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カントーーク!~オリジナルアニメってどうやって作るの?~ 上江洲誠主催トークライブ「BONKLIVE2022~NO WAY (STAY) HOME~」レポート

さる6月11日に阿佐ヶ谷ロフトAにて、脚本家の上江洲誠さんが主催・MCを務めるアニメスタッフによるトークライブ「BONKLIVE(ボンクライブ)2022」が開催されました。十年以上続くイベントですが感染症により延期が続き、有観客では2年7か月ぶりとなる開催でした。

カントーーク!~オリジナルアニメってどうやって作るの?~ 上江洲誠主催トークライブ「BONKLIVE2022~NO WAY (STAY) HOME~」レポート
カントーーク!~オリジナルアニメってどうやって作るの?~ 上江洲誠主催トークライブ「BONKLIVE2022~NO WAY (STAY) HOME~」レポート

まずは上江洲さんのインフォメーション。
上江洲さんと黒山メッキ先生による漫画「神サー!」が最終回を迎えました。クリエイター志望の芸大生と90年代オタク文化を巡る上江洲さん版「アオイホノオ」とも言える本作でしたが、上江洲さんいわく「やりたかった事ができた」そうです。
次に、10月放送開始の新番組「クールドジ男子」。かっこいいけど少しドジな男子達の日常を楽しく描いた作品で、安心のクオリティとのことで放送が楽しみです。
それから、放送決定が同時発表された「この素晴らしい世界に祝福を!3」「この素晴らしい世界に爆焔を!」。放送日の発表はまだですが、新たな監督、新たな制作会社のもとで鋭意制作中で、こちらも期待が高まります。

カントーーク!~オリジナルアニメってどうやって作るの?~ 上江洲誠主催トークライブ「BONKLIVE2022~NO WAY (STAY) HOME~」レポート
カントーーク!~オリジナルアニメってどうやって作るの?~ 上江洲誠主催トークライブ「BONKLIVE2022~NO WAY (STAY) HOME~」レポート

次いで、岸誠二監督が登壇。
すぐさま恒例の筋肉撮影会が行われました。今は肉を付けている時期で、これから大会に向けて体を絞っていくそうです。そして岸さんと上江洲さんで、ついに完結した「結城友奈は勇者である 大満開の章」制作時の思い出を振り返りました。4年後を描いた結末に込めた思いや、これからの展望などについて語られました。

そして、今回のメインイベント。
岸監督、橋本裕之監督、松根マサト監督と上江洲さんによるテーマトーク「カントーーク!~オリジナルアニメってどうやって作るの?~」が繰り広げられました。

最初の質問は「子供の頃に好きだったオリジナルアニメは?」。
上江洲さんは「超音戦士ボーグマン」。キッズ向けが多かった時代では異質なほどかっこいいアニメで、自分はオタクになるんだと自覚した作品だそうです。松根さんは「機動戦艦ナデシコ」。こんなにやっていいんだと衝撃を受けた作品で、話の密度の濃さ、テンポの速さも学びだったそうです。橋本さんは「ガンダム(原文ママ、ファーストの意)」。敵が同じ地球人だったり、宇宙空間からザクが降りてくる映像に、他のアニメとは違うと衝撃を受けたそうです。当時よく理解できないながらも見てゆく内に発見があって、今見ても発見があるとのこと。岸さんは「宮崎、押井、庵野(原文ママ、宮崎駿監督、押井守監督、庵野秀明監督の意)」。小学生の頃に「風の谷のナウシカ」に痺れて、その後「機動警察パトレイバー the Movie」「同2」に衝撃を受け、「トップをねらえ!」「ふしぎの海のナディア」にノックアウトされたそうです。岸さんが敬称略で話していたのは、超えるべき目標としているからとのことです。

