てきて、説明はないけど知りたくなっちゃうというか。
 ですから昨今の作品はまずエンタメとして楽しませたうえで、裏側にある知識を知りたくなる要素があるとよりいいかもしれません。
 作品が無理やり教えるんじゃなくて、観客が⾃分から知りたくなるような。
⻲⼭ それがいいですよね。昨今、SNSなどでバズってるものって、単純におもしろい動画、笑える画像、何も知識なしで楽しめるものが多いと思います。ですがそればかりになると、きっと⾒ている⼈たちも次第に飽きるだろうなと考えていて。そういう知識の探求欲みたいなものを刺激される作品というのが、もしかしたらこれからの時代は求められるものかもしれません。
趙 それを『ミルサブ』はキャラクターで魅せているのがすばらしいです。チハルはおいしいと⾔うけど、マキナなどは不味い(ゲ●の味)という“液弁(えきべん)”がどんな⾷べ物なのかも興味がわいたりして。ちなみに個⼈的にはゲームクリエイターとして観てしまって、『ミルサブ』をもしゲーム化したらどうなるんだろう︖ とか妄想していました。
⻲⼭ 僕はゲームの専⾨的なことについては詳しくないので、ゲームならではのストーリーのおもしろさについて、解像度が⾼くありません。ゲームが映えるためのストーリー作りってどうしているんでしょうか︖
 映像作品とゲームには⼤きな違いがあります。映像作品は第三者として観ることになりますが、『プラグマタ』のようなアクションアドベンチャーは、プレイヤーが主⼈公に⼊り込まなければなりません。体験型コンテンツに近いんです。
 映像作品は⾒せたいシーンを⾃動的に⾒せるものです。ですがアクションアドベンチャーの場合はプレイヤーが操作しているため、⾒てもらえるものもあれば⾒てもらえないものもあって、さらにその順番も⼈によって変わります。ときには探さないと⾒つからないものもあるでしょう。それって、⾃分から⾒つけに⾏くことで得られる情報、つまり⾃分の⾏動なんです。
 それを⾒せるための物語、という部分では、先に⽬指すべきゴールが提⽰されている、という先ほどお話したような王道的な作りになったりもします。

劇場版の新キャラ・ハガの元ネタは『ファイナルファイト』のハガー市⻑︖

――ちなみに両作品ともにメカが登場しますが、3Dはメカと相性がよさそうですね。
⻲⼭ ありますね。ただ、アニメ作品のロボットって3Dだとちょっと味気ないときありますよね︖ ⼿描きアニメのロボットのよさもあったはずなんですよ。メカだけ3DCG、みたいなのが主流でメカっぽさは増しましたが、それによって失われた魅⼒もあると思っているので、⼀概に3Dだから映えるとは思っていません。
 ただ『ミルサブ』としては、アンドロイドやサイボーク系のキャラクターって質感が重要なのだと感じました。それを強く出せるのが3Dなんだと思っています。



――マキナはほぼロボットに近いですが、カートとマックスは、サイボーグだってわかるような感じがありますよね。
⻲⼭ うれしいことにカートとマックスという、イケメンサイボーグのふたりも⼈気キャラになってくれました。ファンアートや⼆次創作もよく⾒ていますが、皆さんかなりメカ部分の掘り下げをする⼆次創作が増えたと感じていまして。
 皆さんがサイボーグの可能性に気づき始めたのではないかなと。設定的にはご都合主義で決めていますが話を広げられる余地はあると思うので、少なくとも興味を持っていただけたのはうれしいです。
 サイボーグの可能性ですか。SFの世界って、ある意味なんというかグロい世界ですよね。
⻲⼭ そう、メチャクチャグロいです。
 ⾒た⽬はかわいらしい、カッコいいってなって思ってもサイボーグなんですもんね。⾔ってしまうと、⽣物としてのパーツを捨てているわけで。
⻲⼭ はい。倫理的にいろいろヤバイことは起きているわけですが、そこはなんか気にしないような空気感にしています。ただ、考察を深めてそこに気づき始めている⼈もいるので、⾒てる⼈の⼼のレイヤーは数段階あると思います。
 マキナも⾒た⽬こそカワイイですが、話を⾒ているとヤバいですよね。もしかしたら⾚ちゃんのころから⾝体を機械にしているのかもって。

――『プラグマタ』では、少⼥型アンドロイド・ディアナが登場しますが、どういった部分でアンドロイド的な要素を強めていますか︖
 ゲーム制作を⾏ううえではさざまな規制があるので、表現にはある程度の壁が存在します。⽣⾝の⼈間ではないアンドロイドだからこそできる表現を多く盛り込みたかったのですが、ディアナの⾒た⽬などもふまえてとても苦労しました。
 たとえば『Dr.スランプ アラレちゃん』 みたいに、⾃⾝の頭を持つみたいなわかりやすい表現は難しいです。その代わり、彼⼥の細かい仕草でアンドロイド感を出したりしています。


