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「月刊ニュータイプ」公式サイト
©2025 映画「ヒグマ!!」製作委員会
クマ被害の状況を鑑み公開延期となっていた映画「ヒグマ!!」が、2026年1月23日(金)にいよいよ公開される。そこで、発売直前に「近日公開」と表記することとなった、月刊ニュータイプ2025年12月号掲載の作品紹介原稿を、特別に再掲載!
念願の大学合格により未来をつかんだと思ったその日、小山内蒼空は父親の自殺という絶望を突きつけられる。特殊詐欺の被害に遭い、父は多額の借金を抱えていたのだ。進学の夢を断たれた小山内は金策に走り、よりにもよって闇バイトに手を染めてしまう。合格番号だった66番は、今やグループ内での呼び名となっていた。ある日、裏切り者の28番が持ち逃げした宝石の強奪と、彼女の殺害を命じられ戸惑う小山内。個人情報を握られているため、もはや選択の余地はないのだが、しかし……。そんなとき、彼らの前に血に飢えたヒグマが現われた! 次々と仲間が惨殺されるなか、小山内は28番と共闘して生還を果たすものの、肝心の宝石はヒグマの体内へ。人質にされた母を救うため、28番とともにヒグマに立ち向かう小山内だったが──。
気弱で心優しい青年が悪い大人にだまされ、あれよあれよと引き返せないところまで追い込まれるさまを鈴木福が好演。ヒグマになんて絶対勝てそうにないところがまたイイのだ
©2025 映画「ヒグマ!!」製作委員会
アニマルパニック映画の王道といえば、何といってもサメ。原点たる「ジョーズ」はもちろん、「ディープ・ブルー」や「オープン・ウォーター」「MEG ザ・モンスター」など、亜流の枠に収まらない傑作、佳作がいくつもあり、「シャークネード」シリーズのように低予算ながら根強いファンを獲得せしめた作品だって存在する。あの大きな口に並んだ無数の牙と水面から突き出た鋭い背びれが、人間の根源的恐怖をかき立てるに違いない。しかし、なかなかどうしてクマも捨てがたい題材のひとつだ。
先の「ジョーズ」が世界的大ヒットを記録した際、「ピラニア」やら「アリゲーター」やら「オルカ」やら柳の下のどじょうを狙った類似作が山ほどつくられたのだが、舞台を陸地へと移した「グリズリー」は、特に当たった作品と言えるだろう。クマそのものは北半球のあちこちに分布しているにもかかわらず、アメリカのハイイログマ=グリズリーだけが突出して有名なのは、この映画がヒットしたからだ。また、公害で変異したクマが登場する「プロフェシー/恐怖の予言」も忘れがたい名作だし、コカインを食べて凶暴化したクマが大暴れする「コカイン・ベア」のスマッシュヒットも記憶に新しい。
元自衛官の28番こと若林桜子は、何としても宝石を手に入れようと迷うことなく〝19〟に立ち向かう。だが対人戦では効果を発揮する格闘術も、ヒグマにはまったく通用しない!
©2025 映画「ヒグマ!!」製作委員会
宇梶剛士演じる闇狩猟者の神崎。〝19〟と名づけられたヒグマとの間に因縁があり、その被害に遭った小山内と28番に手を貸すが、どこか油断ならない雰囲気を漂わせる
©2025 映画「ヒグマ!!」製作委員会
もちろん、本邦にも〝三毛別ヒグマ事件〟をモチーフにした「リメインズ 美しき勇者たち」や村ぐるみで山に捨てられた老女たちがヒグマと死闘を繰り広げる「デンデラ」といった傑作クマ映画が存在する。実際、日本人からすればサメ以上に身近で恐ろしい動物がクマだ。特に近年は、クマの人里への出没や人身被害が相次いでいる。その原因はハンターの減少による個体数増加、里山の放棄ならびに農村部の過疎化、山林の食物の凶作などさまざまだが、いずれにせよ都心部に住んでいる人々にとっても他人事でなくなりつつあるのが現状と言えよう。かつて66頭もの放牧牛を襲い、その神出鬼没ぶりから〝忍者ヒグマ〟と恐れられたOSO18のニュースを覚えている方も多いのではないか。
そして、この事件をヒントに生まれたのが、映画「ヒグマ!!」である。本作に登場するエゾヒグマの〝19〟は、VFXも併用しつつ、8割近くの登場シーンが造形物で表現されており、撮影の目的に合わせてひとりの演者による二足歩行スタイルと、獅子舞のように2人の演者が入る四足歩行スタイルの着ぐるみが使い分けられた。「ウルトラマンブレーザー」や「仮面ライダーゼッツ」の怪獣・怪人デザインで広く名が知られるようになった百武朋がデザインの方向性を打ち出していることもあり、非常にモンスターナイズされたルックスに仕上がっている点にも注目されたし。また、そんなバケモノに立ち向かうはめに陥る主人公を、いまだ〝福くん〟のイメージが残るベビーフェイスの鈴木福が演じている点もおもしろい。闇バイトがきっかけゆえに自業自得ながら、どこか同情を誘い、かわいそうにも見えすぎない絶妙なキャスティングではないか。〝闇バイトとヒグマの死闘〟という一見すると出落ちのような舞台設定だが、最後まで飽きさせない工夫が凝らされた一本だ。
【文:ガイガン山崎】
顔の左半分が傷でただれ、そこから蒸気や体液を噴き出しながら、白濁した眼球を文字どおり光らせて暴れ回る〝19〟は、もはや猛獣というよりも怪獣である
©2025 映画「ヒグマ!!」製作委員会
■「ヒグマ!!」
●2026年1月23日(金)公開
スタッフ:監督・脚本…内藤瑛亮/企画・プロデュース…佐藤圭一朗/VFXスーパーバイザー…オダイッセイ/特殊造形・メイクデザイン…百武朋/スタントコーディネーター…吉田浩之、後藤健/主題歌…the bercedes menz「knuckle duster」/配給…NAKACHIKA PICTURES
キャスト:小山内蒼空(66番)…鈴木福/若林桜子(28番)…円井わん/9番…岩永丞威/84番…上村侑/75番…住川龍珠/小山内美空…占部房子/神崎=宇梶剛士
リンク:映画『ヒグマ!!』公式サイト