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神は細部に宿る。「重神機パンドーラ」にて近未来の都市・ネオ翔龍に暮らしている人たちは、どんな道具を使い、どんな生活をしているのでしょうか。登場人物たちが使う道具や身にまとう衣服、そして武器などをデザインする仕事が本作における「デザインワーク」。そんなデザインワークを手がける一方で、本作のテーマである「家族契約」、その中心にいるクロエが印象的なエンディング映像を担当し、バイタリティあふれる仕事ぶりでこの近未来の世界をつくりあげた石川寛貢さんにお話を伺いました。
――まず「重神機パンドーラ」における、石川さんのお仕事をお聞かせください。
石川:デザインワークとしてプロップのデザイン、衣装デザイン、それにモブキャラなどを中心としたキャラクターデザイン、またエンディング映像を担当しています。
――「パンドーラ」という作品において、石川さんが興味を持った部分はどんな要素でしたか?
石川:作品の舞台が日本ではなく、中国ということですね。このことで、作品がどのように変わるのだろうと楽しみにしていました。
――今回、石川さんが最も「挑戦」されたことは?
石川:私はこれまでシリーズを通して「設定」を描いたことがなかったので、すべてが挑戦でした。デザインそのものは、CGスタッフとして別作品に参加していた時に(総監督の)河森(正治)さんもご一緒した経験があるのですが、今回のようなかたちでは初めてでしたね。
――石川さんはこれまでどのような役職で河森作品に参加していたのでしょうか。
石川:もともとは撮影のスタッフだったのですが、それから特効(特殊効果)を担当した後、モニターグラフィックスとして作品に関わるようになりました。その後、CGアニメーションもつくるようになりまして、「マクロスΔ」のときに「エンディング(第14、15、17、20~24話「破滅の純情」)をまるっとやってもらえないか」というオーダーをいただいて、絵コンテ、演出からCGの制作までを引き受けることになったんです。そしてその後、東京スカイツリーで行われた「マクロス」シリーズ35周年イベント(MACROSS 35th Anniversary マクロス BLUE MOON SHOW CASE IN TOKYO SKYTREE)の新曲「Good job!」のMVも担当して……。そのときはコスチュームデザイン、アートディレクションやMV全体の取りまとめなどを担当していたんです。それらがあって、今回「『パンドーラ』のエンディングをやってほしい」と言っていただき、エンディング映像の制作を担当することになりました。
――「パンドーラ」のエンディングはどのようにつくられたのでしょうか。
石川:まず、曲の歌詞や雰囲気に沿って大まかな方向性を決めてコンテに起こしました。その後、その段階で出来上がっている本編の絵コンテを参考にして、レオン視点のクロエ像をつくっていって。(監督の佐藤)英一さんからは「レオンの妹でありながらも、母のような一面があること、同時に力強い女の子であることをしっかりと描いてほしい」というのと、「『クロエの家族契約』をフィーチャーしてほしい」というオーダーをいただいていましたので、最後に「クロエのゆびきり」を描いています。河森さんからのオーダーは「かわいく!」だったので、とにかくかわいくなるように気を付けましたし、クロエの3DCGモデルには(キャラクター原案の)江端(里沙)さんに監修していただきました。
――プロップやキャラクターデザインについては、どのように作業を進めていったのでしょうか?
石川:最初に描いたのはネオ翔龍司令室のオペレーターのキャラクターデザインでしたね。河森さんの作品ではオペレーターは、いわゆるモブキャラクターではないので、ぱっと見でも違いがわかるように描いています。最初は4名という人数の指定と役割分担だけがありました。衣装については江端さんが描いた衣装パターンがいくつかあったので、そのうちのひとつを使っています。ちなみに、デザインの過程では設定だけを参考に作業していったので、各オペレーターに名前がついたことを知ったのは、実はつい最近だったんです(笑)。
――オペレーターの名前はシェン・リュウ(CV:深田愛衣)、ミン・ファン(CV:水間友美)、チュン・ウー(CV:春野杏)、シィア・フー(CV:伊藤佑夏)。それぞれキャストの名前から一文字もらって、名前がつくられたそうですね。
石川:知らなかったです(笑)。
――オペレーターのデザインのあとは、どんなものをデザインしましたか?
石川:MOEVの機体に貼るマーキングのデザインや、NO BRAIのマーク、クロエが持っている携帯端末……ほかにも防護服とかフィオナのパンダなど……幅広く描いています。
――クロエの携帯端末はアルマジロのかたちをしていますね。これはどんなオーダーがあったんですか?
石川:「マクロスF」の携帯端末オオサンショウウオさんのような方向性で、というオーダーがありました。
――石川さんは今回かなり多岐にわたるお仕事をされていたんですね。
石川:エンディング映像については、ひとりの作業でしたので、絵コンテからアニメーションまで全工程の工数を見積もりやすいんです。チェックも河森さんや英一さんとダイレクトに行えたので、なんとか時間内に収めることができました。
――今回のお仕事は石川さんにとって初めての経験も多かったのではないかと思うのですが、最もインパクトが大きかったことは何ですか?
石川:河森さんからのオーダーですね。これまで担当したことのないパートをたくさん関わらせていただいて刺激をたくさん受けることができました。河森さんのオーダーはとてもおもしろくて。河森さんが取材で撮ってきた写真を見ながらお話をして、いろいろなアイデアを出してくださるんです。リテイクを出されるときも、デザイン的な要素だけでなく本編のドラマやいろいろな要素を踏まえたうえで修正指示を出してくださるので……リテイクが楽しい(笑)。良いものをつくるためにはギリギリまで粘られる方ですし。私としては、河森さんのリテイクに対応できるように、スケジュール面も含めて、今後もっと余裕をもったつくりにしていきたいなと考えています。
取材・文:志田英邦