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⻲⼭ あぁ、頭はそうなんですね。そこがおもしろいところでもあるんですが。
 ⽇本以外の国でも発売するので、そこの表現の問題や、あとは⽂化的な部分も考慮しなくてはならないので、尖ったことはなかなか実現しにくいのが正直なところです。
⻲⼭ そういう点では映画も同じです。世界に向けて作るとなると配慮することが多すぎて、尖ったことができなくなります。とは⾔え仕⽅ないですね。

――『ミルサブ』には未来的な世界でありつつも昭和レトロみたいなテイストがあって、『プラグマタ』では現代に近いニューヨークの⾵景が⾒られたりしますよね。どちらの作品もSFとして時代のギャップみたいなものを意識して盛り込んでいる理由は何でしょうか。
⻲⼭ ⾃分がレトロな要素を⼊れるのは“とっつきやすさ”を出すためです。空想の世界でも、どこか⾒たことがあるようなものがないと、視聴者がその世界に⼊り込みにくいのではと。あとはノスタルジックなものって、それだけでカワイイと⾔いますか、説明不要の魅⼒なので意図的に⼊れています。
 『プラグマタ』も同じです。やはりSF的な世界だけですと興味を持ってもらいにくいです。⼈間はどうしても、⾃分の知っている・共感できるものからおもしろさを感じたりするので。⽉⾯の世界でメカメカしい世界って、よく⾒ると⽩⿊で地味なんですよね。それだけだと物⾜りないのもあって、世界中のみんなが知っているニューヨークを出したりして、興味を持っていただこうとしています。


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⻲⼭ 要は、⼤衆向けに⼊り込める要素があったほうがいいってことですよね。
 そうです。ちなみに『ミルサブ』は昭和レトロというか、カセットフューチャリズムですよね︖
⻲⼭ ああ、そこに気づいてくださってありがたいです︕ じつは『ミルサブ』って昭和レトロと⾔われがちですが、別に昭和にはこだわってないんですよ。レトロの定義も難しいと思っていて。80年代カルチャーとか、いろいろ呼び⽅はあると思うんですが、何がどう80年代カルチャーなのか︖ みたいなところや、何を軸としてレトロと呼ぶのか難しいところがあります。
 ⼀⽅で、カセットフューチャリズムはわかりやすいです。磁気テープという技術が中⼼にあって、それをスタイルにしているのが合理的ですよね。VHS、ブラウン管が存在していた時代周辺と⾔いますか。レトロだけで括ってしまうとその時代が好きな⼈からしたら「何でこれとこれが共存してるの︖」みたいなことにもなるので、なんでもかんでも古いものをぶち込めばいいものでもなくて。

――ちなみに映画『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ 各駅停⾞劇場⾏き』に新キャラクターのハガが出ますよね。これ、ゲームファンから⾒ると⾒た⽬的にも、『ファイナルファイト』のハガーに⾒えるんですが……偶然ですかね︖
⻲⼭ 正解です。カプコンさんの前で⾔って⼤丈夫かと思いつつもぶっちゃけるとマイク・ハガーを意識しました。冒頭のほうで『メタルスラッグ』の話をしましたけど、その横の筐体に『ファイナルファイト』があって、当時よく友だちと遊んでたんですよ。思い⼊れがあるので、ハガーは意識して⼊れました。
『ファイナルファイト』、すごく好きなんですよ。⾃分の管轄してる街が荒れてるのは市⻑であるお前の責任なんじゃないのかとか、娘が⼈質になったからってみずから助けに⾏くとか、破天荒すぎてツッコミどころだらけで(笑)。でもそんなところが本当におもしろくて⼤好きなんです。


ハガ署長 ©亀山陽平/タイタン工業


――まさかの驚きの情報でした(笑)。では最後に読者へメッセージをお願いします。
⻲⼭ 『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ 各駅停⾞劇場⾏き』は再編集による総集編プラス新作パートで構成した劇場版です。映画としては短い作品ではありますが、劇場の⾳響で⾒るからこそ得られる魅⼒もあると思います。もしよろしければ、お楽しみいただけると幸いです。
 『プラグマタ』は2026年4⽉24⽇に発売予定ですが、『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ 各駅停⾞劇場⾏き』と近い時期に披露することができて、いちファンとしてうれしい限りです。ぜひとも、『ミルサブ』と併せて『プラグマタ』もよろしくお願いいたします。Steam版に加えてPlaystation 5、Xbox SeriesX|S、Nintendo Switch 2での体験版も配信されましたので、ぜひ⼀度触れてみてください。


©CAPCOM



■「銀河特急 ミルキー☆サブウェイ 各駅停⾞劇場⾏き」
●公開中
リンク:「銀河特急 ミルキー☆サブウェイ 各駅停⾞劇場⾏き」公式サイト

■「プラグマタ」
●2026年4⽉24⽇(金)発売予定
リンク:「プラグマタ」公式サイト

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