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「Deep Insanity」プロジェクト・メインスタッフ座談会(前編)――現実世界が重なってきた、パンデミック禍の世界の物語

謎の伝染病「ランドルフ症候群」が蔓延した世界を舞台に、さまざまなメディアで、異なる時間軸の物語が展開する大型メディアミックスプロジェクト「Deep Insanity(ディープインサニティ)」。そのTVアニメ版となる「ディープインサニティ ザ・ロストチャイルド」の放送が間もなくスタートします。そんな本作について、プロジェクトのプロデューサーである、スクウェア・エニックスの石井諒太郎さんと、世界観原案を担当した深見真さん、海法紀光さんの座談会を前後編でお届けします。


――まずは、マンガ、アニメ、ゲームとさまざまなメディアで展開される「Deep Insanity」というプロジェクト全体の成り立ちから教えてください。いつごろから、どういった形でこのプロジェクトをスタートされたのでしょうか?

石井 プロジェクトそのものに関しては、大体4年くらい前からスタートしています。もともと弊社にはマンガ、アニメ、ゲーム……といろいろなメディアを手がける事業部があるにもかかわらず、それらを同時にしかけるプロジェクトをやってこなかった。具体的なきっかけはないのですが、そういうことはできないのかな?と思い立ち……というのが簡単な経緯ですね。

――そこに深見さん、海法さんが参加されたのはどのような流れで?

石井 マンガもゲームもアニメも全部経験されている方にお願いしたくて、僕から弊社の出版部経由でご相談しました。

――ということは、それまでに何かつながりがあったわけではない?

石井 はい。僕が一方的に存じ上げているだけでした。もともと、深見さんが原作を手がける「魔法少女特殊戦あすか」というマンガを弊社の「月刊ビッグガンガン」で連載されていて、そのアニメでシリーズ構成を深見さんと海法さんが2人で担当されていたんですね。ちょうどそのタイミングくらいに、できればお2人ごいっしょにお願いしたいとご相談した形です。

――その段階で、石井さんから世界設定などに関するオーダーはされたんですか?

石井 そこはもう、何も考えていませんでした。深見さん、海法さんにお声がけするのであれば、「こんなものをつくりたい!」とお話をするよりは、「どんなものがつくりたいですか?」というお話をしたほうが絶対おもしろいものができるじゃないですか。中途半端に足かせをつくりたくなかったので。

海法 ありがとうございます。「海法さんの好きなものをつくってください」と言ってくださる方は多いんですけれども、大抵、本当に好きなようにやると「……違うんですよね」とおっしゃる方が多いんです(笑)。でも石井さんには本当にこちらのつくりたいものを理解していただけて。もちろん、ギリギリのところで倫理的に無理なものもありますが、そこはしょうがないとして、基本的にはとても作り手の気持ちに寄り添っていただけたので、ありがたい限りですね。

石井 どうしても難しいものを除いて、割といろいろできたかな、と……。

――具体的な設定はどうつくりあげていかれたのでしょうか?

深見 アニメのもうひとりの原案者であり、マンガを連載していただいている塩野干支郎次先生も最初から参加されていて、基本的には自分と海法さんの話を聞いて、塩野さんが初期のラフ案を上げていく……という流れでしたね。ただ、塩野先生の描くマンガ版(「ディープインサニティ ニルヴァーナ」)の世界は、ゲーム版と共通点も多いものの、やっぱり塩野先生の世界なんです。薄いつながりはあるけど、マンガ版の独自の世界なんですよ。ゲーム版(「ディープインサニティ アサイラム」)の設定は、基本的には自分と海法さんで話し合って決めていった感じですね。

海法 だから、石井さんは苦労されたと思いますよ(笑)。

深見 自分と海法さんで最初に出たアイデアが「ラヴクラフトやろうよ」って話で。で、ラヴクラフトをやるなら、みんな大好き「狂気山脈」だよね、と。あとどんなタイトルを挙げましたっけ?

海法 「遊星からの物体X」と「ストーカー」と、「アナイアレイション 全滅領域」。

石井 「アナイアレイション 全滅領域」は主にビジュアル面のイメージが強かったですよね。

海法 あとはFPS系の、グロアクションがあるタイトル。

深見 何かそういう、見ている人が不安になる系の作品が多かったですね。もっと最初は「ウォーハンマー」でしたっけ?

海法 そうですね。当時……いや、今もなんですけど、自分はミニチュアゲームのほうの「ウォーハンマー」がすごく好きで、ことあるごとに「『ウォーハンマー』をやりましょう!」って言ってたんですよね(笑)。

深見 そのくらいのお話から始まって、いろいろとイメージを広げていった感じでした。

――文芸面でのそうした共同作業は、どのように進行されたんですか?

