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この作品をより多くの人に観てほしい―「シン・エヴァンゲリオン劇場版」撮影監督・福士享インタビュー

「シン・エヴァンゲリオン劇場版」は好評公開中
「シン・エヴァンゲリオン劇場版」は好評公開中(C)カラー

公開中の「シン・エヴァンゲリオン劇場版」。完結編となる本作について、そして「エヴァンゲリオン」シリーズについて撮影監督の福士享さんにお話を伺いました。

――福士さんは「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」のころからずっと撮影監督を務められています。今回の「シン・」にはどのような思いで臨まれましたか。

福士 「:Q」が終わってから、けっこう時間が空いたじゃないですか。正直、このまま完成しないと思っていました。僕が「シン・」をやることはないだろうなと思いながらいろいろな作品の仕事をしていたので、今回「シン・」の話が来たときは「ああやるのか!」と。そういう驚きから今回は始まりました(笑)。

――「シン・」は映像面の制作で新しい方法論に挑まれているようですが、撮影においてはどのような影響がありましたか。

福士 「:序」「:破」「:Q」とやってきて今作は4作目、シリーズを重ねていくうちに、撮影作業も慣れていきそうなんですが、実は全然慣れません。他の作品だと、作業を重ねるうちに「この方向性だろう」というものが掴めてくるんですが、「新劇場版」ではそうはならない。「シン・」のAパートは「これまでやってない作り方をしよう」というところから始まっている部分もあるので、本撮に入る前のテストでは色々な試行錯誤がありました。ですが、いざ本撮になるとテストのままでは進まない、という事があるんです。

――毎回、撮影セクションは監督陣とかなり細かいところまで画を調整されているんですよね。

福士 「:序」「:破」「:Q」の撮影作業では、庵野さん、鶴巻(和哉)さん、摩 砂 雪さんが「撮出し」といって、ほぼ全てのカットを僕の隣に座って、調整しました。「撮出し」で見せる物は、自分なりに「こうだ」と考えたものを提案しますが、大概「違う」んです。撮出しを3作品経験して、自分が「こうだ」と思ったものが「正解ではない」という事だけが分かったというか。庵野さんとの撮出しは、撮影スタッフが3~4人くらいで対応しないと、庵野さんの指示に追いつかない。指示を理解して、そのイメージに合う処理を即興で作業するのは、それなりの経験と引き出しの多さが必要だと思います。

――今回、福士さんはスタジオカラーに入って、「シン・」の撮影作業をされていたそうですが、現場の雰囲気はいかがでしたか。

福士 今回は様々な作品で撮影経験のあるスタッフがスタジオカラーに集まってくれました。皆さんとても優秀でしたね。「:Q」のときまでは庵野さんたちのリクエストに、自分で対応するしかないと思って、ほぼ全カットの撮出しを僕とT2 Studioの田澤(二郎/「:破」「:Q」の副撮影監督)の2人で対応したんです。僕としては毎回戦場に行く!くらいの切羽詰った気持ちで撮出しをしてたんですが、「シン・」で入ってくれた撮影スタッフは、しっかりと難しいリクエストに対応しつつ、ちょっと楽しそうに撮出しをしてるので「なんでこんなしんどい事を2人でやってきたんだろう」と思うほどでした。「:Q」までの苦労が不思議なくらい、関わった撮影スタッフがスムーズに作業を進めてくれました。

――「シン・」は公開後、大きな反響を呼んでいるようです。福士さんのもとに何か反響はありましたか。

福士 僕には15歳の娘がいるんですが「エヴァ」を全然知らない世代なんです。でも、僕が仕事で「エヴァ」をやっているというのは知っていて、今回「『シン・』を劇場で観る?」と聞いたら、「行かない」って言うんですよ。好き嫌いがあるからしょうがないなと。でも、親からしたら「こんなに頑張ったんだから、観てほしいな」という気持ちもあったんですよね。ところが、先日放送された「プロフェッショナル 仕事の流儀 庵野秀明スペシャル」をいっしょに観たら、「『シン・』を観に行きたい」と言ってくれたんです。多分「そんなに頑張っていたのか」と、ちょっと興味をもってくれたんでしょうね。「:序」から「:Q」までを一気に観て、「なんとなくわかった」と。それで「シン・」を観に行ってくれたんです。観ているうちに感極まったようで……。多分、細かいところはわかっていないんだろうけど、この作品にいろいろな思いが詰まっていて、みんなが本気で全身全霊をかけて、妥協なく取り組んでいるのが伝わったのかな、と思っています。是非、この作品をより多くの人に観てほしいと思っています。

(プロフィール)
●ふくし・とおる/T2studio所属。「新劇場版」シリーズのほか、近年では「おそ松さん」(TVシリーズ、劇場版)、映画「きみと、波に乗れたら」、映画「メアリと魔女の花」などに参加

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【取材・文:志田英邦】

リンク:「エヴァンゲリオン」公式サイト
    公式Twitter・@evangelion_co

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