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ゲーム原作に忠実、けれどもめちゃくちゃなアニメーション 「サイバーパンク エッジランナーズ」今石洋之監督アニメ誌独占インタビュー

現在、Netflixにて全世界独占配信中のアニメーション「サイバーパンク エッジランナーズ」。ゲーム「サイバーパンク2077」を原作とし、今石洋之監督がアニメーションスタジオ・TRIGGERで手がけた本作はどのような経緯でアニメーション化されたのだろうか。ニュータイプでは、webで企画の成り立ちを、そして10月7日(金)発売の「ニュータイプ11月号」にも、さらにメイキングに突っ込んだ今石監督インタビューを掲載! アニメ誌独占、webと紙を横断し語りつくす今石洋之監督を刮目して見よ! 

キャラクターメイクで性器もメイク!? 壁と取っ払って制作できる安心感に惹かれた「サイバーパンク」

――原作となるゲーム「サイバーパンク2077」は2020年末に発売されています。今回のアニメ化企画が始まったのは、どれくらい前になるんでしょうか?
今石 最初に話をもらったのは「プロメア」を制作していた頃だと思うので、2018年前半くらいかな。当然、ゲーム自体まだ開発中だったんですけど、ウチの社内の人間にも、開発会社であるCD Projekt REDが手掛けた「ウィッチャー」シリーズの評判がすごくよかったんですよ。

本作の主人公であるデイビッド。貧困のどん底にいた彼は、あるきっかけで軍用のサイバーウェアを手に入れることになる
本作の主人公であるデイビッド。貧困のどん底にいた彼は、あるきっかけで軍用のサイバーウェアを手に入れることになるCD PROJEKTR, CyberpunkR, Cyberpunk 2077R and Cyberpunk: EdgerunnersR are registered trademarks of CD PROJEKT S.A. c 2022 CD PROJEKT S.A. All rights reserved. All other copyrights and trademarks are the property of their respective owners.

――「ウィッチャー」は今回の「エッジランナーズ」と同じく、Netflixでアニメ化されましたね。
今石 「ウィッチャー」を作ったゲーム会社が、今度はSFをやる。しかもサイバーパンクだという話で。サイバーパンクって、若い世代のイラストレーターで少し流行っている感じはあるんですけど、とはいえもはやレトロと言ってもいいジャンルで。それを今やるっていうのは結構、面白いなと思ったんです。で、開発中のものを見せてもらいながら、一緒に脚本を作っていく……みたいなところがスタートでしたね。

月にあこがれるネットランナーのルーシー。彼女とデイビッドはブレインダンスをともにし、つかの間のデートを楽しむ
月にあこがれるネットランナーのルーシー。彼女とデイビッドはブレインダンスをともにし、つかの間のデートを楽しむCD PROJEKTR, CyberpunkR, Cyberpunk 2077R and Cyberpunk: EdgerunnersR are registered trademarks of CD PROJEKT S.A. c 2022 CD PROJEKT S.A. All rights reserved. All other copyrights and trademarks are the property of their respective owners.

――ゲームの開発と並行しながら、アニメの企画も進んだわけですね。今回、脚本は海外のチームとの共同作業だったようですが、どんなふうに進められたんでしょうか?
今石 最初にCD Projekt RED側が元となるストーリーを持ってきたんですけど、僕らとしてはそれがちょっとゲーム的すぎるというか。アニメにしずらいところがあったんです。向こうのスタッフは普通にアニメが好きで――だからこそ僕らに声をかけてもらったんだと思うし、アニメへの理解度も高かったんですけど、やっぱりゲームの考え方がベースにある。自分がプレイすることを前提にすれば、この出来事とそれに対するリアクションで感情移入ができる。でも、アニメはゲームと違って客観で見なきゃいけないんですよね。ただ出来事が起きて、それに反応した……ではダメで、そのとき登場人物がどういう気持ちなのか、わかるように作らなきゃいけない。

――ゲームとアニメの、メディアの違いみたいなものが大きかった。
今石 もしこれがゲームだとして、自分がプレイしていたら、きっとすごく面白い。でも、アニメで同じストーリーを見たときに「主人公に感情移入して応援したくなる気持ち」になりにくい、ということですね。そこに関するやり取りは、かなり多かった気がします。

大企業からの依頼で、公表できない荒事を請け負うサイバーパンク(エッジランナーズ)の面々。左より、チームの中心人物であるメイン、ピラル、ドリオ、キーウィ
大企業からの依頼で、公表できない荒事を請け負うサイバーパンク(エッジランナーズ)の面々。左より、チームの中心人物であるメイン、ピラル、ドリオ、キーウィCD PROJEKTR, CyberpunkR, Cyberpunk 2077R and Cyberpunk: EdgerunnersR are registered trademarks of CD PROJEKT S.A. c 2022 CD PROJEKT S.A. All rights reserved. All other copyrights and trademarks are the property of their respective owners.