深見 企画が始まったときはまだコロナ禍前だったんです。ですから、そのころは直接会って、お互い話をしながらどんどんできていたんで、作品世界に関してはもう、2人の仕事が混ぜ混ぜですね。

海法 そうですね。私と深見さんが「こういうのにしようぜ!」って盛り上がって、翌週、石井さんが「先週の打ち合わせ、まとめてみました!」ともってきてくれたものを読んで……「あれ? 俺、そんなこと言ったっけ?」と。

石井 その流れ、本当に多かったですね(苦笑)。ただ、キャラクターは担当が分かれていますよね。最初のほうは深見さんがずっとやられていて、途中から海法さんの割合が多くなってきて……みたいなイメージです。

海法 初期に出きたキャラでも、ゲームの主人公のウーは自分かな?

石井 そうですね。主人公まわりのキャラクターや設定は海法さんです。

海法 メインの、主に女性キャラは深見さんがベースで。

石井 印象深いのがマスターカラテカですよ。「いつか名前決めましょうね」って言いつづけて、最終的に名前を決めなければいけないとなったら、深見さんが「マスターカラテカのままでカッコいい気がしてきました」って言い出して。

深見 本当は「マスター○○○○」にしたかったんですけどね。絶対怒られるじゃない?

海法 ……大体いつもこんなやりとりをしております(笑)。

――打ち合わせの雰囲気が伝わってきました。ついに放送の始まるアニメ版(「ディープインサニティ ザ・ロストチャイルド」)の第1話に色濃いですが、今作には一種のパンデミックもの的な要素がありますね。これは偶然ですか?

石井 現実のほうが重なってきましたよね。

海法 企画の始まりは、最初にお話があったように約4年前、新型コロナウイルスでの今のような状況は全く想定していなかったです。

――パンデミックの要素は、企画途中で追加されたわけでもないんですね。

石井 逆にちょっと焦りましたもんね? 新型コロナウイルスが流行しはじめたとき。

海法 でしたね。そもそも何でパンデミックものにしたんだっけ?

深見 確か自分が「ゴジラvsビオランテ」がやりたいと言い出したんですよ。あの映画で、子供たちがいっせいに同じ夢を見て、同じような絵を書く短いシーンがあるんです。あれがすごく好きで。最初はだからあくまで、「みんなが同じ夢を見るって、絶対怖いよな」みたいな話を海法さんにして、アイデアをひねってくうちに、今のランドルフ症候群の設定になりました。ただ、この設定はゲーム版だとあまり登場しないんですが。

【取材・文:前田久】

■TVアニメ「ディープインサニティ ザ・ロストチャイルド」

放送:TOKYO MX 10月12日より毎週火曜深夜24:30~
   MBS 10月12日より毎週火曜26:30~
   BS11 10月12日より毎週火曜25:00~
   テレビ愛知 10月15日より毎週金曜26:05~
   AT-X 10月13日より毎週水曜21:30~
   ※リピート放送:毎週金曜9:30~、毎週火曜15:30~

配信:ABEMA  10月12日より毎週火曜24:30~
   ※地上波同時・単独最速配信/その他のサイトも順次配信予定

スタッフ:世界観原案…深見真、海法紀光、塩野干支郎次/監督…大沼心/シリーズ構成・脚本…下山健人/キャラクターデザイン…山吉一幸/色彩設計…水本志保/美術監督…新城湧基/3D監督…北村浩久/撮影監督…山本聖(チップチューン)/編集…木村勝宏/音楽…未来古代楽団/音響監督…郷文裕貴/オープニングテーマ…鈴木このみ「命の灯火」/エンディングテーマ…伊東歌詞太郎「真珠色の革命」/音響制作…ビットグルーヴプロモーション/アニメーション制作…SILVER LINK./制作協力…KADOKAWA/原作・製作…SQUARE ENIX

キャスト:時雨・ダニエル・魁…下野紘/ヴェーラ・ルスタモワ…小清水亜美/レスリー・ブラン…鳥海浩輔/ローレンス・ラリー・ジャクソン…広瀬裕也/小鳩玲香…野口瑠璃子/餅木スミレ…本渡楓/エルシー…田中貴子

■ゲーム「ディープインサニティ アサイラム」

配信日:2021年10月14日(木)正式サービス開始予定
対応プラットフォーム:iOS / Android / PC(Steam)
ジャンル:RPG
プレイ料金:基本プレイ無料(アイテム課金型)

リンク:TVアニメ「ディープインサニティ ザ・ロストチャイルド」公式サイト
    ゲーム「ディープインサニティ アサイラム」公式サイト
    「Deep Insanity」プロジェクト公式Twitter・@deepinsanity_pj

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