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コマ撮りとデジタルワークを融合した映像表現により、その世界観が国内外から高い評価を得た伊藤有壱監督の短編アニメーション作品「HARBOR TALE」が、横浜開港157周年に際して、様々なイベントを開催。
その一環として、WebNewtypeで連載された4コマコミック「Mr.ブリック in ハーバーテイル」の展示会が、6月11日(土)から6月14日(火)まで、神奈川県・YCC ヨコハマ創造都市センター内 cafe OMNIBUSで開催されています。
イベントでは、貴重なコミックの生原画や作品紹介のパネルを展示。カフェである店内では、コーヒーやランチを楽しみながら、「Mr.ブリック in ハーバーテイル」の世界観を楽しめます。
また、「HARBOR TALE」と醸造家・菅原亮平さんとのコラボで誕生したベルギービール「HARBOR TALE」も味わうことも可能。この豊かな香味と甘さのバランスが絶妙のビールは、作られる量が限られているため、ごくごく限定された店舗でしか楽しめないのだとか。
展覧会の会場となるYCC ヨコハマ創造都市センターは、1929年に建設された旧第一銀行横浜支店を改装した施設。デザイン・アート分野から地域活性を目指す文化事業の拠点として運営されていて、今回のようなカフェとコミックとの連動企画は初の試みだそうです。
最後に、イベント開催に際して、伊藤有壱監督からコメントが届きました。
――ご自身が制作された映像作品が、展覧会や上映会といったリアルの場に広がっていくことについていかがでしょうか。
伊藤:仕事でも作品でも、“創作物は人に届くことで「完成」する”と、以前から意識していました。「HARBOR TALE」は、完全な独立作品としては1990年の「星眼鏡」以来ですが、「星眼鏡」を創り、出品したおかげで、広島国際アニメーション映画祭にコンペインし、映画祭というステージに開眼できました。「HARBOR TALE」が、世界の映画祭と横浜での上映イベントで展開し続けることは、それなりのエネルギーがいるのですが、そこでの新たな出会いや気づきが、今自分がこの世界に生きる実感をより深く与えてくれます。「コミック」への展開も、まさに「出会い」から始まった作品の成長といえて、おかげで「HARBOR TALE」のもう一つの側面や映像完成後に湧き出たイメージを、楽しく苦しみつつ形にする事ができて感謝しています。
――今回の展覧会の印象について教えてください。
伊藤:コミック「Mr.ブリック in ハーバーテイル」は、18分の映像作品で描ききれなかった何かを、探りながら形に留めていく、極めて実験的なプロジェクトでした。編集との共通認識は、「エンターテイメント」であること。つまり、映像「HARBOR TALE」は、エンターテイメントでも芸術でもない、不安定な存在だったんです。コミックでは、パラレルなエピソードを展開することで、世界観の補完を目指したのかもしれません。そんなインサイドストーリーが、誰でも携帯端末から読める最も「今」なアウトプットではありましたが、ある時会議用に紙に出力してみると、手に取った感触が実にいいのです。「マテリアル(物質の存在感)」が、映像の手法とテーマを体現したように、テーマ性からいえばコミック「Mr.ブリック in ハーバーテイル」が紙との相性も良い、ということを、この展覧会でお知らせしたかったのですね。会場であるYCC ヨコハマ創造都市センターは、100年近く前の古くて美しい建造物で、その空間のカフェの中で、コミック「Mr.ブリック in ハーバーテイル」の、ディスプレイによるスライドショーと原画の展示は、うまく空間にとけ込んでいて安心しました。ベルギービール「HARBOR TALE」を一杯やりながら、自分自身とても楽しめました。
――最後に一言お願いします。
伊藤:映像作品「HARBOR TALE」が完成して4年半経ちました。ネット公開をしていないので、まだ限られた方にしか観ていただいていないのですが、コミックが「HARBOR TALE」を知っていただくきっかけになれば幸いです。【取材・文=小川陽平】