――主人公の動機付けみたいなところを、強く押し出す必要があった。
今石 そうですね。あとひとつのイベントが終わったら、そこで気持ちが切れるのではなくて、次の展開に続いていく。それが最後まで続かないと、お客さんの側にも視聴し続ける動機がなくなっちゃうよな、と。なのでこちらからもいろいろとアイデアを出して……。そのやり取りを1~2年かな、かなり長い期間やっていたと思います。大筋はそれほど変わっていないんですけど、ヒロインのルーシーや敵のボスの感じ、あとは関わってくるギャングの分量を整理して。ちゃんと主人公のデイビッドに視線がいくように、というのはかなり気を遣った印象がありますね。

――今石監督がゲームをご覧になって、面白いと思ったところは?
今石 内容がかなりハードで、日本でのレーティングも「18才以上」なんですよね。ヘンな話ですけど、PC版に至ってはキャラクターメイクでは自分の性器から作れる(笑)。しかも大きさとか毛の色とかも選べて、これは最高だなと(笑)。こういう気分のゲームならノレそうだなと思ったんです。ヘンな配慮がないというか、あるものは隠さない。そもそもギャングの世界みたいなものを描こうとしているゲームだから、そこで隠しごとをしたり、家族で楽しめるように表現を丸くするのは気持ち悪い。「サイバーパンク2077」は、そのへんの壁を取っ払っている感じがして、楽しくできそうだなと思いました。

――ハードな世界観だからこそ、表現にも遠慮がないわけですね。
今石 あとサイバーパンクというか、あの頃のSFが持っていた感覚、終末に向かっている感じを今やるとこうなるのか、とも思ったんです。「サイバーパンク2077」は身体改造をするのが当たり前の世界なんですけど、その結果、死がすぐ身近にある。その感覚がすごくリアルでいいな、と。なので、サイバーパンクSFというよりは、むしろ「男たちの挽歌」や「スカーフェイス」のようなギャング物、ノワール物としての描写が突き詰めてできるかな、と思って、興味が出たんです。悪いヤツが悪いことをして、のし上がった末に破滅する、みたいな。破滅の美学みたいなものに寄せて描くことができるかな、と。

――死と生が隣り合わせの世界が舞台になっているという意味では、少し「天元突破グレンラガン」を思い出しました。主人公のデイビッドと彼を導くチームリーダーのメインとの関係は、どこか「グレンラガン」のシモンとカミナを連想させます。
今石 そうですかね(笑)。カミナはいい感じの遺言を残して、意味のある死を遂げる感じでしたけど、メインはそんなにいい感じじゃない気がします(笑)。むしろ今回は、そこで感動の方に向かうのではなくて、もっとドライに描く。その結果、もっと別の哀しさみたいな方に向かっていってる気がします。先輩についていって、同じ道を歩み始めるんだけど、その先輩が無残な死を迎えて、自分もそういう結末を迎えるかもしれないと思う。その運命を受け入れざるをえないし、このナイトシティという街にいる時点で、デイビッドの人生はそれ以上よくなることはない、みたいな。その中でどういうふうにあがくか、という話だと思っていたんです。

これ以降の今石監督のインタビューは10月7日(金)発売の「ニュータイプ11月号」をチェック。スタッフによる絵コンテや、吉成曜さんの初期キャラクターデザイン案も掲載!

【取材・文:宮昌太朗】

■サイバーパンク エッジランナーズ
●Netflixにて全世界独占配信中

スタッフ:原作…CD PROJEKT RED(「サイバーパンク 2077」)/監督…今石洋之/キャラクターデザイン・総作画監督…吉成曜/スクリーンストーリー…バルトシュ・シュティポー/脚本…宇佐義大、大塚雅彦/音楽…山岡晃/原案…ラファウ・ヤキ/プロデューサー…本間覚、バルトシュ・シュティポー、エルダー爽/クリエイティブディレクター…若林広海/アニメーション制作…TRIGGER

キャスト:デイビッド…KENN ルーシー…悠木碧 メイン…東地宏樹 ドリオ…鶏冠井美智子 キーウィ…本田貴子 ピラル…高木渉 レベッカ…黒沢ともよ ファラデー…井上和彦 グロリア…日野由利加 リパードク…津田健次郎

ストーリー:20世紀末に築かれた夢の街・ナイトシティ。そこは古い思想や窮屈なルールに縛られない未来都市だった。そこで暮らす人々はさまざま。母親と暮らすデイビッドは大企業・アラサカ直轄の学校に通うも、貧困に苦しんでいた――

リンク:「サイバーパンク エッジランナーズ 」公式サイト
    「サイバーパンク エッジランナーズ」Netflix配信ページ
    公式Twitter・@edgerunners

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