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クライマックスが近づいてきた好評放送中のTVアニメ「ヒナまつり」。本作の魅力に迫るインタビュー連載、第11回ではついに、「ヒナまつり」の生みの親である原作者の大武政夫さんとアニメ監督の及川啓さんが登場! アニメをご覧になっての感想や、作るにあたってこだわっている点、主題歌について伺いました!
――最初にアニメ化の話を聞いた時はどう思われました?
大武:「ほんとにやんの? ほんとにやれんの?」みたいな感じでした。なので最初は現実感がなかったです。
――監督をはじめとするアニメスタッフの方とお会いしたときはいかがでしたか?
大武:そこでようやく、ドッキリじゃないんだなと。
及川:そういう感覚だったんですね(笑)。
大武:今回のアニメ化の話を聞いたのが2年前だったので、途中で何が起こるかわかんないじゃないですか。その間に、ヤクザの抗争が始まったら……って。まあ今では、あっという間な気もしますけど。やっぱり、声優さんが決まって、アフレコになってようやく実感が出てきましたね。
――実際に完成したアニメをご覧になっての感想をお聞かせください。
大武:「クオリティがすげえ高えんだけど大丈夫?」って思いました。みなさん絵が上手いし、僕のキャラの特徴を捉えて可愛く描いてくれるので「……マジか」ってなりましたね。どなたかお一人呼んで、漫画描いてほしいです。
及川:ほんとに、キャラクターデザイナーさんが原作の絵の特徴を捉えてデザインしてくれたので、自分としても嬉しかったですね。
――印象的だったシーンはありますか?
大武:オープニングが一番インパクトありました。ずっとイクラ丼を持っているのはなんなの?って。あと曲が最高に爽やかで、すごい笑っちゃいました。
及川:オープニングは原作の表紙のイクラを参考にしたんです。常にイクラが表紙にあるので(笑)。
大武:3話まで見たところでは、やっぱり「あっちむいてホイ」、あそこはアニメにして映えたなぁと思いました。容赦なく歯茎も描いて変顔をやってくれて。
及川:あのシーンは竹内哲也さんというメインアニメーターの方に手掛けていただきました。原作の再現度が高く素晴らしいシーンになったと思います。ありがたいですね。スタッフも「ヒナまつり」が好きで参加してくれた方が多くて、すごくみんなの情熱が伝わってきます。1話のAパートも、瞳が大好きな徳田(賢朗)さんというすごく上手い方が全部やってくださいました。そういえば1話のAパートって瞳は出てませんでしたね…(汗)。
大武:ありがたいですよね。好きな人が描いてくれているっていう話を聞くと。
――原作をとても大切にしてアニメを作られているのが伝わってきますが、監督的にアニメ化するに当たって特に力を入れている点はどこですか?
及川:この原作はとてもシュールで、ほんとに面白い作品ですが、それだけに原作の良さを最大限活かすためのストライクゾーンはかなり狭いかなと思ったんです。その上で、テンポと間にはすごくこだわりましたね。シナリオ、絵コンテ、演出、編集、アフレコ、ダビングのセクションで常にテンポと間にはこだわりました。
それと原作の絵というか表情ですね。表情はやっぱり原作のものを活かしたいと思ったので、絵コンテにそのまま先生の絵を貼って「この表情で」と各スタッフに伝えながら作っていきました。
――オープニングとエンディングも凝っていますね。
及川:エンディングはまさに「ヒナまつり」というか、ホントに素晴らしい曲だったんで、(コンテの)イメージがすぐに浮かんだんです。それに対して、オープニングは苦労しましたね。打ち合わせのときに“「ヒナまつり」なのに、いい曲っていうボケをやりたい”と言っていたら、本当にいい曲があがってきて(笑)、なかなかコンテのイメージが思い浮かばなくて。最初は全カットにイクラを入れようとチャレンジしたんですけど、どうにも入らないとなったときに、詩子が思い浮かんで。じゃあ詩子を全部に入れるというギャグにしようと……。でも結局イクラ半分、詩子半分みたいな不思議なオープニングになってしまいました(汗)。
大武:でもそのお陰で、味のあるオープニングになりましたね。ヒナが雨に打たれているとき、しれっと詩子さんが通っているの、最初気づかなかったです。
及川:OPのあの辺はそれぞれのキャラの悲しいシーンを入れました。最初は本編のエピソードを使おうって思っていたんですけど、さすがに雨に打たれているヒナは原作にないので、「ちょっと盛ってくか」みたいな(笑)。あそこは、家出をしているシーンをイメージしました。それと、とりあえあえず詩子も入れてみました。あとは、アンズからお金を奪った詩子さんも本編では昼間なのに夕方に変えて悲しい感じにしたり。瞳が契約書を書かされているところも、盛って可哀想に描いたんですけど、ここは本編を見返してもひどさがあんまり変わってないなと思いました(笑)。
――オープニングとエンディングで詩子が消えていったのはどうしてですか?
及川:少しでも視聴者さんにオープニングとエンディングにも注目して毎回見て欲しいなというのがあって。ちょっとやりすぎたかなって思っていたんですが、原作ファンの方のコメントを見たら意外と喜んでくれているようで大丈夫かなって(汗)。
大武:原作ファンも詩子の扱い悪いですからね(笑)。
――エンディングが歌謡曲ですが、最初に聞かれた時どう思われましたか?
大武:プロデューサーの吉武(真太郎)さんが、エンディングは「絶対これなんですよ!」ってすげー気合が入っていて。最初はみんな「……ん?」「へー」みたいな感じでしたが、今となっては、これしかないって思います。それにしても、全体を通してムダにいい曲ばかりですよね。「ヒナまつり」なのに(笑)。
及川:6話の特殊エンディングもですが、この先にも特殊エンディングや挿入歌があって、その曲もすごくいいです。
大武:マジ笑っちゃいます!
【取材・文:佐藤京一】