カントーーク!~オリジナルアニメってどうやって作るの?~ 上江洲誠主催トークライブ「BONKLIVE2022~NO WAY (STAY) HOME~」レポート
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次の質問は「オリジナルアニメってどんなふうに依頼が来るの?」。
橋本さんの場合、手伝いで参加するつもりだったのにプロデューサーに車に乗せられた先で、スタッフに監督として紹介されたそうです。なので普通はどう依頼が来るか分からないとのこと。松根さんの場合、既に何クールか続いている作品の新シリーズをと依頼されたそうです。なので前作を視聴していたら、新シリーズはクライアントの意向でハード路線からアイドルものに変わって驚いたとのこと。岸さんの「結城友奈は勇者である」の場合、親睦のあるプロデューサーがオリジナル企画を考えるにあたって、岸さん上江洲さんに立ち上げからの参加を依頼したそうです。反して適当な与太話から勝手に企画が生まれることもあるとのこと。
橋本さんは「急にオリジナルをやることはなくて、原作ものをやって信用を積まないと、この人に任せようとはならない」と語り、岸さんは「アイツに作らせれば金になるんじゃね? と思わせれば依頼は来る(笑)」と語り、会場を沸かせました。

カントーーク!~オリジナルアニメってどうやって作るの?~ 上江洲誠主催トークライブ「BONKLIVE2022~NO WAY (STAY) HOME~」レポート
カントーーク!~オリジナルアニメってどうやって作るの?~ 上江洲誠主催トークライブ「BONKLIVE2022~NO WAY (STAY) HOME~」レポート

次の質問は「オリジナルアニメの理想の作り方は?」。
岸さんは「何はともあれ人。最終的には愛」と断言。松根さんは「スタッフとの信頼関係が大事で、そのためには時間をかけて作りたい。できれば合宿して互いを知りたい。好きな映画、本、音楽でも何でも、互いの共通言語が分からないと話が通じにくい」と語りました。橋本さんは逆に「新しい現場や与えられた状況をどう料理するかもそれはそれで楽しめるので、あまり理想はない」とのこと。まったく知らない、興味を持てない題材でなければOKだそうです。上江洲さんは「与えられた題材の中から自分の好きな物を見つけるには実はテクニックが必要で、例えば自分は事件の背景やキャラの気持ちなどから考えて、どこか自分なりに作品に取り組めるきっかけを探す。これは乗り越える事で身に付く技術」と説明しました。
オリジナル作品はゼロからのスタートなので、主軸ではない箇所もいろいろ考えておかないと絵にする時に困るので大変だと、皆さん一様に語りました。上江洲さんの理想は「脚本執筆に取りかかる前に、設定や考証のためのスタッフが欲しい。その作品においての社会の仕組みを考えたり、SFガジェットが出るならその説明が必要。そんな専門スタッフがいてほしい」。ですが今のところ自分で調べて書くしかないそうです。
また、上江洲さんの要望として「監督には、自分はこうしたい! という突き抜けたビジョンを持っていてほしい」とのこと。それをどう成立させるかがシリーズ構成の腕の見せ所だそうです。例えば「蒼き鋼のアルペジオ」では、岸監督が「(当時あまり普及していなかった)3DCGでTVアニメを作る!」と決めた事がモチベーションになったそうです。

最後の質問は「オリジナルアニメでこれから作りたい題材は?」。
松根さんは「興味のある事はやれてきたので、逆に今までやってこなかった題材をやってみたい。例えば料理とか子供とかコメディとか。あと、真面目なものばかり作ってきたので、バカだなと言われる企画を一回やってみたい」とのこと。橋本さんは「子供向け合体ロボとか。自分が子供の頃楽しんだように、今の子供が見たいと思う物を作りたい。ゲームに負けたくない」。岸さんは「(どんな題材であれ)とにかくまだやってない事をやりたい。例えば団体競技ものなら、3Dで大人数を一斉に動かしたい」そうです。そこで上江洲さんが「という事はいま橋本さんと岸さんが組むとアイアンリーガーのような傑作が生まれるかもしれないんですね!?」と会場を沸かせて、盛り上がりの中トークは終了しました。

次回のライブはなんと「結城友奈は勇者である」の舞台である香川で開催するかも?とのこと。今後の開催予定は上江洲さんのTwitter(@uezux)で告知されますので、チェックしてみてください!

【取材・文:山田花名】

リンク:阿佐ヶ谷ロフトA
    コミックNewtype内「神サー!」配信サイト
    「クールドジ男子」公式サイト
    「この素晴らしい世界に祝福を!」公式サイト
    「結城友奈は勇者である」公式サイト
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